慢性再発性多発性骨髄炎(指定難病270)

まんせいさいはつせいたはつせいこつずいえん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)」とはどのような病気ですか

子供が手足の痛みを訴えても、殆どの場合はすぐに回復しますが、まれに慢性に経過して詳しい検査が必要になる場合があります。感染症や腫瘍が否定され、 非特異的 な骨髄の 炎症 と周囲の骨吸収を認める病態を、慢性非細菌性骨髄炎(Chronic Nonbacterial Osteomyelitis:CNO)と診断しますが、CNOの病変が多発性・慢性・再発性に認められる病気が慢性再発性多発性骨髄炎(Chronic Recurrent Multifocal Osteomyelitis:CRMO)です。小児に多いと考えられていますが、成人に発症する事もあり、関節炎・掌蹠膿胞症・尋常性 乾癬炎症性 腸疾患などの合併が認められます。成人からの報告例が多いSAPHO(synovitis, acne, pustulosis, hyperostosis and osteitis)症候群の一症状としてCRMOと同様の病変を認める場合があり、両疾患は炎症病態の一部を共有する類縁疾患と考えられています。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

正確な患者数は不明ですが、全国で400~500名ほどの患者さんがおられると推定されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

特定の人に多いということはありませんが、10歳前後の女児に多いとされています。

4. この病気の原因はわかっているのですか

詳しい病気のメカニズムは解明されていませんが、マウスモデルなどの病態研究より自然免疫系の活性化による炎症が示唆されています。

5. この病気は遺伝するのですか

基本的に遺伝はしないと考えられています。家族内発生例が存在するのである程度は遺伝的素因が関与していると思われ、疾患発症との関連が示唆される遺伝子が幾つか報告されていますが、現時点で確定的なものではありません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

骨痛(骨の痛み)が主な症状です。痛みは大腿など長管骨(長い骨)に認められる頻度が高いのですが、全身のあらゆる骨に生じる可能性があります。痛みは夜間〜早朝に強く、運動や寒さなどにより悪化する傾向があります。発熱や局所の腫れなどを伴う事は少なく、通常全身状態は良好です。合併症として、関節の痛みや腫れ、発疹、下痢・血便などの消化管症状を伴う事もあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

CRMOの治療方針は確立されてはいませんが、非ステロイド性抗消炎薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs:NSAIDs)が第一選択薬となります。50~80%の症例に有効とされており、これのみで完全に症状が消失する症例が過半数を占めます。ある種の薬剤で効果が無くても、他のNSAIDsへ変更すると効果が認められる場合があり、痛みの箇所が少ないほど反応が良いと報告されています。
NSAIDsで十分な効果が得られない場合の追加治療として、現時点で有効性が示されている薬剤はbisphosphonateとTNF(Tumor Necrosis Factor)α阻害薬です。使用が報告されているbisphosphonateは多くの場合pamidronateで、その有効性は8割程度とされています。TNFα阻害薬としてはetanerceptとinfliximabの使用報告が多く、6割強の有効性が報告されています。この他、CRMOで推定されている病態よりIL-1β阻害薬の有効性が期待されています。ただし、本邦ではbisphosphonate・TNFα阻害薬・IL-1β阻害薬ともCRMO治療に承認されておらず、標準的な使用方法も定まっていません。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

CRMOの長期 予後 は一般に良好と考えられており、炎症病態は数年の経過で消退する場合が多いとされていますが、10年以上に渡り炎症の持続する症例も存在します。診断や治療が遅れる事も多く、骨折による変形や四肢長の左右差による障害を残す例も存在します。脊椎に病変が認められる場合は圧迫骨折のリスクが高いため早期より積極的な治療を行うべきとされています。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

特別なケアは存在しませんが、過労やストレスを避ける事が推奨されます。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

SAPHO(synovitis, acne, pustulosis, hyperostosis and osteitis)症候群

 

情報提供者
研究班名 自己炎症性疾患とその類縁疾患における、移行期医療を含めた診療体制整備、患者登録推進、全国疫学調査に基づく診療ガイドライン構築に関する研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)