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自己免疫性肝炎

じこめんえきせいかんえん

この病気は、平成27年1月1日から医療費助成対象疾病(指定難病)となります。
(指定難病一覧(概要、診断基準等・臨床調査個人票))

1.「自己免疫性肝炎」とはどのような病気ですか

自己免疫性肝炎は、通常は慢性に経過する肝炎で肝細胞が障害されます(血液検査にてASTやALTが上昇します)。自己免疫性肝炎が発病するのには免疫の異常が関係していると考えられています。中年以降の女性に好発することが特徴です。原因がはっきりしている肝炎ウイルス、アルコール、薬物による肝障害、および他の自己免疫疾患による肝障害を除外して診断します。また、治療では副腎皮質ステロイド (※注1)が効果的です。英語ではAutoimmune hepatitis と呼ばれ、頭文字からAIH と略して使われることがあります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

わが国の「難治性の肝・胆道疾患調査研究班」による全国集計では約1000人の患者さんが集計されており、推定で約10,000人程度の患者さんがいると思われます。肝炎ウイルスの検査が簡単に実施できるようになり、また自己免疫性肝炎の診断も進んできていることから、今後診断される患者さんは増加していくものと思われます。慢性肝炎患者のうち自己免疫性肝炎の占める割合は1.8%とされています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

自己免疫性肝炎と診断される患者さんの男女比は1:6で女性に多い病気です。中年女性に多く50歳から60歳代が発症の中心となっています。近年の傾向として男性の比率が増え、高齢化が示されています。一方、欧米では10歳から20歳代と40歳から50歳代にピークをもつ2峰性の分布を示しており、日本とは異なる年齢分布を示します。

4. この病気の原因はわかっているのですか

原因は不明です。血液検査で自己抗体抗核抗体や抗平滑筋抗体)が陽性で免疫グロブリンが高く、副腎皮質ステロイド治療によく反応することなどから、自己免疫 (※注2)が関与していると考えられています。肝臓の組織検査でもリンパ球が多数浸潤し、肝細胞が障害されている像が認められます。ウイルス感染や薬剤服用、妊娠・出産後に発症する場合もあり、これらが発症誘因となる可能性が報告されています。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝することはありません。日本人では60%の症例でHLA (human leukocyte antigen) (※注3)-DR4陽性、欧米ではHLA-DR3とHLA-DR4 陽性例が多いことから何らかの遺伝的素因が関与していると思われます。しかし、明確な原因遺伝子は確定していません。親子や兄弟など家族内で発症する例もありますがごくまれです。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

通常は自覚症状がなく、健診などで偶然発見されることが多いとされます。急性肝炎様に発症する際は、倦怠感、皮膚の黄染、食欲不振などの症状がみられますが、自己免疫性肝炎に特徴的な症状はありません。病気が進行した状態で発見される場合もあり、肝硬変へ進行した状態では、下肢のむくみ、腹水による腹部の張りや吐血(食道静脈瘤 (※注4)からの出血)などの症状がおきることがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

治療の基本は、副腎皮質ステロイドによる内服です。副腎皮質ステロイドであるプレドニゾロンを発症時に0.6 mg/kg/日以上の量を目安とし、また病状が重い場合には0.8 mg/kg/日以上で内服を開始します。肝機能検査値の推移を見ながらゆっくり漸減し、数値が安定する最低量のプレドニゾロンを維持量として長期間、内服して頂きます。

ウルソデオキシコール酸が副腎皮質ステロイドを減量する際に併用あるいは軽症例に単独で使用することがあります。経過中に病気が再燃した場合は、ステロイドの増量やアザチオプリン(保険未収載)の併用を考慮します。

副腎皮質ステロイド内服中は、消化性潰瘍、満月様顔貌、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症などの副作用が出現することがあり、これら副作用についてもよく理解し、病態に応じて予防薬投与を受けることも大切です。副腎皮質ステロイドの自己中止は自己免疫性肝炎の再燃につながるため、きちんと服用することが大切です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

発病は一般に緩徐であり、自覚症状も軽微な場合が多いために健康診断などで偶然に発見されることも度々あります。しかし、治療を行わないとその進行は早く、肝硬変から肝不全に至ります。適切な治療を施された患者さんのほとんどでは、肝臓の炎症が速やかに改善し、進行もみられなくなります。日本での調査では、適切な治療を受けている自己免疫性肝炎患者さんの死亡率は一般人口の死亡率と差のないことが示されています。ただ、頻回に肝機能検査値が悪化する患者さんの中には予後不良な方も存在し、肝不全や肝細胞癌を発症する場合があります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

自己免疫性肝炎の治療には副腎皮質ステロイドが使用されますが、副作用として食欲亢進や肥満、糖尿病、脂質異常症が出現することがあります。したがって、食事の量に気を付けて、高カロリー食を避け、体重が増えないようにすることが大切です。また、副腎皮質ステロイド内服中は体の抵抗力が低下するので、人の多いところへ出かける時にはマスクを着用したり、粉塵の多い場所を避けたりすることが必要です。

予防接種については、不活化ワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌、B型肝炎など)やトキソイドワクチン(ジフテリア、破傷風など)は接種可能ですが、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤での治療中には予防効果が少ないことがあります。一方、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふくなど)は、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を服用している場合は、原則として接種できません。

妊娠・出産は可能ですが、治療薬が胎児に影響を及ぼす場合があるので主治医とよく相談してください。また、自己免疫性肝炎は、妊娠中は病気の落ち着くことが多いですが、出産後に病気が悪化する場合があるため、専門医療機関への受診が必要です。


※注1 副腎皮質ステロイド
副腎皮質から分泌されるホルモンで、炎症と免疫を抑制する作用があります。作用時間を長くなるように工夫して化学合成された糖質コルチコステロイドを治療に使用しており、これを通常副腎皮質ステロイドと言います。その代表はプレドニゾロンです。自己免疫性肝炎ではプレドニゾロンが多く使用されています。

※注2 自己免疫
体の健康を守る免疫系は、外から体のなかへ侵入してきた異物(非自己)に対して体を防御しますが、生まれながら体のなかにある物(自己)に対しては働かないのが原則です。ところが、自己を非自己と認識して免疫系が働いてしまうことがあり、これを自己免疫と呼びます。

※注3 HLA
白血球の型を示すたん白質の一種です。細胞表面に存在し、病原体の断片を提示してリンパ球に情報を伝える働きをします。自己免疫疾患の患者さんの多くは特定のHLA を持つことがよくあります。自己免疫性肝炎ではHLA-DR3、4 を持っている患者さんの割合が高く、日本人はHLA-DR4 を持つ人が多くなっています。

※注4 食道静脈瘤
肝硬変などの門脈圧亢進をきたす疾患が原因となり、食道の粘膜を流れる静脈が瘤(こぶ)のように隆起した状態をいいます。静脈瘤自体の症状はありませんが、静脈瘤が破れると吐血をきたします。  

難治性の肝疾患に関する調査研究班から

患者さん・ご家族のための自己免疫性肝炎(AIH)ガイドブック(2013)(pdf 2.26MB)

自己免疫性肝炎(AIH)の診療ガイドライン(2013)(pdf 4.91MB)


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情報提供者
研究班名 難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班
研究班名簿   
情報更新日平成26年12月9日