ダイアモンド・ブラックファン貧血(指定難病284)

だいあもんどぶらっくふぁんひんけつ
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
赤血球造血のみが障害される先天性の造血不全症である。骨髄は赤血球系細胞のみが著減し、末梢血では網赤血球が減少し、大球性正色素性貧血を呈する。ほとんどが乳児期に発症し、約半数に種々の奇形や発育障害がみられる。悪性腫瘍の合併もみられる。
 
2.原因
リボソームの機能障害が、貧血を引き起こす中心的なメカニズムであると考えられている。GATA1転写因子の遺伝子変異以外は、これまで見つかっているダイアモンド・ブラックファン貧血の原因となる遺伝子変異は全てリボソームタンパク遺伝子の変異である。本邦では約半数にリボソームタンパク遺伝子の変異が同定されている。
 
3.症状
新生児期から顔色不良で発見されることが多く、1歳までに90%が発症する。貧血の症状としては、息切れ、動悸、めまい、易疲労感、頭痛がある。約50%は種々の奇形や低身長を合併する。
 
4.治療法
輸血とステロイド療法が基本である。治療抵抗例では、同種骨髄移植の適応がある。
 
5.予後
生命予後は一般的に良好であるが、ステロイド療法及び輸血依存症例が約40%ずつ存在しており、その副作用及び合併症のために、長期にわたり悩まされ、生活の質として高いと言えない。また、ファンコニ貧血より頻度は低いが、悪性疾患を合併しやすい。
 
 
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約200人
2.  発病の機構
不明(原因遺伝子の同定にいたらない症例が存在する。)
3.  効果的な治療方法
未確立(ステロイド不応性あるいは依存性症例に対する薬物療法は未確立)
4.  長期の療養
必要
5.  診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり。)
6.  重症度分類
Stage 2以上を対象とする。
 
○ 情報提供元
「遺伝性貧血の病態解明と診断法の確立に関する研究班」
研究代表者 弘前大学大学院医学研究科 教授 伊藤悦朗
 
 
<診断基準>
Definite、Probableを対象とする。
 
遺伝性貧血の病態解明と診断法の確立に関する研究班作成の診断基準
 
A.診断基準
1.        1歳未満発症である。
2.        大球性貧血(あるいは正球性貧血)で他の2系の血球減少を認めない。
3.        網状赤血球減少を認める。
4.        赤芽球前駆細胞の消失を伴う正形成骨髄所見を有する。
 
B.診断を支持する基準
大支持基準
1.   古典的ダイアモンド・ブラックファン貧血に見られた遺伝子変異を有する。
2.家族歴を有する。
小支持基準
1.   赤血球アデノシンデアミナーゼ活性(eADA)と還元型グルタチオン(eGSH)の高値。
2.   古典的ダイアモンド・ブラックファン貧血にみられる先天奇形を有する。(表1)
3.   HbFの上昇。
4.   他の先天性骨髄不全症候群の証拠がない。
 
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
Transient erythroblastopenia of childhood(TEC)、先天性角化不全症、シュワッハマン・ダイアモンド症候群、 先天性無巨核球性血小板減少症、ピアソン症候群
 
D.遺伝学的検査
遺伝子の変異
RPS7RPS10RPS17RPS19RPS24RPS26RPS27RPS29RPL5RPL11RPL26RPL27RPL35AGATA1
 
<診断のカテゴリー>
Definite:Aの4項目を全て満たす。
Probable:①から③のいずれかを満たす。
① Aのうち3項目+Bのうち1つの大あるいは2つの小支持基準。
② Aのうち2項目+Bのうち2つの大あるいは3つの小支持基準。
③ Bのうち2つの大支持基準。
 
 
表1.ダイアモンド・ブラックファン(Diamond-Blackfan)貧血にみられる合併奇形
 
頭部、顔面、口蓋      両眼隔離症、口蓋裂、高口蓋、小頭症、小顎症、小耳症、耳低位、
内眼角ぜい皮、眼瞼下垂など
上肢                  拇指骨数過多症、重複拇指、拇指低形成、平坦拇指球、合指症、
                      撓骨動脈欠損
腎、泌尿器      腎臓欠損、馬蹄腎、腎低形成   
心・肺                心室中隔欠損、心房中隔欠損、大動脈縮窄、複雑心奇形
その他
頚部                短頸、翼状頸           
眼                 先天性緑内障、斜視、先天性白内障  
 神経系              学習障害             
 低身長                                         
 
 
 
 
 
<重症度分類>
Stage2以上を対象とする。
表2.重症度分類(平成26年度作成)
stage 1      軽 症    輸血非依存性で薬物療法を必要としない
 
stage 2      やや軽症   輸血非依存性だが、ステロイド以外の薬物療法を必要とする

stage 3      中等症    ステロイド依存性
 
stage 4     重 症    定期的な赤血球輸血を必要とする            
 
 
注1       薬物療法とは、ステロイドの他サイクロスポリンなどを指す。
注2       ステロイド依存性とは、ヘモグロビン濃度8.0~10.0g/dLを維持するのにステロイドの連日あるいは隔日投与が必要なときを指す。
注3       定期的な赤血球輸血とは、ヘモグロビン濃度8.0g/dLを維持するのに2~8週毎の輸血が必要なときを指す。
 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。

平成27年7月1日

情報提供者
研究班名 遺伝性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和3年9月(名簿更新:令和5年6月)