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シェーグレン症候群(指定難病53)

しぇーぐれんしょうこうぐん

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1)概要

a.定義
1930年にスウェーデンの眼科医Henrick Sjögrenが関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)に合併した乾燥性角結膜炎の1例を報告し、1933年に同様の症状をもつ19例を発表して以来、発見者の名前を冠してSjögren症候群(Sjögren’s syndrome;SS)と称するようになった。
本症候群は、慢性唾液腺炎と乾燥性角結膜炎を主徴とし、多彩な自己抗体の出現および高γ-グロブリン血症をきたす自己免疫疾患の一つである。病理学的には、唾液腺や涙腺などの導管、腺房周囲の著しいリンパ球浸潤が特徴とされる。腺房の破壊,萎縮をきたし乾燥症(sicca syndrome)が主症状であるが、唾液腺,涙腺だけでなく、全身の外分泌腺が系統的に障害されるため、autoimmune exocrinopathyと称される。
SSは他の膠原病の合併がみられない一次性(primary)SSとRAや全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)などの膠原病を合併する二次性(secondary)SSとに大別される。さらに、一次性SSは病変が涙腺、唾液腺などの腺性症状だけの腺型(glandular form)と病変が全身諸臓器に及ぶ腺外型(extraglandular form)とに分けられる。

b疫学
2010年度に施行された最新の厚生省特定疾患自己免疫疾患調査研究班の検討では、Sjögren症候群の有病率は人口10万人当たり約55人、すなわち66,000人となる1)。実際には、その数倍の20万〜50万人と予想されている。
男女比は1:14で女性に多く、発症年齢のピークは40〜60歳代である。

c病因・病態
いくつかの自己抗体の出現や臓器に浸潤した自己反応性リンパ球が存在することから、自己免疫応答がその病因として考えられている2)(図1)。

発症機構は、抗原特異的免疫応答と抗原非特異的免疫応答に分けて考えられているが、詳細に解明されたわけではない。

1)抗原特異的免疫応答
先行因子としては、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I)、Ebstein-Barr(EB)ウイルスなどのウイルス感染や熱ショック蛋白(HSP)を産生する感染症が考えられ、それらの構成成分の一部が抗原として提示されるか、あるいは、感染によりアポトーシスに陥った細胞から自己抗原が提示されることが前提となる。自己抗原としては、臓器特異的な抗原としてα-アミラーゼ、ムスカリン作働性アセチルコリン3(M3R)が、臓器非特異的抗原として、Ro/SS-A52kD蛋白、HSP10/60蛋白が報告されている。マウスモデルでは,α-フォドリンが抗原の一つとして報告されている。M3Rに対するT細胞がSS類似の自己免疫性唾液腺炎を発症することも報告された。このように提示された抗原は、唾液腺内の比較的限定された自己反応性T細胞(主にTh1、Th17細胞)により認識され、T細胞から産生されたINF-γ、インターロイキン(IL-)2,IL-6、IL-10、IL-17などのサイトカインにより自己免疫応答が惹起される。

2)抗原非特異的免疫応答
免疫応答が誘導されると、抗原特異性をもたない様々なサイトカイン(IFN-γ,IL-2,IL-4,IL-6,IL-10,IL-17)が産生される。また、唾液腺のB細胞、マクロファージなどからは、自己抗体、炎症性サイトカインであるIL-1やTNF-αが産生され、慢性に炎症が継続される。誘導された細胞障害性T細胞がFasリガンド/ Fas相互作用あるいはパーフォリン、グランザイムを介して唾液腺上皮細胞や腺房細胞をアポトーシスに陥らせる。このような抗原非特異的免疫応答により唾液腺の破壊が進むと考えられる。

d症状
Sjögren症候群の臨床症状は腺症状と腺外症状とに分けられ、多彩な症状を呈している(図2)。

e治療
治療は腺外症状の有無により異なる。一般に,腺症状だけの腺型Sjögren症候群では、ドライアイやドライマウスに対する対症療法が治療の中心となる。
一方、腺外型や二次性は多様な臓器病変がみられるため、ステロイド薬の適応となる。

f予後
腺型は一般に予後良好であるが、腺外型や二次性Sjögren症候群は、活動性が高く予後が悪いことがある。特に、進行性の間質性肺炎、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、中枢神経障害、高粘度症候群などは予後を左右することになる。他の膠原病や悪性リンパ腫(発症率は健常者に比して40〜80倍高い)などの合併があるときは、個々に対する治療が必要である。

2)診断

(1)診断基準
1)診断基準
Sjögren症候群はいくつかの特徴的な症状を呈する症候群であるために、診断基準が設けられている。1999年に制定された旧厚生省の改訂診断基準が日本において唯一の公式診断基準であり、日本人においては、最も感度、特異度が高い3)4)(図3)。

世界では、2002年のアメリカ・ヨーロッパ改訂基準および2012年に発表されたアメリカリウマチ学会の診断基準がある。
2)診断に有用な検査項目
(a) 特異的検査
1)Schirmer試験
涙液量を測定する方法でWhatman濾紙を下眼瞼耳側に5分間かけておき、5 mm以下の涙液分泌を陽性としている。
2)ローズベンガル試験、蛍光色素(フルオレセイン)試験
乾燥性角結膜炎の存在を検討するための生体染色検査である。ローズベンガル液あるいは蛍光色素(フルオレセイン)液を点眼し、細隙灯顕微鏡で検査する。眼裂部およびそれより下方球結膜の染色(ローズベンガル試験ではvan Bijsterveldスコアが3以上)があれば陽性所見とする。
3)小唾液腺あるいは涙腺生検
口唇の小唾液腺の生検は診断に有用である。組織所見の特徴は、導管周囲に単核球の著明な浸潤と腺房細胞の萎縮、消失、導管上皮細胞の増殖などによる内腔の狭窄である。免疫組織染色による所見では浸潤単核細胞の多くはCD4+αβT細胞である。陽性所見は、小唾液腺組織で4 mm2当たり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上認められることである(Greenspanらの基準ではgrade 3と4)。
4)唾液腺造影(シアログラフィー)
造影剤をStenon管から注入し耳下腺を造影する方法である。Rubin & Holtの分類でstage I(直径1 mm未満の小点状陰影)以上を陽性とする。
5)唾液腺シンチグラフィー
99mTcO4を用いた唾液腺のRI検査。軽症例では耳下腺、顎下腺への集積が著明にみられるが、高度の唾液腺障害例では、集積はほとんどみられない。
6) 造影MRI検査
診断基準の項目には含まれていないが、非観血的診断方法であり、小唾液腺組織や唾液腺シンチグラフィー検査と強く相関が認められる事から、治療効果の評価に有用である。

(b)一般検査
一般検査では、CRP陽性、赤沈促進、高γ-グロブリン血症が60〜80%にみられる。特に、IgG,IgAが増加しており、またクリオグロブリン(IgM、IgG,IgA)も高率に検出される。
貧血、白血球減少症は約30〜60%にみられる。10%以下で血小板減少症がみられ、特発性血小板減少性紫斑病を合併することもある。

(c) 免疫学的検査
自己抗体としては抗核抗体が66〜80%に検出され、染色型は斑紋型(speckled pattern)が多い。抗Ro/SS-A抗体は80%と本症において最も高頻度に出現する自己抗体であるが、他の膠原病にも検出されるため、特異性は抗La/SS-B抗体より低い。抗SS-B/La抗体は。35%に検出され、本症に特異性が高く診断的意義が高く、本抗体陽性例は常に抗Ro/SS-A抗体を伴っている。リウマトイド因子は約60-80%の症例で認められる。これはRAの合併のない一次性SS群においても同頻度にみられる。

(2)重症度分類
2010年に発表されたESSDAI(EULAR Sjögren’s Syndrome Disease Activity Index)が日本においてもSSの重症度分類として使用されている5)(図4)。

ESSDAIが5点以上であれば、中等症、14点以上であれば重症と定義される6)。

3)治療

(1)QOLを改善する治療
腺症状だけの腺型Sjögren症候群では、ドライアイやドライマウスに対する対症療法が治療の中心となる(図5)。

口腔乾燥症状に対してムスカリン受容体を刺激する2種類の薬、塩酸セビメリン(サリグレンⓇ,エポザックⓇ),と塩酸ピロカルピン(サラーゲンⓇ)が有効である。ドライアイに対しては、水分およびムチン分泌促進作用を有するジクアホソルナトリウム点眼薬(ジクアス点眼液3%R)、およびP2Y2受容体作動薬レバミピド点眼薬(ジクアス点眼薬3%)が有効である。

(2)生命予後を改善する治療
腺外型や二次性は多様な臓器病変がみられるため、ステロイド薬の適応となる(図6)。

発熱、反復性唾液腺腫脹、リンパ節腫脹(偽性リンパ腫)、関節症状などに対しては、プレドニゾロン換算で 5〜15 mg/dayを用いることで十分な効果が認められる。さらに、活動性が高い、①進行性の間質性肺炎、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、中枢神経障害、②高γ-グロブリン血症やクリオグロブリン血症に伴う高粘度症候群、③二次性Sjögren症候群に合併する他の膠原病、などでは,プレドニゾロン換算で30〜60mg/dayを投与する。免疫抑制薬(シクロホスファミド)も重症例では有効とされているが、腎毒性、悪性リンパ腫など二次がんのリスクを考慮する必要がある。合併する慢性甲状腺炎、原発性胆汁性肝硬変症、尿細管性アシドーシス、悪性リンパ腫などに対しては、各疾患に対する個々の治療が必要となる。

4)鑑別診断

(1)鑑別しなければいけない疾患と鑑別のポイント
1)関節リウマチ(rheumatoid arthritis, RA)等の関節炎を呈するリウマチ性疾患
SSでは多関節の疼痛や腫脹が見られることがあり、RAとの鑑別に苦慮することがある。SSの関節炎は、RAと同様に朝のこわばりがあり、両側対称性の関節痛を呈するが、こわばりの持続時間が短かいことがRAと異なる。また,軟骨や骨の破壊が進行し関節が変形するような激しい関節炎は少ない。鑑別のポイントとして、RAでは抗CCP抗体が陽性であるが抗SS-A抗体や抗SS-B抗体は陰性である。一方、SSでは、抗CCP抗体は陰性で抗SS-A抗体および抗SS-B抗体が陽性である。リウマトイド因子(rheumatoid factor, RF)は両者ともに陽性例が多い。その他SSと鑑別すべきリウマチ性疾患としては、全身性エリテマトーデス、混合性組織病などの膠原病があげられる。RAも膠原病もSSとの合併症例があるので、注意が必要である。

2)IgG4, キャッスルマン病や悪性リンパ腫などリンパ増殖性疾患
リンパ節、唾液腺、涙腺、腫脹臓器などの組織の病理像およびIgG4染色、IL-6染色、血清中のIgG4値、IL-6値、可溶性IL-2受容体値などにより鑑別が可能である。

3)ドライアイ、ドライマウスを呈する疾患
糖尿病,唾液腺萎縮症,高年齢など他疾患によりドライアイ、ドライマウスが出現するので、鑑別する必要がある。

4)薬剤などによる乾燥症状
抗精神薬、利尿薬などの副作用としてドライマウスやドライアイが認められることがあるので、服用薬に注意を払う必要がある。

5)最近のトピックス

世界の臨床研究により、抗CD20抗体(リツキシマブ)、抗体CD22抗体(エプラツヅマブ)、抗BAFF抗体(ベリムマブ)などが、SSに有効であることが報告されている。最近では、T 細胞を標的としたCTLA4-Ig(アバタセプト)も欧米および日本の臨床治験やパイロット研究において有効性が報告されてきている7)。

6)本疾患の関連資料・リンク

日本シェーグレン症候群学会

7)文献

1.Tsuboi H, Asashima H, Takai C, Hagiwara S, Hagiya C, Yokosawa M, et al. Primary and secondary surveys on epidemiology of Sjögren's syndrome in Japan. Mod Rheumatol. 2014 May;24(3):464-70.
2. Sumida T, Tsuboi H, Iizuka M, Hirota T, Asashima H, Matsumoto I. The role of M3 muscarinic acetylcholine receptor reactive T cells in Sjögren's syndrome: a critical review. J Autoimmun. 2014 Jun;51:44-50.
3.Fujibayashi T, Sugai S, Miyasaka N, Hayashi Y, Tsubota K. Revised Japanese criteria for Sjögren's syndrome (1999): availability and validity. Mod Rheumatol. 2004 Dec;14(6):425-34.
4. Tsuboi H, Hagiwara S, Asashima H, Umehara H, Kawakami A, Nakamura H, et al. Validation of different sets of criteria for the diagnosis of Sjögren's syndrome in Japanese patients. Mod Rheumatol. 2013 Mar;23(2):219-25.
5. Seror R, Ravaud P, Bowman SJ, Baron G, Tzioufas A, Theander E, et al. EULAR Sjogren's syndrome disease activity index: development of a consensus systemic disease activity index for primary Sjogren's syndrome. Ann Rheum Dis. 2010 Jun;69(6):1103-9.
6. Seror R, Bootsma H, Saraux A, Bowman SJ, Theander E, Brun JG, et al. Defining disease activity states and clinically meaningful improvement in primary Sjögren's syndrome with EULAR primary Sjögren's syndrome disease activity (ESSDAI) and patient-reported indexes (ESSPRI). Ann Rheum Dis. 2014 Dec 5. pii: annrheumdis-2014-206008. doi: 10.1136/annrheumdis-2014-206008. [Epub ahead of print]
7. Tsuboi H, Matsumoto I, Hagiwara S, Hirota T, Takahashi H, Ebe H, et al. Efficacy and safety of abatacept for patients with Sjögren's syndrome associated with rheumatoid arthritis: Rheumatoid Arthritis with Orencia Trial toward Sjögren's syndrome Endocrinopathy (ROSE) trial-an open-label, one-year, prospective study-Interim analysis of 32 patients for 24 weeks. Mod Rheumatol. 2014 Sep 11:1-7.

情報提供者
研究班名 自己免疫疾患に関する調査研究班
研究班名簿   
情報更新日平成28年12月19日