バージャー病(指定難病47)

ばーじゃーびょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1.バージャー病とはどのような病気ですか

四肢の 末梢血管に閉塞をきたす疾患で、その結果、四肢や指趾の虚血症状(血液が十分供給されないためにおこる組織の低酸素症状)が起こる病気です。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

最近の全国調査からは、治療を必要とする患者さんの数は約7千人と推計されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

男女比は8対1と圧倒的に男性が多く、殆どが喫煙者で、発症年齢も30歳代から40歳代を中心に青・壮年に多く発生します。職業歴や生活環境との関連性ははっきりしません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

原因は不明ですが、四肢末梢血管の 炎症血管炎)に起因するものと考えられています。

5. この病気は遺伝するのですか

明確に遺伝性が証明された疾患ではありませんが、何らかの遺伝的素因を持った方に起こりやすい傾向は報告されています。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

患者さんの症状としては、手足の動脈が閉塞して、その結果として虚血症状(血液が供給されないために起こる低酸素状態による症状)が発生します。具体的には、指趾の冷感やしびれ感、蒼白化に始まり、間欠性跛行(長い距離を歩くと足が痛くなって歩行困難となり、ひと休みすると再び痛みが治まり歩行できる)、安静時疼痛(じっとしている時も痛む)、さらには潰瘍(皮膚が欠損する)を形成して、ついには 壊死 に陥ることもあります。これらの症状は順に起こる場合もあり、最初から指先などに潰瘍を形成する場合もあります。また手足の静脈にも炎症を起こし、静脈に沿って発赤や痛みを生じることもあります( 遊走性静脈炎 )。
診断はまず、患者さんに上記の症状があるかを問診と身体診察で確認します。閉塞した動脈の拍動は触知しなくなります。ドプラ血流計を使った足関節の血圧測定と足関節/上腕血圧比(Ankle Brachial Pressure Index、ABIと略)は虚血の程度の把握に役立ちます。これらの検査および症状や身体診察の所見に加え、動脈の閉塞部位や閉塞パターンの確認、閉塞性動脈硬化症などの鑑別のために血管の画像診断を行い、確定診断します。血液検査では特徴的な所見がありません。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

治療の基本は禁煙です。この病気の発症や増悪と喫煙は密接に関係しており、喫煙を継続していてはどんな治療も無効です。受動喫煙も避けましょう。さらに手足の清潔を保ち、保護を行い、寒いところでは保温に気をつけ、靴擦れを予防したり傷をつけたりしないように注意することが大切です。
症状にもよりますが、まず血流を改善して血栓の進展を予防するために、抗血小板薬や血流改善薬、抗凝固薬などの薬剤を投与します。虚血症状に対して最も効果のある治療は血行再建手術(バイパス手術など)で、先に述べた禁煙を中心とする基本的な治療や薬物療法で改善を認めず、特に重症の虚血症状(安静時疼痛、潰瘍や壊死)がある患者さんに行われます。しかし、この病気は動脈硬化による血管閉塞と異なって末梢(手足の末端)ほど病変が重度であるために、血行再建手術で十分な効果が得られないことも、しばしばあります。このような場合には、 交感神経節ブロック交感神経節切除手術 などで皮膚血流を増加させる治療や、 高気圧酸素療法 で患部に高濃度の酸素を供給する治療も行われます。遺伝子治療、細胞移植療法などで血管を新生させる新しい治療法も行われ始めています。
それでも壊死が進行して各種の治療も無効な場合には、指趾や四肢の切断となることもあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

古くは特発性 脱疽 として手足を切断しなければならない患者さんも多かったのですが、最近では禁煙を厳守して様々な治療を行えば、 四肢の切断に至る例は少なくなってきています。早期診断と適切な治療によって病気の重症化を防ぐことができます。再発や悪化の見られない患者さんでは、発症前の仕事や日常生活に復帰されている方も少なくありません。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

1)バージャー病の最大の危険因子は喫煙です。禁煙することが大切です。また、血流が乏しくなった手足は、ささいな傷でも治りにくく、潰瘍や壊死へと進行しやすいため、手足の清潔を保ち、保護することが大切です。
(1)病気の進行を抑えるための対策
   禁煙しましょう。受動喫煙も避けましょう。
(2)手足に潰瘍をつくらないための対策
   手足を清潔に保ち保護する。寒いところでは保温に気をつける。靴擦れを予防したり傷をつけたりしないように注意する。
2)将来、加齢などによって動脈硬化がおこってしまうと、動脈がさらに細くなり、手足の血流がさらに悪くなる可能性があります。動脈硬化がなるべく進行しないような生活習慣を心がけましょう。また、高血圧、糖尿病、脂質異常症など、動脈硬化が進行する危険因子となる病気があれば、きちんと治療しましょう。
(1)生活習慣の改善:足にけがをしないように気をつけて、無理のない運動をする。食べすぎに気をつける。など。
(2)高血圧への対策:塩分を控える。家庭や病院で血圧をはかる。主治医の指示にしたがって降圧薬を服用する、など。
(3)糖尿病や脂質異常症への対策:食事の量に気をつける。健康診断などで定期的なチェックを行う。主治医の指示にしたがって薬を服用する、など。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

Buerger病(この病気の報告者名を冠した病名。英語表記)
ビュルガー病(上記のドイツ語読み)
閉塞性血栓血管炎 (thromboangiitis obliterans,略してTAO)

11. この病気に関する資料・関連リンク

(資料)
2015-2016年度合同研究班による血管炎症候群の診療ガイドライン (日本循環器学会が公開しているガイドライン。バージャー病については40-49ページを参照)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_h.pdf
(関連リンク)
日本薬学会 知っておきたい薬の常識等一般向けに役立つ情報を提供
日本薬剤師会 くすりに関する最新情報や過去の緊急安全性情報、副作用情報、くすりQ&A(薬局で買った薬の有効期限 他)等を提供

 

情報提供者
研究班名 難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和4年3月(名簿更新:令和5年6月)