心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症(指定難病214)

しんしつちゅうかくけっそんをともなうはいどうみゃくへいさしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症とは?

ファロー四徴症の約20%の症例では、肺動脈と大動脈を分割する漏斗部中隔が最前方に偏位して肺動脈の起始部が閉鎖する症例が存在し、心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症と呼ばれます。ファロー四徴の重症型であるため、極型ファローとも呼ばれます(図1左)。肺への血流は動脈管の開存により維持されます。中には主肺動脈の発達が悪く、下行大動脈から枝分かれする主要体肺側副動脈(MAPCA、major aorto-pulmonary collateral artery)により肺への血流が維持される患者さんもいます(図1右)。
 

図1左;心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症 右;MAPCAを伴う症例

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか。

先天性 心疾患の約1%で出生約10,000人に1人とされています。

3. この病気はどのような人に多いのですか。

22q11.2欠失症候群との合併頻度が高いことが知られています。

4. この病気の原因はわかっているのですか。

基本的な原因はファロー四徴症と同じく、右室流出路の形成に重要な二次心臓領域の細胞、もしくは肺動脈基部の形成に重要な神経堤細胞の機能異常により引き起こされると考えられています。右室流出路から肺動脈の基部の間が閉塞するために、肺血流は開存する動脈管もしくは胸部大動脈から起始するMAPCAにより供給されます。多くのMAPCAを伴う症例では、中心肺動脈は一般に細くその枝も未発達であり、稀に中心肺動脈が完全にないこともあります。

5. この病気は遺伝するのですか。

心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症では、明らかに強い遺伝性は認められていません。一般に先天性心疾患の親から子へ何らかの先天性心疾患が遺伝する確率は、父親で3-5%程度、母親で5-10%程度とされています。ただし両親のいずれかが22q11.2欠失症候群である場合は、50%の確率で親から子に遺伝します。

6. この病気ではどのような症状がおきますか。

出生直後からチアノーゼが見られます。動脈管開存により十分な肺血流が維持される症例や、豊富なMAPCAによって十分な肺血流が維持される症例では、チアノーゼが目立たないこともあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか?

心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症では、新生児期には肺血流は開存する動脈管もしくはMAPCAにより供給されます。動脈管に依存する場合、生まれた直後から、動脈管を開くプロスタグランディン製剤の持続点滴を行い、続いてブラロック・トーシッヒ手術を実施して肺血流を維持します。末梢の肺動脈や左心室が十分に発達する1歳前後に心室中隔欠損を閉じる手術および、弁付きパッチ(導管)により右心室と肺動脈をバイパスする右室流出路形成術もしくはラステリ手術を行います。この際、ブラロック・トーシッヒシャントを閉鎖します。多くのMAPCAが発達した心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症では、乳児期中後期にMAPCAを束ねて主肺動脈もしくは人工血管を介して右室流出路に吻合する肺動脈統合術(ユニフォーカリゼーション手術)が行われます。約1年後に肺血流分布が均等になれば、心室中隔欠損閉鎖術を行います(図2)。
 

図2:心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症の手術。左;BTシャント(ブラロック・トーシッヒシャント)。中央;弁付きパッチによる右室流出路形成術、右;ラステリ手術

8. この病気はどういう経過をたどるのですか。

外科治療が行われない場合は、1年生存率が75%、3年生存率が60%、10年生存率が30%と言われています。新生児期に適切に診断され、適切な段階的手術が行われた症例では、 生命予後 は改善しています。しかしながらこのような症例でも、年数とともに、肺動脈弁閉鎖不全や右心機能不全による 右心不全 の進行、左心不全の出現、心房・心室頻拍による血行動態の悪化が生じることがあります。症状や検査の結果次第では、再手術、肺動脈に対する カテーテル治療 、不整脈に対するカテーテルアブレーションなどが必要になります。中心肺動脈が欠損しMAPCAを合併する症例では、ユニフォーカリゼーション手術などの段階的手術が行われても、依然として 予後 は不良です。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか。

一般に、心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症においては、術後に問題となるような肺動脈狭窄および閉鎖不全や 重篤 な不整脈のないお子さんでは、学校での体育活動は無理をしない範囲であれば参加可能です。無理をしない範囲でのクラブ活動も可能です。MAPCAに対してユニフォーカリゼーション手術を行ったお子さんでは、肺動脈弁狭窄や閉鎖不全、右心不全、頻脈性不整脈をきたしやすいため、学校での運動制限や生活制限が必要になってきます。主治医の指示に従って定期的な検査を受け、必要であれば薬を服用して、規則正しい無理のない生活をするようにしましょう。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

極型ファロー四徴症

11. この病気に関する資料・リンク

① 小児・成育循環器学. 日本小児循環器学会編集. 診断と治療社, 2018.
② 小児慢性特定疾病情報センターホームページ
https://www.shouman.jp/disease/details/04_32_039/
③ 先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_Yasukochi.pdf
④ 成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wpcontent/uploads/2020/02/JCS2017_ichida_h.pdf
⑤ 先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wpcontent/uploads/2020/02/JCS2012_echigo_h.pdf
⑥ 先天性心疾患、心臓大血管の構造的疾患に対するカテーテル治療のガイドライン(2021年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Sakamoto_Kawamura.pdf

情報提供者
研究班名 先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上と生涯にわたるQOL改善のための総合的研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年3月(名簿更新:令和4年7月)