中條・西村症候群(指定難病268)

なかじょうにしむらしょうこうぐん

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
慢性反復性の炎症と進行性のやせ・消耗を特徴とする、特異な遺伝性自己炎症疾患であり、常染色体劣性遺伝性である。1939年の中條、1950年の西村らの報告以来、「凍瘡を合併する骨骨膜症」などの病名で、和歌山・泉南を中心とした関西と関東・東北から、これまでに30例ほどの報告がある。
幼小児期に凍瘡様皮疹にて発症し、結節性紅斑様皮疹や周期性発熱を繰り返しながら、次第に長く節くれ立った指、顔面と上肢を主体とする部分的脂肪筋肉萎縮が進行する。
本邦特有とされたが、2010年に本疾患と臨床的に酷似する症例がJMP症候群・CANDLE 症候群という病名で欧米・中東から報告された。3疾患とも、プロテアソーム複合体の誘導型サブユニットをコードするPSMB8遺伝子に変異のあることが報告され、これを原因とする同一疾患と考えられている。
 
2.原因
PSMB8遺伝子の変異により、細胞内で蛋白質分解を行うプロテアソーム複合体の機能が低下することによって発症すると考えられるが、詳しいメカニズムは不明である。
 
3.症状
幼小児期に手足の凍瘡様皮疹にて発症し、その後結節性紅斑様皮疹が全身に出没したり、発熱や筋炎症状を繰り返すようになる。低身長など発育障害を呈する症例もある。早期より大脳基底核の石灰化を伴うが、精神発達障害ははっきりしない。次第に特徴的な長く節くれ立った指と、顔面と上肢を主体とする部分的脂肪筋肉萎縮、やせが進行し、手指や肘関節の屈曲拘縮を来す場合がある。血清LDH、CPK、CRPやAAアミロイド値が高く、抗核抗体が陽性になることがある。一方、ステロイド内服により逆に腹部や下半身の肥満を来す場合もある。脂質代謝異常ははっきりしないが、恐らく呼吸障害や心機能低下のために早世する症例がある。
 
4.治療法
標準的治療法はない。ステロイド内服が行われ、発熱、皮疹などの炎症の軽減には有効だが、萎縮ややせには無効である。むしろ長期内服による成長障害、代償性肥満、緑内障、骨粗鬆症など弊害も多い。
 
5.予後
一部の軽症例を除くと、繰り返す発熱・筋炎、発育障害、進行性の脂肪筋肉萎縮・関節拘縮などによりQOLが著しく低下する。重症例では若年での突然死もありうる。
 
疾患の典型例においては、以下の様な進行パターンに分類できる。
軽症パターン:発達発育障害を認めず、萎縮・拘縮も軽度。発作時も全身状態が良好で、発疹も非露出部のみ。
重症パターン:低身長などの発育障害を認め、萎縮・拘縮も高度。発作時に倦怠感や筋炎、肝障害などを伴う。顔面など露出部の発疹が目立つ。
最重症パターン:早期より萎縮・拘縮が進行する。心肺機能が低下し酸素吸入を要する。突然死するリスク がある。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
100人未満
2.  発病の機構
不明(遺伝子変異により、細胞内で蛋白質分解を行うプロテアソーム複合体の機能が低下することが関与する。)
3.  効果的な治療方法
未確立(対症療法のみである。)
4.  長期の療養
必要(進行性である。)
5.  診断基準
あり(研究班作成)
6.  重症度分類
重症度分類にて中等症以上の症例を助成対象とする。
 
○ 情報提供元
「自己炎症疾患とその類縁疾患に対する新規診療基盤の確立」
研究代表者 京都大学大学院医学研究科発達小児科 教授 平家俊男
<診断基準>
Definite、Probableを対象とする。
中條・西村症候群診断基準
 
以下にて中條・西村症候群の診断を行う
1.臨床症状
1.常染色体劣性遺伝(血族婚や家族内発症)
2.手足の凍瘡様紫紅色斑 (乳幼児期から冬季に出現)
3.繰り返す弛張熱 (周期熱)(必発ではない)
4.強い浸潤・硬結を伴う紅斑が出没(環状のこともある)
5.進行性の限局性脂肪筋肉萎縮・やせ(顔面・上肢に著明)
6.手足の長く節くれだった指、関節拘縮
7.肝脾腫
8.大脳基底核石灰化
 
2.PSMB8遺伝子解析
 
<診断のフローチャート>
1)    臨床症状の5項目以上陽性で他の疾患を除外できる場合に中條・西村症候群と臨床診断し、またこの基準を満たさない場合は臨床的疑いとし、PSMB8遺伝子解析を行う。
2)    Definite:PSMB8遺伝子の双遺伝子座に疾患関連変異があれば、上記5項目以上陽性でなくても診断確定。
3)    Probable:PSMB8遺伝子の双遺伝子座に疾患関連変異がない場合でも、上記5項目以上を認めれば臨床的診断とする。
 
 
<重症度分類>
重症度分類にて中等症以上の症例を助成対象とする。
 
重症度分類
以下の表を参照し、
軽症   :スコアが全て0か1。
中等症 :1つでもスコア2がある。
重症   :1つでもスコア3がある。
 

 

スコア

発熱発作
(注1)

皮疹

脂肪筋肉萎縮
・関節拘縮

内臓(心・肺・肝臓)病変

なし

なし

なし

なし

38度以上の発作が年3回以内

非露出部のみ

  日常生活動作には制限なし

検査異常のみ・自他覚症状なし(治療を要さない)

38度以上の発作が年4回以上

露出部に出没

 身の回り以外の日常生活動作の制限

自他覚症状あり
(要治療・可逆性)

 

 

 身の回りの日常生活動作の制限

機能廃絶(非可逆性)

 
(注1)発熱発作の定義は当該疾病が原因となる38.0℃以上の発熱を発熱発作とする。その際には感染症やその他の原因による発熱を除外すること。発作と発作の間には少なくとも24時間以上の無発熱期間があるものとし、それを満たさない場合は一連の発作と考える。
 

 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

本疾患の関連資料・リンク

自己炎症性疾患サイト 中條—西村症候群
http://aid.kazusa.or.jp/2013/disease/nns
 
OMIM #256040 Autoinflammation, lipodystrophy, and dermatosis syndrome:
http://omim.org/entry/256040
 
ORPHA2615 Nakajo-Nishimura syndrome:
http://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?lng=EN&Expert=2615


情報提供者
研究班名自己炎症性疾患とその類縁疾患の全国診療体制整備、重症度分類、診療ガイドライン確立に関する研究班
研究班名簿 
情報更新日令和元年6月