多発血管炎性肉芽腫症(指定難病44)

たはつけっかんえんせいにくげしゅしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1.多発血管炎性肉芽腫症とはどのような病気ですか?

この病気は、以前はウェゲナー肉芽腫症と称されていた疾患で、1939年に、鼻と肺の 肉芽腫 、および全身の 血管炎壊死 性半月体形成性糸球体腎炎を示した3症例がはじめて報告されました。発熱、 全身倦怠感 、食欲不振などの 炎症 を思わせる症状と、鼻、眼、耳、咽喉頭などの上気道および肺、腎の3つの臓器の炎症による症状が、一度にあるいは次々に起こってきます。病変部では小型血管(顕微鏡で観察できる太さの細小動・静脈や毛細血管)の炎症と肉芽腫の形成を認め、免疫の異常が病気の成り立ちに重要な役割を果たしています。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

年間発症率は100万人あたり2人と報告されています。欧米に比べて我が国では比較的頻度の少ない血管炎です。指定難病の申請をされている方は、2,879人(令和元年度医療受給者証保持者数)です。

3.この病気はどのような人に多いのですか?

好発年齢は40~60歳ですが、小児や高齢者での発症も見られます。過去の難治性血管炎に関する調査研究班の調査では、男女比1:1で明らかな性差は認められていません。近年は女性にやや多いとする報告も複数存在します。

4.この病気の原因はわかっているのですか?

原因はいまだに不明です。しかし、好中球の細胞質に含まれる酵素タンパク質であるプロテイナーゼ3(PR3)に対する自己抗体(抗好中球細胞質抗体;ANCA)が高率に検出されることから、他の膠原病と同様に免疫の異常が背景に存在すると考えられています。PR3-ANCAは好中球を活性化し、各種の障害因子を放出することで血管炎や肉芽腫を引き起こすと考えられています。また、好中球が細菌などの外敵と戦うときに使用する好中球細胞外トラップ(NETs)と呼ばれる仕組みが、この病気の発症にかかわることも分かってきました。

5.この病気は遺伝するのですか?

遺伝性の病気ではありませんが、病気の発症に影響する遺伝子の変異(遺伝子多型)が複数見つかっています。

6.この病気ではどのような症状がおきますか?

一般的には発熱、食欲不振、全身倦怠感、体重減少などの全身症状とともに、
(1)上気道の症状(膿性鼻漏、鼻出血、難聴、耳漏、耳痛、視力低下、眼充血、眼痛、眼球突出、咽喉頭痛、 嗄声 など)、
(2)肺症状(血痰、 咳嗽 、呼吸困難など)、
(3)腎症状(血尿、乏尿、浮腫など)
(4)その他の血管炎を思わせる症状(紫斑、多発関節痛、多発神経炎など)
が起こります。
通常は、(1)→(2)→(3)の順序で起こることが多いのですが、必ずしも順番通りではありません。(1)、(2)、(3)のすべての症状が揃っている場合を全身型、(1)、(2)のうち一つもしくは二つの症状を示す場合を限局型と呼びます。すなわち、この病気の患者さんはすべての症状が起こるわけではなく、一人一人によってでてくる症状、障害される臓器が違います。最初は、鼻や耳の病気、あるいは胸の病気を思わせる症状がでて、後で腎臓を含め全身の血管炎による多臓器の症状を呈してようやく診断される場合があり、注意が必要です。

7.この病気にはどのような治療法がありますか?

治療の目標は、副腎皮質ステロイド(ステロイド)や免疫抑制薬を用いて、血管の炎症を完全に消失させて(寛解導入治療)、その状態を維持する(寛解維持治療)ことです。寛解導入治療では、中等量から高用量のステロイドと免疫抑制薬のシクロホスファミド(エンドキサン)を併用します。発症年齢や合併症など身体の状態に合わせて、治療の強さを調節します。とくに、限局型で重症臓器合併症がない場合は、ステロイド単独で治療することがあります。診断後速やかに治療が開始されれば約3~6か月で寛解に至ることが期待できます。重症な腎障害を合併する場合などには血漿交換も追加されます。寛解に至った場合、ステロイドを減量し、副作用の弱いほかの免疫抑制薬(アザチオプリン(アザニン®、イムラン®)など)に切り替えた寛解維持治療を少なくとも1~2年間は継続します。このような治療に抵抗性の場合、あるいは、副作用などでこのような治療が難しい場合には、リンパ球の表面にある特殊なたんぱく質(CD20)を標的とする抗CD20抗体(リツキシマブ(リツキサン))をステロイドと併用して寛解導入を目指す場合があります。このほか、メトトレキサート(保険適用外)、ミコフェノール酸モフェチル(ともに保険適用外)を使用する例もあります。治療により感染症がおこりやすくなりますので、治療を成功させるためには感染症の予防・早期診断・早期治療が特に大切です。2021年に補体成分のC5aの働きを抑えるアバコパン(タブネオス®)が承認され、多発血管炎性肉芽腫症の治療に使用できるようになりました。

8.この病気はどういう経過をたどるのですか?

治療が行われないと生命に危険がおよぶ病気です。早期にこの病気を診断して、病気による臓器病変の拡がりの少ないうちに、免疫抑制療法による薬物療法を行うと、病気が完全に落ち着く(寛解)例もみられます。わが国の研究に登録された新規の患者さん33名の6か月後の寛解に導入される割合は97%でした。一方、治療が遅れたり、治療の反応が良くなかったりすると、寛解導入までに時間がかかり、臓器の機能障害が残ってしまうことがあります。広範な肺胞出血を起こすと、一時的に人工呼吸器を必要とする場合もあります。腎不全になった場合には血液透析が必要になります。全身症状の落ち着いた後も、鼻の変形(鞍鼻)や視力障害などの後遺症が残る方もいます。また、この病気自体で亡くなられる方は少ないのですが、敗血症や肺感染症、呼吸不全など合併症が原因で亡くなられる方がいらっしゃいます。最近では、早期に診断して、早期に治療を開始できる例が増えるに従い、患者さんの予後は改善してきています。
 また、病気は再燃することがありますので、定期的に専門医の診察を受け、きちんと薬を継続して下さい。この際、この病気の活動を知るめやすとして、症状、CRP等の炎症反応、血液中のPR3-ANCAの値などの推移が参考になります。

9.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?

治療中は、感染症に対する注意が最も重要です。帰宅時には、手洗い・うがいを欠かさずに実行してください。新型コロナワクチン、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種も可能な限り受けましょう。規則正しい生活と食事を維持してください。ステロイドによる生活習慣病を防ぐためには、体重管理が重要です。ステロイド内服中は、定期的に緑内障・白内障を含む目のチェックを受けてください。骨密度も年に1度は測定してもらいましょう。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

顕微鏡的多発血管炎(指定難病43)、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病45)の3つの血管炎をあわせてANCA関連血管炎と呼びます。また、ウェゲナー肉芽腫症は多発血管炎性肉芽腫症の旧称です。

11. この病気に関する資料・関連リンク

(資料) ANCA関連血管炎の診療ガイドライン2017 https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0094/G0000931
市民公開講座「血管炎についてもっと知ろう:それぞれの病気の特徴と療養に役立つ知識」6)多発血管炎性肉芽腫症 https://www.vas-mhlw.org/html/shiminkoukaikouza.html
ANCA関連血管炎.com
http://www.anca-aav.com/contents/hp0024/index.php?No=16&CNo=24
(関連リンク)
日本リウマチ学会 疾患の解説を提供
日本薬学会 知っておきたい薬の常識等一般向けに役立つ情報を提供
日本薬剤師会 くすりに関する最新情報や過去の緊急安全性情報、副作用情報、くすりQ&A(薬局で買った薬の有効期限 他)等を提供

 

情報提供者
研究班名 難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和4年3月