神経線維腫症Ⅰ型(指定難病34)

しんけいせんいしゅしょうⅠがた
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

神経線維腫症Ⅰ型
神経線維腫症Ⅱ型

子供が神経線維腫症I型と診断されました。自分の体をよく見てみると腕のところに1個茶色のアザがあります。このアザが原因で子供が病気を発症してしまったのでしょうか?

茶色のアザは日本人では10人に1人程度にみられます。茶色のアザは日本では扁平母斑と呼ばれ,その部分のメラノサイト(色素細胞)に神経線維腫症I型の原因とは別の異常があることが分かっています。神経線維腫症I型ではカフェ・オ・レ斑と呼ばれる茶色のアザが6個以上みられるのが普通で,神経線維腫など他の異常がなければ,腕のアザが原因でお子さんが神経線維腫症I型になった可能性は極めて低いと考えられます。患者さんの半数以上は両親ともにこの病気がなくて,突然変異により発症しています。

母親が神経線維腫症I型です。姉にはカフェ・オ・レ斑や神経線維腫がでていますが,自分には現在症状はありません。もうすぐ結婚を控えており自分に子供ができたときに神経線維腫症I型の体質が遺伝するのではないかと心配です。

年齢によりでてくる症状が違うので,本人さんの年齢や詳しい情報がないとお答えしにくいのですが,成人になっても色素斑や神経線維腫が全くみられないようであれば,本人さんが神経線維腫症I型の可能性は低いと考えられます。もし,本人さんが神経線維腫症I型でなければ,その病気のお子さんが生まれる確率は通常と何ら変わりはありません。

最近になって神経線維腫の数が増えてきました。食生活で注意することはなにかありますか?

食生活には特に制限はありません。神経線維腫は年齢とともに少しずつ増えてきますが,その数には個人差があります。残念ながら,現時点では神経線維腫の発生をおさえる治療薬はありません。症状が気になるようでしたら,麻酔をして切除することができますので,皮膚科または形成外科の先生とよく相談してください。もし,大きな神経線維腫(びまん性神経線維腫)があって,急に大きくなった場合には腫瘍内での出血や悪性化の可能性がありますので,早めに専門の医療機関を受診してください。

耳の聞こえが悪くなって病院を受診したところ,聴神経に腫瘍ができる病気で神経線維腫症といわれました。インターネットで調べてみると体にも大きな腫瘍ができるようでとても不安です。どんなことに気をつければよいのでしょうか?

その病気は神経線維腫症I型でしょうか,それともII型でしょうか。耳の奥に腫瘍ができたのであれば神経線維腫症II型の可能性が高いと考えられます。I型とII型は全く別の病気で,原因や合併する症状が違いますので,まずは主治医の先生にどちらの病気かをよく聞いてみてください。

日本で神経線維腫症I型の遺伝子診断を受けたいのですが,検査は可能でしょうか?

神経線維腫症1型は、通常患者さんの症状をもとに診断が行われていますが、両親にこの病気がない場合には、小児期の診断は難しいことがあります。
日本ではこれまでこの病気の遺伝子検査ができる施設は限られていましたが、2020年11月から外注検査の依頼ができるようになりました。ただし、2023年現在健康保険での検査は認められておらず、検査を行う前に臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングが必要となりますので、まずは各施設のかかりつけの主治医の先生にご相談ください。

神経線維腫症1型とレジウス症候群との違いを教えてください

2007年に神経線維腫症1型によく似たレジウス症候群という病気が見つかりました。この病気はSPRED1という遺伝子の変異により発症します。レジウス症候群ではカフェ・オ・レ斑のような色素斑を生じますが、神経線維腫ができることはありません。神経線維腫症1型が疑われる人の1-2%はレジウス症候群の可能性があります。両親に症状がない場合には小児期の診断は難しいですので、必要に応じて遺伝子検査が行われることがあります(保険適用外)。

海外で神経線維腫症1型の特効薬が開発されたと聞いたのですが?

2020年4月に米国で手術での治療が難しく症状が重い叢状神経線維腫を合併した小児の患者さんにおいてセルメチニブというお薬の使用が認可されました。2022年11月から日本でも承認され、小児(3歳以上18歳以下)の症候性で手術不能の叢状神経線維腫に対して使用できるようになりました。成人の叢状神経線維腫やそれ以外の合併症に対して効果があるかどうかについては、現在臨床試験が進められています。

体に一部分に神経線維腫症1型の症状があるのですが?

モザイクと呼ばれ、体に一部分にのみ症状が見られることがあり、神経線維腫症1型の1割程度とされています。神経線維腫症1型の症状はやや軽い傾向がありますが、まれにお子さんに遺伝する可能性があることが報告されています。

 

情報提供者
研究班名 神経皮膚症候群および色素性乾皮症・ポルフィリン症の学際的診療体制に基づく医療最適化と患者QOL向上のための研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年11月)