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全身性アミロイドーシス

ぜんしんせいあみろいどーしす

(認定基準、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1.概要

全身性アミロイドーシス(amyloidosis)は線維構造をもつ蛋白質であるアミロイドが、全身臓器に沈着することによって機能障害を引き起こす一連の疾患群である。 アミロイドは、病理学的にアルカリコンゴ赤染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下で緑色の複屈折を示すものである。蛋白質が立体構造(コンフォメーション)を変化させて凝集し疾患を引き起こすことから、コンフォメーション病の1つとして捉えられている。

2.原因

これまでに31種類のアミロイドーシスが報告されており、それぞれにおけるアミロイドの形成、沈着機序に違いがあるものの、すべてに共通すると考えられているアミロイド線維形成機序は、まずアミロイド原因 (前駆体) 蛋白質が産生され、次にそれがプロセッシングを受け、重合、凝集してアミロイド線維となる、というものである。

3.症状

アミロイドーシスの症状は、アミロイドの沈着による臓器・組織の障害に基づくもので、病型ごとに異なる臨床症状を示す。全身性アミロイドーシスで特に注目すべき症状は全身衰弱、貧血、心アミロイド沈着による心症状、消化器障害、腎症状(ネフローゼなど)、手足のしびれなどである。 認知症の原因の過半数は脳にアミロイド沈着(老人班)を起こすアルツハイマー病であること、また、高齢者では脳血管壁へのアミロイド沈着(アミロイドアンギオパチー)により、脳葉型の脳出血や皮質、皮質下に微小出血を引き起こすることも知っておくべき重要な知識である。

4.治療法

これまで対症療法が主体であったが、近年病気を治す療法が可能になりつつある。原発性ALアミロイドーシスに対して自己末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法あるいはボルテゾミブの単独治療、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)では肝移植が行われている。また、本症では抗炎症薬ジフルニサルを用いた治療に加えて、タファミジス(ビンダケル)がニューロパチーの進行を遅延させることが明らかになっている。透析アミロイドーシスの予防として透析膜が改良され効果を挙げている。AAアミロイドーシスでは抗リウマチ作用を示す様々な生物製剤に加えて、抗IL-6受容体抗体を用いた治療が有効であることが明らかになってきている。また、アルツハイマー病ではコリンエステラーゼ阻害薬である塩酸ドネペジルが用いられ、症状を軽減させ、進行を遅らせる効果を有することが明らかになってきている。更に、アミロイドに対するワクチン療法等も現在開発中である。

5.予後

病型により異なり、個人差もあるが、基本的に進行性の経過をたどり、治療をしなければ予後不良である。

 
○ 要件の判定に必要な事項

1.患者数(平成24年度医療受給者証保持者数)
1,802人
2.発病の機構
不明(アミロイド蛋白が原因だが,その機序は不明である)
3.効果的な治療方法
未確立(対症療法が主体)
4.長期の療養
必要(進行性である)
5.診断基準
あり(現行の特定疾患治療研究事業の診断基準を研究班にて改訂)
6.重症度分類
アミロイドーシスの重症度分類を用いて2度以上を対象とする。

 
○ 情報提供元

「アミロイドーシスに関する調査研究班」
研究代表者 熊本大学大学院生命科学研究部 神経内科学分野 
教授 安東 由喜雄

 
○ 付属資料

現行の特定疾患治療研究事業の診断基準を研究班にて改訂
重症度基準(アミロイドーシスの重症度分類)

 

<診断基準>
指定難病の対象となる病型は、免疫グロブリン性アミロイドーシス、家族性アミロイドーシス及び老人性トランスサイレチン型 (TTR)アミロイドーシスに限り、「確実」例、「疑い」例を対象とする。多発性骨髄腫の診断基準に合致するものは除く。

1 免疫グロブリン性、反応性AA及び老人性TTRアミロイドーシス
免疫グロブリン性、反応性AA及び老人性TTRアミロイドーシスは、臨床症状の類似点が多く、それのみでは鑑別することが困難であるので1つの診断基準として作成している。

(1) 概念

免疫グロブリンに由来する免疫グロブリン性アミロイドーシスは、旧分類の原発性アミロイドーシスの大部分と骨髄腫に伴うアミロイドーシスが含まれる。
反応性AAアミロイドーシスは続発性アミロイドーシスの大部分で、関節リウマチ、炎症性腸疾患、気管支拡張症、結核に続発する。
老人性TTRアミロイドーシスは、主として心臓、手関節を代表とする大関節に沈着し、そのアミロイド蛋白は野性型トランスサイレチンである。

 

 (2) 主要事項

まず免疫グロブリン性、反応性AA及び老人性TTRアミロイドーシスの可能性を思いつくこと、症状が多彩であるため念頭にないことが多い。生検のみが生前確診の手段であるので、本症の可能性を考えつつ生検して診断に至るべきである。骨髄腫及び類縁疾患のときはもちろん、長期にわたる難治性炎症性疾患(特に関節リウマチ)では必ず本疾患の可能性を考えてみることが必要である。
 ① 主要症状及び所見

(a) 全身衰弱・体重減少・貧血・浮腫・呼吸困難・胸痛・紫斑

(b) 心電図における低電位・不整脈・伝導ブロック・QS 型(V1~V3)・低血圧・起立性低血圧・心肥大

(c) 頑固な便秘・下痢を主徴とする胃腸障害、吸収不良症候群

(d) 蛋白尿・腎機能障害

(e) 肝腫大・脾腫・ときにリンパ節腫大

(f) 巨舌

(g) shoulder-pad sign、その他関節腫大

(h) 多発性ニューロパチー

(i) 手根管症候群

(j) 皮膚の強皮症様肥厚、結節

(k) 甲状腺、唾液腺などの硬性腫大

(l) 免疫グロブリン異常:血清中にM蛋白又は尿中にベンス・ジョーンス蛋白をみることがある。

 ② 参考事項
 [皮膚症状からみた全身性アミロイドーシス診断基準]
全身性アミロイドーシスの中で、原発性アミロイドーシスと多発性骨髄腫に合併するアミロイドーシスの半数以上に皮膚症状がみられ、診断の手がかりになる。アミロイドの沈着しやすい眼瞼、頸、頭、外陰及び肛門周囲に、沈着量に応じて米粒大位の丘疹から大きな腫瘤まで生じる。硬く、黄色調を帯び、しばしば紫斑を伴う。強皮症様に硬くなることもある。

 (3) 生検

皮膚・腎などで疑わしい病変があれば生検する。そのような部位がなければ内視鏡下の胃・十二指腸生検、直腸生検が望ましい。胃生検は胃前庭部で粘膜筋板以下まで深めにとることが重要であり、十二指腸では球部後壁から採取する。また、従来より行われている直腸生検では浣腸後(通常はグリセリン浣腸液 120ml でよい)、直腸後壁から粘膜下組織を含む小片をとる。また近年、腹壁の脂肪吸引生検(abdominal fat aspiration biopsy)が広く行われている。臍周囲部の腹壁を局麻後、18ゲージの注射針で脂肪層を強く吸引して脂肪滴を得て、スライドガラス上に脂肪滴を数個載せて2枚のスライドガラスで押しつぶすようにして塗抹標本を作製し、乾燥後に検討を行う。生検組織はヘマトキシリン・エオシン染色のほかにアルカリコンゴ-赤染色をし、またその標本を偏光顕微鏡下で観察する。偏光観察には簡単に普通顕微鏡に装着できる偏光板が安価で市販されている。アミロイドは緑色の強く輝く複屈折を呈する。免疫組織化学的染色でAL、AA、トランスサイレチンを証明することができる(もし、不可能ならば専門家に連絡することが望ましい)。電子顕微鏡観察も有用であり、それが不可能ならば小片を 2%グルタールアルデヒドで固定し、4℃に保存して、専門家に連絡することが望ましい。

 

 (4) 免疫グロブリン性、反応性AA及び老人性TTRアミロイドーシスの疑いのある患者で避けるべき検査

① 肝生検
出血の危険がある。
② 多量のベンス・ジョーンス蛋白尿があるときは IVP(経静脈腎孟撮影)で無尿を誘発する危険がある。

 

 (5) 診断の基準

① 確実
生検で陽性。
② 疑い
主要症状及び所見のうち(a)~(k)の1つ以上を認め、かつ(l)が陽性の場合は免疫グロブリン性(原発性)アミロイドーシスが疑われる。
③ 可能性を考慮
主要症状及び所見のうち(a)、(b)の1つ以上が存在する場合は一応免疫グロブリン性、反応性AAあるいは老人性TTRアミロイドーシスの可能性を考慮してみる。

 

2 家族性アミロイドニューロパチー

(1) 概念

初期には末梢神経と自律神経に高度のアミロイド沈着が起こり、進行期には、心臓、消化管、腎臓も障害される。主要病像は多発性ニューロパチーと自律神経機能不全である。沈着するアミロイド蛋白質はⅠとⅡ型では変異トランスサイレチン、Ⅲ型は変異アポリポ蛋白AⅠ、Ⅳ型では変異ゲルソリンである。 また新たに変異型β2ミクログロブリンもアミロイド原蛋白質として報告されている。

 

(2) 主要事項

① 主要症状
(a) 感覚障害
左右対称性に、下肢又は上肢末端から始まる。温度覚、痛覚が早く、かつ強く侵され(解離性感覚障害)、振動覚、位置覚は進行期に侵される。手根管症候群で発症する場合もある。
(b) 運動障害
感覚障害より数年遅れて出現し、筋萎縮、筋力低下が下肢又は上肢末端から始まる。
(c) 自律神経系の障害

1 陰萎(男性)

2 胃腸症状(激しい嘔気・嘔吐発作、ひどい便秘と下痢の交代、不定な腹痛、腹部重圧感)

3 起立性低血圧(立ちくらみ、失神)

4 膀胱障害(排尿障害、尿失禁など)

5 皮膚症状(皮膚栄養障害、発汗異常、難治性潰瘍)

6 心障害(心伝導障害による不整脈、心不全)

② 発病は緩徐で、経過は漸次進行性である。

③ 遺伝様式
常染色体優性(問診のみでは遺伝歴が不明なことがある)

④ 組織所見
末梢神経、胃・直腸、皮膚、腹壁脂肪の吸引生検でアミロイド沈着を認める。

 


(3) 参考事項

① 発病年齢は通常 20~40歳代であるが、集積地以外の家系は50歳以後の高齢発症である。

② 初発症状は四肢末端のしびれと自律神経障害

③ 感覚障害が体幹に及ぶと、胸腹部に島状の感覚低下領域を認める。

④ 心障害、腎障害は遅れて出現し、次第に心不全、尿路感染症、尿毒症を合併し、悪液質となる。

⑤ 瞳孔の不整、対光反射の消失を認めることがある。

⑥ 硝子体混濁を初発症状とすることがある。

⑦ 末梢神経、皮膚、胃・直腸などの臓器生検でアミロイド沈着を認める。

⑧ 検査所見

(a) 心電図:伝導障害と心筋障害

(b) 心エコー:心筋の肥厚とエコー輝度の増強

(c) Technetium-99m-Pyrophosphate(Tc-99m-PYP)心筋シンチグラフィー:陽性画像

(d) 末梢神経伝導速度の低下

⑨ Mass spectrometory やラジオイムノアッセイ法による血清中の変異トランスサイレチンの検出

⑩ トランスサイレチン、ゲルソリン等の遺伝子診断

(4) 臨床診断の基準

① 確実
主要事項①の中の(a)~(c)の2つ以上とアミロイド前駆蛋白の遺伝子異常を認める場合

② 疑い
家系内に確実者があり、主要事項①の中の(a)~(c)の1つ以上を認める場合


<重症度分類>
2度以上を対象とする。
1度 組織学的にアミロイド沈着が確認される、もしくは、アミロイド沈着を疑わせる検査所見があるが、アミロイド沈着による明らかな臓器機能障害を認めない。
2度 組織学的にアミロイド沈着が確認される、もしくは、アミロイド沈着を疑わせる検査所見があり、かつアミロイド沈着による軽度の臓器機能障害を単一臓器に認める。
3度 組織学的にアミロイド沈着が確認される、もしくは、アミロイド沈着を疑わせる検査所見があり、かつアミロイド沈着による複数の臓器機能障害を認める。
4度 組織学的にアミロイド沈着が確認され、かつアミロイド沈着による中等度以上の臓器機能障害を単一もしくは複数の部位に認める。
5度 組織学的にアミロイド沈着が確認され、かつアミロイド沈着による重度の臓器機能障害を複数の部位に認める。
注1:アミロイド沈着を確認された部位は、臓器障害を認める部位と必ずしも一致する必要はない。
注2:アミロイドーシス原因蛋白質の同定および病型診断を行うことが望ましい。
注3:臓器障害は、神経、心臓、腎臓、消化管、呼吸器、泌尿器、眼、骨・関節、内分泌など。

※なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要な者については、医療費助成の対象とする。

アミロイドーシスに関する調査研究班から


アミロイドーシス診療ガイドライン2010

 

アミロイドーシス 研究成果(pdf 27KB)

この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

この疾患に関する関連リンク


アミロイドーシスに関する調査研究班ホームページ


治験情報の検索:国立保健医療科学院
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情報提供者
研究班名 アミロイドーシスに関する調査研究班
研究班名簿  研究班ホームページ 
情報更新日平成27年1月6日