特発性多中心性キャッスルマン病(指定難病331)

とくはつせいたちゅうしんせいきゃっするまんびょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1.特発性多中心性キャッスルマン病とはどのような病気ですか?

キャッスルマン病は1956年に医師のBenjamin Castleman先生が提唱した慢性のリンパ節腫脹および慢性 炎症 を特徴とする疾患群です。分類としては単一のリンパ節のみに発症する単中心性キャッスルマン病Unicentric Castleman Disease(UCD)、および複数のリンパ節に発症する多中心性キャッスルマン病Multicentric Castleman Disease(MCD)に分けられます。原因は不明ですが、欧米ではHIVおよびヒト・ヘルペスウイルス8型(HHV-8)陽性者でのキャッスルマン病の合併が多く報告され、ウィルス感染との関連が考えられていました。多中心性キャッスルマン病のうち、HHV-8感染がみられない原因不明のものが特発性多中心性キャッスルマン病で、日本での多中心性キャッスルマン病のほとんどは、特発性多中心性キャッスルマン病です。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

日本における特発性多中心性キャッスルマン病は有病者数1,500人程度、年間の発症数は100万人あたり1人程度と推定しています。

3.この病気はどのような人に多いのですか

多中心性キャッスルマン病の発症年齢中央値は50歳前後と言われています。トシリズマブ治療を受けた日本の多中心性キャッスルマン病患者342例の全例調査によると、男女比はおよそ6対4でやや男性に多く、発症年齢中央値は43歳でした。

4.この病気の原因はわかっているのですか

多中心性キャッスルマン病のリンパ節では成熟B細胞や形質細胞が増加しており、これらは多クローン性であり、反応性の増加と考えられています。病変リンパ節でみられる血管増生も反応性の変化と考えられています。こういったリンパ節組織像の変化、および多中心性キャッスルマン病でみられる症候の多くは、炎症性サイトカイン(体内にあって体温や発汗などをコントロールしている物質)のIL-6の過剰産生で引き起こされます。抗IL-6療法が特発性多中心性キャッスルマン病患者さんの諸症状を劇的に改善する事実も、IL-6の病態への関与を強く支持しています。しかしながら、抗IL-6療法が奏功しない特発性多中心性キャッスルマン病患者さんもおられ、そこにはIL-6以外の因子が関与していることもわかってきました。

5.この病気は遺伝するのですか

世界的には数例血縁者間で発症した患者が知られています。しかし全患者のごく一部で、一般には遺伝はしないものと考えられています。

6.この病気ではどのような症状がおきますか

症状としてはリンパ節腫脹、発熱、倦怠感、皮疹などの 非特異的 な炎症症状があげられます。
細菌感染やリウマチ性疾患などで発熱や倦怠感がありますが、それらの症状が原因なくおこり、ずっと続くと考えたら良いかもしれません。軽症の方では、まったく無症状で検査所見だけから診断される事もあります。検査所見では貧血、腎障害および多クローン性ガンマグロブリンの上昇、CRP陽性などの慢性炎症所見があります。画像所見では全身あるいは局所のリンパ節腫脹が主体です。経過は数年に渡りますが、無治療では倦怠感や発熱などで日常生活が障害される事が多いです。

7.この病気にはどのような治療法がありますか

多中心性キャッスルマン病にIL-6の過剰産生が大きく関わる事が判明し、抗IL-6レセプター抗体であるトシリズマブが2005年に市販され治療に中心的な役割を果たしています。トシリズマブでIL-6の作用を遮断し、症状を軽快もしくは消失させる事ができます。しかしあくまでも対症療法であり、通常は2週間ごとの反復投与が必要です。症状改善が不十分の場合は、投与間隔を1週間隔まで短縮できます。副腎皮質ステロイドも使われますが、副作用リスク(糖尿病、骨粗鬆症、感染症など)が多岐にわたるので、短期的に使用するのが良いと考えられていますが、重症の方では、ステロイド大量療法(ステロイド・パルス療法を含む)とトシリズマブの併用が推奨されています。それでも改善しない場合は、リツキシマブや化学療法などを考慮しますが、これらは保険適応外となります。

8.この病気はどういう経過をたどるのですか

以前の適切な治療が行われなかった頃の生命予後は、30ヶ月程度で不良とされていましたが、これにはHHV-8関連MCDが含まれていたと思われ、日本で大部分を占める特発性多中心性キャッスルマン病のみのデータではありません。いずれにしても現在はトシリズマブの治療で予後は大幅に改善し、TAFRO症候(Thrombocytopenia血小板減少, Anasarca全身性浮腫, Fever発熱, Reticulin fibrosis or Renal dysfunction細網線維増生もしくは腎機能障害, Organomegaly臓器腫大)を伴わない特発性多中心性キャッスルマン病では、5年全生存率が100%、10年全生存率は90%以上との報告もあります。一方、TAFRO症候を伴う特発性多中心性キャッスルマン病の多くは亜急性に発症して急速に腎不全が進行することがあり、TAFRO症候を伴わないものよりも予後は良くないと報告されています。

9.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

治療の必要のない軽症例では通常と同じ日常生活となります。
トシリズマブや副腎皮質ステロイドを使用している方は、肺炎などを併発しても発熱などの原因となるIL-6などのサイトカインが働かないので、高熱が出ないままに悪化する事があります。咳など他の症状に注意しましょう。また、長期にわたって副腎皮質ステロイドを投与される場合は、糖尿病や骨粗鬆症の発症や感染症などに注意が必要です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

「キャッスルマン病、TAFRO症候群、類縁疾患の診療ガイドラインの策定や更なる改良に向けた国際的な総意形成を踏まえた調査研究」
https://castleman.jp/index.html)

参考文献:
キャッスルマン病診療ガイドライン(令和2年度初版)https://castleman.jp/index.htmlに掲載
吉崎 和幸, 岡本 真一郎, 川端 浩, 他. キャッスルマン病診療の参照ガイド. 臨床血液. 2017;58: 97-107.

キャッスルマン病患者会ホームページ
http://www.eonet.ne.jp/~castleman/index.html
 

情報提供者
研究班名 キャッスルマン病、TAFRO症候群、類縁疾患の診療ガイドラインの策定や更なる改良に向けた国際的な総意形成を踏まえた調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)