ネフロン癆(指定難病335)

ねふろんろう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
ネフロン癆は、一次繊毛に存在する蛋白をコードするNPHP遺伝子の異常が主たる原因とされている、常染色体劣性遺伝性疾患である。腎間質障害あるいは腎不全に伴う症状が見られることがあるが、特徴的な症状が認められないことが多い。根本的な治療法はなく、基本的には30歳までに末期腎不全に至る。
 
2.原因
NPHP遺伝子異常が主たる原因とされている。NPHP遺伝子がコードする一次繊毛に存在するネフロシスチン蛋白などの欠損により、尿細管の拡張又は萎縮を伴う腎間質の広範な線維化をきたす。その結果、腎機能障害が進行し末期腎不全に至る。しかし、臨床的にネフロン癆が疑われる症例において遺伝子変異が同定される頻度はわずか30%程度であり、いまだに原因が明らかになっていない部分も多い。
 
3.症状
腎間質障害、又は腎不全に伴う症状として、多飲/多尿、昼間尿失禁/夜尿、成長発達障害、貧血、高血圧が見られることがあるが、他に特徴的な症状は認められないことが多い。一次繊毛は全身に存在するため腎外病変も見られるが、その頻度は10–20%程度である。代表的なものとして、網膜色素変性症、骨格異常、肝線維症、発達遅滞などがある。
 
4.治療法
根本的な治療法はない。腎不全進行を抑制するための保存期治療が行われ、貧血や高血圧などの合併症に対して対症療法が行われる。
 
5.予後
基本的に30歳までに全例が末期腎不全に至り、腎代替療法(透析、腎移植)を要する。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数
130人〜220人程度
2.発病の機構
不明(NPHP遺伝子の関与が示唆されている)
3.効果的な治療方法
未確立(末期腎不全期には腎代替療法)
4.長期の療養
必要(小児期発症で進行性である)
5.診断基準
あり
6.重症度分類
重症度分類にはCKD重症度分類を用い、ヒートマップの赤の部分を対象とする。

 
○ 情報提供元
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業
「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の発展」研究班
研究代表者 北里大学医学部小児科学 教授 石倉健司

日本腎臓学会
当該疾病担当者  東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 教授 横尾隆
 
日本小児科学会
当該疾病担当者 北里大学医学部小児科学 教授 石倉健司
 
日本小児腎臓病学会
当該疾病担当者  北里大学医学部小児科学 診療講師 奥田雄介
東邦大学医学部腎臓学講座 准教授 濱崎祐子
近畿大学医学部小児科学教室 教授 杉本圭相
 
 
<診断基準>
Definite及びProbableを対象とする。

A. 症状
1.多尿
2.夜尿または昼間尿失禁
3.低身長 (<-2SD)
4.高血圧

B.検査所見
1.必須所見
腎画像検査で嚢胞性病変
2.尿検査
早朝尿比重≦1.010
尿中β2ミクログロブリン/尿クレアチニン≧300 µg/gCr
早朝尿糖陽性
3.血液検査
血中ヘモグロビン値<10 g/dL
4.画像検査
小脳虫部低形成
5.腎病理所見
腎髄質を中心とする尿細管の嚢胞様拡張
尿細管基底膜の不規則性変化

(比較的高頻度に認められる腎病理の参考所見)
硬化糸球体、尿細管・間質への細胞浸潤、尿細管・間質線維化

C. 腎外合併症
網膜色素変性症
眼球運動失調
発達遅滞
骨格異常
肝線維症

D. 鑑別診断
低形成異形成腎、常染色体優性多発性嚢胞腎、常染色体劣性多発性嚢胞腎、常染色体優性尿細管間質性腎疾患

E. 遺伝学的検査
ネフロン癆に関連する遺伝子の変異 (NPHP1, INVS, NPHP3, NPHP4, IQCB1, CEP290, GLIS2, RPGRIP1L, NEK8, SDCCAG8, TMEM67, TTC21B, WDR19, ZNF423, CEP164, ANKS6, IFT172, CEP83, DCDC2, MAPKBP1, XPNPEP3, SLC41A1, TRAF3IP1, AH11, CC2D2A)

<診断のカテゴリー>
Definite:Aのうち1項目以上を満たし、B-1を満たし、Dの鑑別すべき疾患を除外し、Eを満たすもの。
Probable1:Aのうち1項目以上を満たし、B-1を満たし、Dの鑑別すべき疾患を除外し、B-5のいずれか1項目(参考所見は除く。)を満たすもの。
Probable2:Aのうち1項目以上を満たし、B-1を満たし、Dの鑑別すべき疾患を除外し、B-2、B-3、B-4及びCの中から2項目以上を満たすもの。ただし、B-2は記載の所見3つのうち1つ以上を満たせば1項目と数え、Cはそれぞれを独立した1項目と数える。
Possible:Aのうち1項目以上を満たし、B-1を満たし、Dの鑑別すべき疾患を除外したもの。

 

<重症度分類>
重症度分類にはCKD重症度分類を用い、下記ヒートマップの赤の部分を対象とする。

 

GFRの推算方法は、以下を使用
19歳以上: 194xs-Cr-1.094×年齢-0.287 (女性の場合は0.739を乗じる)
2歳以上19歳未満: 110.2×(ref Cr/s-Cr)+2.93
 男児ref Cr=-1.259Ht5+7.815Ht4-18.57Ht3+21.39Ht2-11.71Ht+2.628
 女児ref Cr=-4.536Ht5+27.16Ht4-63.47Ht3+72.43Ht2-40.06Ht+8.778
2歳未満:上記で算出したGFRに以下の係数Rを乗じることにより算出
R=0.107×ln (月齢)+0.656

単位については以下の通り
年齢:年
月齢:月
s-Cr (血清クレアチニン値):mg/dL
Ht (身長):m

※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。

情報提供者
研究班名 小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の発展班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和3年11月