リンパ脈管筋腫症(LAM)(指定難病89)

りんぱみゃくかんきんしゅしょう(LAM)

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■「生活一般(生活、妊娠・出産、気胸)」に関して

<生活>

日頃どんなことに気をつけたらいいでしょうか?
万一タバコを吸っているなら、直ちに禁煙しなければなりません。受動喫煙(他人のタバコの煙を吸うこと)も避けてください。あなたには、タバコの煙のない 家に住み、オフィスで働く権利があることを忘れないでください。多くのLAM患者さんの場合、特別食は必要ありません。一般にいわれる健康的な食事をとる ことが大切です。たとえば、毎日5品目以上のフルーツや野菜を食べたりすることです。骨の密度を維持するのに有効な脂肪分の少ないタンパク質とカルシウム が豊富な食事をとり、糖分の摂りすぎに注意しましょう。乳糜(にゅうび)胸水や乳糜腹水を合併している場合には、低脂肪食にすることが必要な場合がありま すので、担当医とよく相談して下さい。適度な睡眠を心がける、ストレスをためない、といったことも大切です。医療機関には定期的に受診し、処方された薬は 決められた通りに服用し、何か問題が生じたおりには、自己判断することなく担当医と良く相談して指示を仰ぎましょう。
LAMと診断される前に喫煙の経験があります。LAMの発症と喫煙の関連は示唆されているのでしょうか?LAMの進行に喫煙の影響はあるのでしょうか?
LAMの発症と喫煙の因果関係を示すデータはありませんが、発症の原因になっている可能性はほとんどないと思われます。喫煙 がLAMを進行させるかどうかに関しても同様にデータはありませんが、喫煙そのものに肺を慢性的に障害していく作用があり、健康被害があることはよく知ら れています。肺の病気の有無にかかわらず、喫煙は直ちにやめる事をお勧めします。
LAMと診断されて、なにか注意しなければならないことはありますか?例えば、進行を早めるようなこと、仕事はどうでしょうか?在宅酸素療法、4~5 L/min ですが、仕事があるので続けたいと思います。そういうことでも負担になっているのでしょうか?
もし、貴方がタバコを吸っていたら、禁煙してください。生理不順でホルモン剤投与を受ける場合、避妊のためにピルを内服する 場合は、場合によってはLAMを進行させる可能性があるため、担当医師とよく相談することが必要です。在宅酸素療法をしている方で歯科治療が必要になった 場合には、一般に、 麻酔医がいて呼吸管理ができるような施設でないと局所麻酔を使用しづらいようで、一般の開業歯科医では断らわれることが多いようです。歯科診療もしている 総合病院を進められるようです。酸素療法を行いながら働くことには問題はありませんが、仕事内容、仕事量、等々についてはなんらかの工夫が必要だと思いま す。一般に、低肺機能の患者さんは、過労、ストレス、栄養、などの様々な面で体調を維持するために注意が必要です。担当医と相談して、病気と上手にお付き 合い下さい。
結節性硬化症の疑いがあると言われました。今後、気をつけなければならないことを教えてください。
難病情報センターのホームページに結節性硬化症(プリングル病)の説明があります。こちらをご参照ください。
友人で LAM 患者がいます。友人として私のできること、気をつけるべき点、患者さんが周囲の人に望むことを知りたいです。
先ずは患者さんの話をゆっくり聞いてあげて下さい。その時はむやみな励ましは逆に負担になったり、真剣に考えてもらっていな い、と受け取られる場合もあります。在宅酸素をしていて外見を気にしたり、乳縻(にゅうび)などで外食できるところが限られている方もいます。家に籠もり がちなので一緒に髪の毛をカットしに行ったり、禁煙、バリアフリー、食べられるお店などを探してあげるのも喜ばれます。肺機能が低下している患者さんの場 合は、一緒に、あるいは一人で病院や地方自治体が主催する呼吸リハビリ教室に参加し、咳き込んだり、痰を吐き出せない時の介助の仕方を習っておくと身近な 手助けになります。
同じ病気の人や家族の話を聞きたいのですが?
LAMの患者さんとその家族が中心となって運営されている日本の患者会「J-LAMの会」があります。会のホームページはhttp://j-lam.net/ です。また米国では「LAM Foundation」があり世界中の患者会が協力して手をつなぎつつあります(ホームページはhttp://www.thelamfoundation.org/ )。

<妊娠・出産>

子供を産むことは可能でしょうか?
病気の発症・進展に女性ホルモンが関わっている事が示唆されること、実際に妊娠・出産を契機に病気が進行したとの報告があること、等から、一般的には LAM診断後の妊娠・出産は避けるべきと言われています。平成15~16年に行われた厚生労働省難治性疾患克服研究事業・呼吸不全調査研究班(久保恵嗣班 長)の全国調査では173例のLAM患者さんの情報がまとめられましたが、45%の方はLAM診断時には妊娠・出産を経験されていました。また、LAM診 断後に妊娠・出産を経験し、呼吸機能障害が進行しなかった患者さんも報告されています。従って、LAM診断後の経過、呼吸機能障害の程度や進行の速さ、挙 児希望の程度、等を勘案して個々の患者さん毎によく相談して対応することが現実的であると思われます。
腹水がある場合、妊娠、出産は可能でしょうか?また、可能である場合は、その際の影響として考えられることは?
貯留している乳糜(にゅうび)腹水の量にもよりますが、一般的には、妊娠は困難であると思います。しかし、MRI や CT 検査で初めてわかる程度の貯留では、妊娠や出産に影響はないかもしれません。一般的に言って、 妊娠期間中は体液量が非妊娠時の1.5倍くらいに多くなりますし、低蛋白血症になりやすくなります。従って、毛細血管から漏れ出る血漿成分は増加し、組織 間質液量も増加し、さらにはリンパ流量も増加することが予想されるため、乳糜腹水量も多くなるかもしれません。さらに、乳糜腹水を合併したLAM患者さん が妊娠により LAMの病状が悪化すれば、より乳糜は漏れやすくなることが予想されます。総合的にみて、妊娠の継続は難しいかもしれません。

<気胸>

多くの患者が、「気胸を一度起こすと、その後短期間の間に再発を繰り返す」という経験を していますが、どのようなメカニズムで再発を繰り返すのですか?この現象を止めることに対して研究や工夫がされている、或いはされる予定はありますか?
再発のメカニズムは判っておりません。気胸学の展望として、今後の課題だと常日頃学会で提唱しています。メカニズムは判っていませんが起こすときの状況に特徴があります。
(1)身体的、心理的ストレスを感じているときです。たとえば、深夜の仕事や徹夜の勉強などの寝不足状態が続くとき。
(2)休みがなく慢性的な疲労が続いているとき。
(3) 職場での人間関係で悩んだり、仕事上の行き詰まり状態。転勤などで環境が変わったときに起こることが多いです。
(4) 海外旅行に行くと必ず起こすという人もいます。時差の問題と異国というストレスがあるのでしょう。
(5) 夫婦げんかや、彼氏とけんかすると必ず起こすという人も結構多いです。
(6) 他には結婚式が近づくほど起こしたり、離婚調停中に何回も起こすというような例もありました。精神的なストレスだと考えます。
気胸を起こした経験があります。また、起こすのが恐くて、仕事を辞め、遠出もしていません。だから、勉強会に行きたくても、恐くて参加できません。気胸を起こさない為に注意しなければならないことがありますか?
程度を越えた疲労、過労、精神的ストレスを受ける状況をなるべく改善することです。喫煙は肺を破壊するので当然禁止です。適 度な運動も可能です。運動中に気胸を起こすことは必ずしも多くありません。しかしダイビングはやめましょう。水中で気胸になると致命的な状態になるからで す。浮上できなくなってしまいます。
肺の病気の人は、なぜ、飛行機内に搭乗するときに注意しなくてはいけないのですか?
機内は飛行中には通常、約 0.8 気圧くらいになり、吸入器酸素濃度は地上の 15%相当に低下、ガスの容積は 1.4 倍になります。年齢などの条件によりますが、健常人でもPaO253~64Torr、SpO2 85~91%まで低下します。また、機内の温度は 22℃前後に保たれ、湿度は長時間の飛行により10%以下までに低下します。従って、低肺機能の方は、地上よりも呼吸が苦しくなる可能性があります。
外国の患者は、NIHの検査やLAMposiumに参加するときなどに飛行機を利用していると聞きましたが、日本の先生方は飛行機に乗る患者に対してどのような指導をされているのですか?
気胸の発生、低酸素血症の出現あるいは増悪する可能性を説明していると思います。最終的には、医師からの説明をもとに、患者さんが飛行機を利用するかどうか決めていると思います。(現在でも主治医の先生方で見解の異なる領域です。)
在宅酸素療法をしていない患者です。過去の気胸の経験と、階段等で息が切れる以外には目立った症状はありません。身体が動か なくなる前に、一度くらい遠い外国に行ってみたいのですが、長時間(たとえば 10 時間以上)飛行機に乗る時の注意を教えてください。在宅酸素療法をしていない患者でも、飛行機に乗る時は、搭乗時間分の酸素を手配した方がよいのですか? また、それは、何時間以上乗るならば必要で、何時間以内なら不必要、という分け方が出来ますか?
海抜レベルでは在宅酸素療法が不要な方でも、機内では酸素が必要になる可能性はあります。例えば、準呼吸不全の方(PaO2<70Torr)では、機内の気圧低下により、搭乗中は酸素吸入が必要となる可能性があります。また、短時間のフライトであれば身体的影響は少ないが、長時間のフライトでは酸素吸入をした方がよいと思われる場合もあります。飛行適正に関する評価は、一般に安静時 PaO2≦70Torr、 FEV1<50%予測値、FVC<50%予測値、拡散能力≦50%予測値、SpO2≦95%、 50m 歩行で強い息切れを認める場合に考慮する必要があります。このように、海抜レベルでの患者さんの動脈血酸素分圧、呼吸機能により、機内での状況は変わりま す。担当の先生とよく相談してください。一方、在宅酸素療法を実施している方では、大気圧下での酸素流量のおおよそ 2 倍あるいは 1~2L/ 分の追加が必要になると見込まれます。在宅酸素療法をしている方が飛行機を用いた旅行時には、あらかじめ準備が必要です。携帯用酸素ボンベを機内に持ち込 むことが必要ですが、持ち込みに際しては 14 日以内に診断書(各航空会社の書式による)とHOTプロバイダーが発行する仕様証明書の提出が求められます。国際線に搭乗する場合には、あらかじめ診断書 が必要になり、また、渡航先での酸素の手配も必要となります。
これとは別に、LAMのような嚢胞が多数肺内にある病気の人では、気胸の発生するリスク可能性がありますが、そのリスクを定量的に指摘することは困難です。
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情報提供者
研究班名難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日令和3年9月(名簿更新:令和5年6月)