バージャー病(指定難病47)

ばーじゃーびょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
閉塞性血栓血管炎とも呼ばれ、四肢の主幹動脈に閉塞性の血管全層炎を来す疾患である。特に下肢動脈に好発して、虚血症状として間欠性跛行や安静時疼痛、虚血性皮膚潰瘍、壊疽(特発性脱疽とも呼ばれる)を来す。また、しばしば表在静脈にも炎症を来し(遊走性静脈炎)、まれに大動脈や内臓動静脈にも病変を来す。従前「ビュルガー病」と呼ばれていた。
 
2.原因
特定のHLA(human leukocyte antigen)と本症発症の関連性が強く疑われており、ある遺伝性素因に何らかの刺激が加わると発症するとの説が有力であるが、原因はいまだ不明である。発症には喫煙が強く関与しており、喫煙による血管攣縮が誘因になると考えられている。最近の疫学調査では患者の93%に明らかな喫煙歴を認め、受動喫煙を含めるとほぼ全例が喫煙と関係があると考えられるが、発症の機序は不明である。歯周病との関連が疑われ、検討が行われている。
 
3.症状
四肢主幹動脈に多発性の分節的閉塞を来すため、動脈閉塞によって末梢の虚血の程度に応じた症状を認める。虚血が軽度の時は、冷感やしびれ感、寒冷暴露時のレイノー現象を認め、高度となるに従い間欠性跛行や安静時疼痛が出現し、虚血が最も高度となると、四肢に潰瘍や壊死を形成して特発性脱疽と呼ばれる状態となる。
また、爪の発育不全や皮膚の硬化、胼胝を伴い、わずかな刺激で難治性の潰瘍を形成する。最近増加している閉塞性動脈硬化症と同様な症状であるため、鑑別診断に注意を要する。
 
4.治療法
受動喫煙を含め、禁煙を厳守させることが最も大切であり、このために適切な禁煙指導を行う必要がある。また患肢の保温、保護に努めて靴ずれなどの外傷を避け、歩行訓練や運動療法を基本的な治療として行う。
薬物療法としては抗血小板薬や抗凝固薬、プロスタグランジンE1製剤の静注などが行われる。重症例に対しては末梢血管床が良好であれば、バイパス術などの血行再建を行う。
血行再建が適応外とされる症例では、交感神経節切除術やブロックが行われている。肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor 、HGF)を用いた治療について検討が進んでいる。
 
5.予後
生命予後に関しては閉塞性動脈硬化症と異なり、心、脳、大血管病変を合併することはないために良好であるが、四肢の切断を必要とすることもあり、就労年代の成年男性のQOL(quality of life)を著しく脅かすことも少なくない。
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数(平成24年度医療受給者証保持者数)
7,109人
2.発病の機構
不明
3.効果的な治療方法
未確立(根治療法なし。)
4.長期の療養
必要(就労年代の成年男性のQOL(quality of life)を著しく脅かすことも少なくない。)
5.診断基準
あり
6.重症度分類
バージャー病の重症度分類を用いて、3度以上を医療費助成の対象とする。
 
○ 情報提供元
「難治性血管炎に関する調査研究班」
研究代表者 杏林大学第一内科学教室 腎臓・リウマチ膠原病内科 有村義宏
 
 
 
<診断基準>
Definite 1:本症発症時、以下の(1)~(5)を満たし、鑑別診断で他疾患が全て除外できる
Definite 2:本症発症時、以下の(1)・(5)と、(3)と(4)のいずれかの計3項目以上を満たし、鑑別診断で他疾患が全て除外できる。
 
(1)50歳未満の発症
(2)喫煙歴を有する(間接喫煙を含む。)。
(3)膝窩動脈以下の閉塞がある。
(4)上肢の動脈閉塞がある、又は遊走性静脈炎の既往がある。
(5)高血圧症、高脂血症、糖尿病を合併しない。
 
注釈:女性及び喫煙歴が明らかでない患者では、他疾患との鑑別をより厳密に行う
 
(鑑別診断)
1.閉塞性動脈硬化症
2.外傷性動脈血栓症
3.膝窩動脈捕捉症候群
4.膝窩動脈外膜嚢腫
5.膠原病
6.血管ベーチェット病
7.胸郭出口症候群
8.心房細動


<重症度分類>
バージャー病の重症度分類
3度以上を対象とする。

1度

患肢皮膚温の低下、しびれ、冷感、皮膚色調変化(蒼白、虚血性紅潮など)を呈する患者であるが、 禁煙も含む日常のケア、 又は薬物療法などで社会生活・日常生活に支障のないもの。

2度

上記の症状と同時に間欠性跛行(主として足底筋群、足部、下腿筋) を有する患者で、薬物療法などにより、 社会生活・ 日常生活上の障害が許容範囲内にあるもの。

3度

指趾の色調変化(蒼白、チアノーゼ)と限局性の小潰瘍や壊死又は重度の間欠性跛行を伴う患者。 通常の保存的療法のみでは、社会生活に許容範囲を超える支障があり、外科療法の相対的適応となる。

4度

指趾の潰瘍形成により疼痛(安静時疼痛)が強く、社会生活・日常生活に著しく支障を来す。 薬物療法は相対的適応となる。  したがって、入院加療を要することもある。

5度

激しい安静時疼痛とともに、壊死、潰瘍が増悪し、入院加療にて強力な内科的、外科的治療を必要とするもの。(入院加療:点滴、鎮痛、包帯交換、外科的処置など)

 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 
 

平成27年1月1日

 

情報提供者
研究班名 難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)