シェーグレン症候群(指定難病53)

しぇーぐれんしょうこうぐん
 

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シェーグレン症候群の診断には口唇を切って診断する必要があるのでしょうか?

必ず口唇小唾液腺生検をしないと診断ができないわけではありませんが、この検査は患者さんの病変がどの程度ひどいのか、活動性があるのか、又は 線維化 して治療の効果が望めないのかなどの多くの情報が得られる検査ですので、専門施設ではこれを受けられることをおすすめします。下唇の内側を約1㎝切開しますが、傷は1-2日で治りますし抜糸も数日で行います。外来で時間は20分位です。この検査で重篤な合併症が起こることは稀です。しかしながら、麻酔薬によるアレルギーや切開による出血・疼痛などは起こり得ますので、症状を自覚した場合は、我慢せずに医療スタッフにお伝えください。

レイノー現象はシェーグレン症候群におこるのでしょうか?

約1/3の患者におこります。寒冷時に指先が蒼白となり、しびれ感や痛みを伴い、その後紫色( チアノーゼ )となり、しばらくして赤色(血管拡張)に変わってもとに戻ります。 レイノー現象 自身は心配のあるものではありませんが、他の膠原病などに合併しておこることもあるので専門医に相談されるのが良いと思います。

5年、10年後にはひどい状態になるのでしょうか?

10年~20年経ても、現在の状態と全く変化ない状態で暮らしている患者さんが半数以上です。この方達を検査してみますと軽度の異常を示す人もありますが、変化のない人が多いです。その他の4割の人で、何らかの新しい病変が出る人があります。これらはごく軽度なものから、腎病変、間質性肺炎まで様々です。定期的な健康チェックを受けていると安心です。

シェーグレン症候群患者が妊娠する場合に注意することはありますでしょうか?

一次性か二次性かによって若干異なりますが、
1.抗SS-A/Ro抗体という抗体をお持ちですと、新生児に房室ブロックという不整脈が出ることがまれにあります。また、新生児ループスといって、生まれた赤ちゃんにお母さんの 自己抗体 が移行し、顔面や頭皮などを中心に、環状紅斑という皮疹を呈して生まれる事がまれにあります。新生児ループスはお母さんの自己抗体が消失する生後半年ころには治りますので心配はいりませんが、房室ブロックはなかなか治りません。では、抗SS-A/Ro抗体をお持ちの方が妊娠する場合に、これを予防するような治療をするかということですが、薬物治療については原則として非妊娠時と同様の対応をします。詳しくは、抗SS-A/Ro抗体陽性女性の妊娠に関する診療の手引き(ダウンロード出来ます)をご参照下さい。
しかし第一子に房室ブロックが出た場合に、第二子出産時にステロイドを使用したり 血漿 交換をしている施設もあります。数は少ないですが、第一子から積極的にこのような予防的治療をしている施設もあります。

2.これも稀ですが、抗リン脂質抗体というものをお持ちですと、胎盤 梗塞 を起こし(胎盤に血栓がつまる)流産を繰り返すことがあります。このような場合には、ヘパリンという注射薬を使用したり、アスピリンを飲んでもらったりします。漢方薬を使用する施設もあります。

以上ですが、詳しくは専門医を受診して症状、検査結果に合わせて説明をしてもらってください。

二次性シェーグレン症候群と、一次性シェーグレン症候群があるという事ですが、これらは検査でわかるのでしょうか?

膠原病専門医を受診されれば、症状、検査成績から一次性シェーグレン症候群か二次性シェーグレン症候群かは鑑別可能です。二次性シェーグレン症候群では関節リウマチの合併が最も多く、次いで全身性エリテマトーデスの合併が多くみられます。二次性シェーグレン症候群では、合併する他の膠原病により治療が異なりますので、正確な診断が大切です。

出産に関するリスクを教えて下さい。

一次性シェーグレン症候群の発症年齢は、全身性エリテマトーデス(SLE)などよりも高く、妊娠出産を経験される方は比較的少ないのが現状です。しかし中には小児期発症の方、20~30代に発症される方もいらっしゃいますので、そのような場合は妊娠、出産をご心配される事になります。SLEでは妊娠で病状が悪化することが知られていますが、一般的に一次性シェーグレン症候群の方が悪化されるということはありませんのでご安心ください。一次性シェーグレン症候群の方は膣液の分泌が少ないことが知られていますが、それを理由に帝王切開をしなければならないということはありません。通常は、主治医からこれらの可能性をお聞きになられ、納得された上で出産を計画するということが行なわれています。いずれにしても主治医と相談されることをお勧めいたします。

 

情報提供者
研究班名 自己免疫疾患に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和5年6月)