■定義、概念
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色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum ; XP )は、紫外線により生じるDNA損傷の修復に欠損のある常染色体劣性遺伝性疾患である。原因となる遺伝子によりA-G群(ヌクレオチド除去修復欠損型)とバリアント型(損傷乗り越え複製欠損型)の8つの相補性群が知られている。露光部に種々の程度の日光皮膚炎をきたし、引き続き、多数の色素斑、脱色素斑、毛細血管拡張、萎縮、さらに、若年で露光部に多数の皮膚癌を生ずる。
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■疫学
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遺伝形式は常染色体劣性。日本での頻度は22,000人に1人とされる。日本人XP患者の50%はA群で、約50%がバリアント型であり、海外の分布とはかなり異なる。各相補性群により修復能、光線過敏症状の程度、皮膚癌の発症時期、神経症状の有無などに特徴がある。日本人ではXP-A群とXP-Ⅴ型が多い。特に日本人A群患者の80%以上ではXPA遺伝子の同一変異によって発症しており、創始者変異と考えられているが、日本人でこの変異を有する保因者の頻度は113人に1人と報告されている。バリアント型においても日本人に多い変異が知られている。
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■病因
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| XPではヌクレオチド除去修復あるいは損傷乗り越え複製機構に障害があるために紫外線によって生じたDNA損傷が修復されずに残存する結果、種々の症状が引き起こされると考えられている。 |
■症状
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太陽光照射により、健常人とは異なった反応を示すが、その症状の程度には病型により異なる。全ての患者において、露光部に限局して皮膚癌が若年で多発する。
A、B、D、F、G群では異常に強い日焼けがみられる。短時間の日光暴露により著明な浮腫性紅斑、水疱形成をきたす。紅斑のピークが3日から4日後に遅延し、7~10日迄持続することもある。急性の激しい日光皮膚炎がおさまった後に種々の程度の色素沈着、脱色素斑を残し、それを繰り返すうちに皮膚の乾燥、毛細血管拡張もきたす。生後初めての日光浴で気づかれることが多い。遮光が適切に行われなければ、幼児期から皮膚癌を多発する。
C、E、Ⅴ群では強い日焼けの反応はみられないが、露光部に一致した色素斑あるいは皮膚癌が現れる。露光部に限局した色素斑は戸外活動が活発になる10歳くらいまでに気づかれる事が多い。皮膚癌の発症はC群では小児期にみられるが、E、Ⅴ群では成人に達してからみられる例も多く、皮膚癌が生じて初めてXPを疑われることも多い。皮膚癌発症は日光暴露量に依存するので、遮光の程度も影響する。皮膚癌の発症部位は顔面、手背、下口唇、舌尖等に多く見られるが、時々日光に曝露する機会がある背部、大腿、下腿に生じる事もある。それらは、診断に至る迄の幼少時期の日光曝露の影響と考えられる。
XP患者とXPでない患者に生じる皮膚癌でその種類、臨床像に大差はなく、最も一般的な皮膚癌である基底細胞癌(BCC)、有棘細胞癌(SCC)、悪性黒色腫(MM)がXP患者でも生じる。BCCは内臓への転移は少ないが、局所の下床組織を破壊する。露光部である顔、手背に生じると、確実に切除しきることが難しくなるので、早期発見、早期治療が重要である。MMは適切に切除されなければ、転移をきたし、致命的となる。
XPでみられる色素斑は、雀卵斑で通常見られる部位を超えて、耳介、下顎、頚部、V-areaにも生じ、不規則な形状の大小の色素斑が混在し、色調も不均一で有る点が臨床診断の上で参考になる。色素斑、皮膚癌だけでなく、皮膚の乾燥、毛細血管拡張もみられ、これらはすべて、光老化の徴候であり、光老化が異常に早く起こっているととらえることができる。
相補性群(A・B・D・(F)・G群)によっては進行性で多彩な神経症状を伴う。重症型であるA群では、歩行開始から軽度の遅れがみられ、幼児期には歩行が不安定で転びやすい。言語発達の遅れが明らかになる。7歳頃から聴力低下が出現、学童期後半には知的障害と聴力障害が進行する。思春期には徐々に尖足が重症化し、全身の筋力低下と失調のため歩行不能となる。嚥下障害もみられる。誤嚥も多く、それに伴う肺炎を併発することも多い。
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■診断
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a) 最少紅斑量(minimal erythema dose : MED)の低下 : (ただし白皮症、特に其の軽症型を除外)、また、XPでもC群、E群、Ⅴ型ではMEDの低下は必ずしも明らかではない。
b) 光線過敏症状(露光部に限局した特徴的な色素斑、皮膚萎縮、毛細血管拡張、皮膚癌)などの光老化の徴候が年齢に比して不相応に早期に出現している。
c) a), b)が見られた場合、XPを疑い、患者線維芽細胞を用いて、不定期DNA合成能の低下、紫外線生存などの細胞学的修復能テストを行ない、臨床症状と合わせて鑑別を進めた上で遺伝子診断によって確定診断を行なう。XPの遺伝子診断は先進医療として神戸大学医学部付属病院、大阪医科大学付属病院において実施されている。
臨床的にXPを思わせる症状があり、修復能の低下があれば、ヌクレオチド除去修復欠損型(A-G群)XPの可能性がきわめて高いが、修復能が正常であればバリアント型の可能性が高い。
色素性乾皮症では光線過敏、露光部の皮膚癌発症などの臨床症状は共通しているものの、原因遺伝子は8種類あり、神経症状を伴うタイプと伴わないタイプ、光線過敏症状が重症型と軽症型があり、予後、生活指導が大きく異なるので、早期の遺伝子診断を行ない、その後の遮光による皮膚癌発症予防を進める意義は大きい。
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■診療指針
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本疾患は、初期症状は光線過敏症として現われ、初期診断における皮膚科専門医の役割は大きい。一方、神経症状が生じるタイプにおいては進行性の神経症状の対症療法に対して、神経内科、耳鼻科、整形外科、リハビリテーション科の各診療科の連携を含む生活指導が重要となる。
一方、軽症型の成人発症例では、若い頃の紫外線防御が不完全であったことより、中年以降皮膚がんが多発するので皮膚癌の早期発見が重要となる。
a)日常の遮光対策
遮光はサンスクリーン塗布と遮光服など、複数の手段を組み合わせて行なうよう教育する。日照時間帯の戸外活動は原則禁止する。外出時にはつば広の帽子、長袖、長ズボンを着用し、露出部にはサンスクリーンを塗布する。日照時の外出が必要な学童にあっては、遮光フィルムで作った遮光ガウンの着用するのが有効である。
口唇も露光部であり、光防御効果のあるリップクリームを用いる。目も横からの光もカットできるような紫外線防御効果のある眼鏡をかける。サングラスは散瞳を引き起こすので逆効果のことがあり、注意を要する。
部屋、車の窓ガラスに遮光フィルムを貼る。
遮光フィルムはいくつかのメーカーのものが有るが、紫外線領域の遮光性能の確認が必要である。サンスクリーンはSPF30以上のものを用い、汗などでながれるので、2時間おきに塗り直す。規定の量を塗布しなければ、表示されている遮光効果は得られない。
サンスクリーンは光線過敏症患者が用いる際にも化粧品の扱いになり、保険の適応はない。地方自治体によっては補助を出しているところもある。
紫外線量を測定する器機は用いている端子がどの紫外線を測定しているか、集光の善し悪し、測定精度の善し悪しにより、機器によってその値は10倍程度の開きがあるので、測定値を過信するのは危険であり、上記の遮光の原則を守るのが重要である。
b)皮膚と眼科の定期検診
皮膚科は皮膚癌が生じる迄は年に1~2回、皮膚癌が生じ始めてからは年に3~6回、眼科は1~2年に1回が定期検診の目安である。
c)皮膚癌の治療
早期発見早期治療が鉄則。臨床像、ダーモスコピーの所見を参考にしながらトレパンで生検を兼ねて切除してしまうのが現実的かつ確実な治療法である。
神経症状を伴っている患者では切除に際しての患者の協力を得にくいこと、皮膚癌切除のための入院を機に、廃用性が原因と推測される日常生活能力の衰退がみられる事が多いので、その観点からも、幼少時の遮光による皮膚癌発症の予防と早期発見、早期治療が重要である。小さいものは液体窒素、5FU軟膏塗布も有用である。既に大きくなってしまった皮膚癌は麻酔の上、外科的に切除する。
d)神経学的診療
聴力検査、神経学的検査を幼少時期には年に1度程度定期的検診を受ける。神経症状の対症療法、残された神経機能を維持する診療手段、リハビリテーションなどの最適化が求められる。
10代の終わりになると、夜間の無呼吸、誤嚥性肺炎が起こる事が有り、気管切開、胃ろう造設を行なうことが多い。神経症状の治療法は今のところないが、尖足などに対して整形外科的な対症療法がなされている。
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■予後
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相補性群によって、かなり異なる。軽症型のE、F、Ⅴ群で、診断が若年でなされた症例では、遮光により、皮膚症状、皮膚癌の発症を防ぐことができ、通常の生活を送ることができるので経過予後ともに良好である。重症型のA群はかなり厳重な紫外線防御を行っても皮膚癌の発症も予防可能であるが、神経症状も進行性であるので、生命予後も悪く、30歳くらいで死亡することが多い。C、D群、はA群ほどではないが皮膚癌の発症も比較的早く、注意深い観察が必要。
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