シェーグレン症候群(指定難病53)

しぇーぐれんしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. シェーグレン症候群とは

シェーグレン症候群は1933年にスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンの発表した論文にちなんでその名前がつけられた疾患です。日本では1977年の厚生省(当時)研究班の研究によって医師の間に広く認識されるようになりました。
 本疾患は中年女性に好発し、涙腺・唾液腺を主な標的とする自己免疫疾患ですが、時に種々の臓器病変を伴う全身性の自己免疫疾患でもあります。シェーグレン症候群は膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス全身性強皮症多発性筋炎/皮膚筋炎混合性結合組織病など)に合併する二次性シェーグレン症候群と、これらの合併のない一次性シェーグレン症候群に分類されます。
一次性シェーグレン症候群の病変は3つに分けることができます。1つ目は目の乾燥(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)の症状のみがある患者さんで、比較的〝健康に″暮らしている患者さんもいますが、ひどい乾燥症状に悩まされている人もいます。2つ目は全身性の何らかの臓器病変を伴うグループで、諸臓器への リンパ球浸潤 による病変や抗SS-A/Ro抗体などの自己抗体、高ガンマグロブリン血症などによる病変を伴う患者さんです。3つ目は悪性リンパ腫や原発性マクログロブリン血症を発症した状態です。経過を見ますと、約半数の患者さんは10年以上経っても大きな変化はありませんが、半数の患者さんは10年以上経つと何らかの検査値異常や新しい病変がみられます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

約7万人と報告されています。しかし、潜在的な患者さんを含めると、この数よりも多いことが推測され、アメリカのデータを当てはめると10~30万人と推定されることもあります。

3. この病気はどのような人に多いのですか

この疾患の年齢層は50歳代にピークがあります。少数ですが子供から、80歳の老人まで発症することもあります。日本での全国調査では男女比は男1人:女17人で、女性に多く発症します。関節リウマチの患者さんの約20%にシェーグレン症候群が発症します。その他の膠原病の患者さんにも発症することがあります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

自己免疫による疾患で、自分の身体の成分に対して免疫反応を起こすことによる疾患です。遺伝的要因、ウイルスなどの環境要因、免疫異常、更に女性ホルモンの要因が考えられています。これらの4つの要因が複雑に関連し合って発症するものと考えられ、どれか一つの原因で発病するわけではありません。

5. この病気は遺伝するのですか

同一家族内に膠原病が発症する率は約8%で、シェーグレン症候群が発症する率は約2%位とされています。これは同一家族内に膠原病のいない人と比べ少し多いですが、単一の遺伝子の変化が原因で発症するいわゆる遺伝病ではありません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

以下のようなものがあります。

1) 目の乾燥(ドライアイ)

・目が乾く ・目がごろごろする ・目がかゆい ・目が痛い ・目が疲れる ・物がよくみえない ・まぶしい ・目やにがたまる ・悲しい時でも涙が出ないなど。

2) 口の乾燥(ドライマウス)

・ 口が渇く ・ 唾液が出ない ・ 摂食時によく水を飲む ・ 口が渇いて日常会話が続けられない ・ 味がよくわからない ・ 口内が痛む ・ 外出時水筒を持ち歩く・夜間に飲水のために起きる・虫歯が多くなったなど。

3) 鼻腔の乾燥

・ 鼻が渇く ・ 鼻の中にかさぶたが出来る ・ 鼻出血があるなど。

4) その他

・ 唾液腺の腫れと痛み ・ 息切れ ・ 熱が出る ・ 関節痛 ・ 髪の毛が抜ける ・ 肌荒れ ・ 夜間の頻尿 ・ 紫斑 ・ 皮疹 ・ レイノー現象 ・ アレルギー ・ 日光過敏 ・ 膣乾燥(性交不快感) ・ 疲労感 ・ 記憶力低下 ・ 頭痛 ・ めまい ・ 集中力の低下 ・ 気分が移りやすい ・ うつ傾向など

7. この病気はどのようにして診断されるのですか

1999年に厚生省の診断基準が改訂され、

1)口唇小唾液腺または涙腺の 生検組織 でリンパ球 浸潤 がある
2)唾液分泌量の低下がガムテスト、サクソンテストで証明され、シンチグラフィーで異常がある、または唾液腺造影で異常がある
3)涙の分泌低下がシルマーテストで証明され、ローズベンガル試験または蛍光色素試験で角結膜の上皮障害がある
4)抗SS‐A/Ro抗体か抗SS‐B/La抗体が陽性である

この4項目の中で2項目以上が陽性であればシェーグレン症候群と診断されます。

8. この病気ではどのような治療があるのですか

現状では根本的にシェーグレン症候群を治癒させることは出来ません。したがって治療は乾燥症状を軽快させることと疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことになります。目の乾燥、口の乾燥はひどくなると著しく生活の質(QOL)を障害しますので、毎日の点眼、口腔清潔を心がける必要があります。膣の乾燥については、アンケートでは20%の患者さんに性交不快感がありますので、婦人科を受診するのが良いでしょう。規則正しい生活、休養、バランスのとれた食事、適度の運動、ストレスを取り除く等の注意が必要です。
患者さんと医師が協力し合って忍耐強く病気に対応することが重要でしょう。

1) 眼乾燥(ドライアイ)に対する治療

治療法は(a)涙の分泌を促進する、(b)涙の蒸発を防ぐ、(c)涙の排出を低下させる方法がとられます。

(a)涙の分泌を促進する方法として、グルココルチコイド(ステロイド)による抗炎症作用や炎症細胞の浸潤抑制による効果は証明されていません。保湿効果のあるヒアルロン酸ナトリウム点眼薬に加え、近年、ムチン(涙の成分。目の乾燥を防ぐ)や水分の分泌を促すジクアホソルナトリウム点眼薬や、ムチンの産生を促進するレバミピド点眼薬など涙の質を変える点眼薬が適用となり、角結膜上皮障害や自覚症状の改善に高い効果をあげています。

 涙の補充には人工涙液や種々の点眼薬があります。これらを1日数回使用します。点眼薬に防腐剤が入っている場合、何回も点眼すると防腐剤による角膜障害が問題になります。この場合は、防腐剤が入っていない点眼薬を使う方が良いでしょう。別の治療として、血清の中には上皮成長因子、ビタミンなどの様々な物質が入っており、自己血清を採取してこれを薄めて使用する方法がありますが、製剤の汚染に注意する必要があります。

(b)ゴーグル型眼鏡を使用すると、涙の蒸発を防ぐことができます。

(c)涙の排出を低下させるためには、鼻側の上下にある涙の排出口である涙点を涙点プラグで塞ぐ方法があります。これらは患者さんに大変評判のよいものです。眼科医に相談して下さい。

2) 口腔乾燥に対する治療

シェーグレン症候群の患者さんは虫歯になりやすいので、口内を清潔に保つことが非常に大切です。

 まず、口腔乾燥作用を持つ薬剤を服用しているときはこれを中止することも必要ですが、担当医にご相談下さい。
その他(a)唾液の分泌促進、(b)唾液の補充、(c)虫歯の予防や口内の真菌感染予防、(d)口腔内環境を改善することなどです。

 

(a)唾液分泌の刺激、促進
唾液分泌を刺激するものとして:シュガーレスガム、レモン、梅干などがあります。
唾液分泌を促進する薬剤として:セビメリン塩酸塩やピロカルピン塩酸塩は唾液分泌量を増加させ、口腔乾燥症状を改善させます。約60%の患者さんに有効で患者さんの評価もかなり良いものです。副作用として消化器症状や発汗などが約30%の患者さんにあります。本剤は人により作用、副作用に大きな違いが見られる場合があり、1日1錠から始め、副作用を見ながら1錠ずつ増量するなどの慎重な服用も望まれます。また、水に溶かしてうがい薬として使う方法も検討されています。他に漢方薬(麦門冬湯など)なども用いられます。グルココルチコイドの有効性は涙液分泌と同様、証明されていません。

(b)唾液の補充は人工唾液が使われます。人工唾液は噴霧式で舌の上だけでなく、舌下、頬粘膜に噴霧した方が口内で長持ちします。また、冷蔵庫保存で不快な味が消えます。口腔の保湿用のジェルも用いられます。

(c)虫歯の予防や口内の真菌感染、口角炎を予防するものとして、抗真菌薬などが用いられます。歯の管理と治療としてブラッシング、歯垢の除去と管理、虫歯、歯周病対策などがあります。

(d)口腔内環境を改善させるために、食事の改善として乾燥食品、香辛料、アルコール飲料を避けること、禁煙が大切です。口内の痛み、乾燥による咀しゃくと 嚥下困難 に対しては食物をやわらかくする、刺激のあるものを避ける、乾燥したものは液体に浸して食べる、温度を食べやすい温度にする、などがあります。歯の健康に対してはバラエティーに富んだ食物群をとる、糖分を避ける、甘い間食をとらない(ガムはキシリトールガムにする)などの注意が要ります。味覚の変化に対しては食物の水分、温度、食物の組み合わせを工夫するなどを考えてください。

3) 涙腺、唾液腺以外の臓器障害に対する治療

重要な臓器(肺、腎臓、筋肉、神経、血管など)の活動性病変(病気の勢いがある、あるいは進行を認める)を伴う場合には、中等量以上のグルココルチコイド、免疫抑制薬を使用します。
 関節痛・関節炎に対しては、痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)を用い、効果不十分あるいは関節炎が高度の場合には少量のグルココルチコイドを考慮します。
 皮疹に対しては、グルココルチコイド外用を用い、重度の場合にはグルココルチコイドの内服を考慮します。
 涙腺、唾液腺以外の臓器障害のある人は内科・リウマチ科などでグルココルチコイドや免疫抑制薬などを含めて適した治療を受けるべきです。経過については、10~20年経ても症状に変化のない患者さんが約半数です。残りの約半数の患者さんには何らかの検査値の異常や全身性の病変が発症する可能性があります。その中には白血球減少、高ガンマグロブリン血症や皮膚の発疹、間質性肺炎、 末梢神経 症状、関節症状、腎病変などがあります。まれにリンパ腫を発症する患者さんもいます。

4) 病気の正しい理解と心構え

シェーグレン症候群は長期間にわたる慢性疾患です。以下のことが大切だと思います。

(a) 病気の理解(医師、本、患者会で学ぶ)

① 自己免疫疾患である
② 慢性に経過する自己免疫疾患である
③ 病気の勢いに波がある
④ 医学の進歩は日進月歩で、新しい治療が開発されている

(b) 心構え

① 病気と共存する
② 生活を積極的にエンジョイする工夫をする・出来ることは何でもやってみる・人と同じことが出来なくても、他の方法で楽しむ工夫をする
③ 同じ病気にかかっているのは自分ひとりではない
④ わるい方へばかり考えない

(c) 日常生活で気をつけること

① 規則正しい生活
② 安静と十分な睡眠:過労をさける
③ 好き嫌いせずにバランスの取れた食事:栄養素、カルシウム(食後の歯の手入れ)
④ 寒冷をさける:ウイルス感染に注意
⑤ 外傷、手術などの肉体的ストレスをさける
⑥ 精神的ストレスをさける
⑦ 適正体重の維持
⑧ 適度の運動:入浴、散歩、庭いじり、畑仕事、サイクリングなど
⑨ 長期の 予後 に関係する疾患を予防する:骨粗しょう症、動脈硬化、高血圧、糖尿病など
⑩ 薬をきちんと服用する
⑪ 定期的な診察・検査を受ける

この病気を正しく理解していただきたいと願っています。

9.この病気ではどのような取り組みがあるのですか

患者会として「シェーグレンの会」があり、毎年1回開かれています。

日本には「日本シェーグレン病学会」があり、学会のホームページは<http://sjogren.jp/>です。ご覧下さい。

また、国際的な研究会は「国際シェーグレン症候群シンポジウム」が2~3年に1回開かれ、世界中の多くの医師がこの疾患にとり組んでいます。病気の原因の解明と新しい治療の開発が確実に進んでいます。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、担当医に相談してください。

該当する病名はありません。

 

情報提供者
研究班名 自己免疫疾患に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和7年11月(名簿更新:令和7年6月)