メニュー


HOME >> 診断・治療指針(医療従事者向け) >> ウェルナー症候群(指定難病191)

ウェルナー症候群(指定難病191)

うぇるなーしょうこうぐん

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
1904年にドイツの医師オットー・ウェルナーにより初めて報告された常染色体劣性の遺伝性疾患。思春期以降に、白髪、白内障などさまざまな老化徴候が出現することから、代表的な「早老症候群」の一つに数えられている。ウェルナー症候群(Werner syndrome)は白内障や白毛、脱毛など、実年齢に比べて「老化が促進された」ように見える諸症状を呈することから“早老症”と呼ばれる。
思春期以降に発症し、がんや動脈硬化のため40歳半ばで死亡する常染色体劣性疾患で、日本の推定患者数は約2,000名であり、世界の報告の6割が日本人であり我が国に多いとされる。原因遺伝子が1994年に同定されたが、早老機序は未解明、根治療法も未確立であり、多くの患者が、難治性皮膚潰瘍に伴う下肢切断や悪性腫瘍、糖尿病のため、生命の危機又は死を免れても重篤な後遺症に苦しんでいる。
 
2.原因
第8染色体短腕上に存在するRecQ型のDNAヘリカーゼ(WRNヘリカーゼ)のホモ接合体変異が原因と考えられている。しかし、何故この遺伝子変異が、本疾患に特徴的な早老症状、糖尿病、悪性腫瘍などをもたらすかは未解明である。
 
3.症状
20歳代以降、白髪・脱毛などの毛髪変化、白内障(両側性の場合が多い)、高調性の嗄声、腱など軟部組織の石灰化、皮膚の萎縮や角化・潰瘍、四肢の筋・軟部組織の萎縮、高インスリン血症を伴う耐糖能障害、性腺機能低下症などが出現する。また、低身長である場合が多い。
 
4.治療法
根本的治療法は未開発である。白内障は通常手術を必要とする。糖尿病に対しては一般にチアゾリジン誘導体が著効を示す。高LDLC血症にはスタチンが有効である。四肢の難治性皮膚潰瘍に、保存的治療が無効な場合には、他部位からの皮膚移植を検討する。
 
5.予後
死亡の二大原因は動脈硬化性疾患と悪性腫瘍であり、平均死亡年齢が40歳代半ばと言われてきたが、最近の研究により平均寿命が10年以上延長していることが示された。
 
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約2,000人
2.  発病の機構
不明(RecQ型のDNAヘリカーゼ(WRNヘリカーゼ)が原因遺伝子として同定されたが、早老機序は未解明。)
3.  効果的な治療方法
未確立(対症療法のみ。)
4.  長期の療養
必要(発症後生涯持続する。)
5.  診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり。)
6.  重症度分類
ウェルナー症候群の重症度分類を用いて、3度以上を対象とする。
 
○ 情報提供元
「早老症の実態把握と予後改善を目指す集学的研究」
研究代表者 千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学講座 教授 横手幸太郎
 
<診断基準>
Definite、Probableを対象とする。
ウェルナー症候群の診断基準
診断のカテゴリー
Definite(確定):主要徴候の全て、または、3つ以上の主要徴候に加え遺伝子変異を認めるもの。
Probable(疑い):主要徴候の1、2に加えて主要徴候やその他の徴候から2つ以上。

 

A.症状
I.主要徴候(10歳以後 40歳まで出現)
1.早老性毛髪変化(白髪、禿頭等)
2.白内障(両側)
3.皮膚の萎縮・硬化(鶏眼や胼胝等)、難治性潰瘍形成
4.軟部組織の石灰化(アキレス腱等)
5.鳥様顔貌

II.その他の徴候と所見
1.音声の異常(かん高いしわがれ声)
2.糖、脂質代謝異常
3.骨の変形などの異常(骨粗鬆症等)
4.非上皮生腫瘍又は甲状腺癌
5.血族結婚
6.早期に現れる動脈硬化 (狭心症、心筋梗塞等)
7.原発性性腺機能低下
8.低身長及び低体重

III.遺伝子変異
1.RecQ型のDNAヘリカーゼ遺伝子 (WRN遺伝子) の変異

 

 
B.検査所見
1.  画像検査所見 両側アキレス腱部の石灰化(火焔様とも表現される特徴的な石灰化様式を呈する。)
 
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
ハッチンソン・ギルフォード症候群(Hutchinson-Gilford progeria syndrome)、
ロースムンド・トムスン症候群(Rothmund-Thomson syndrome)、ブルーム症候群(Bloom syndrome)
(上記の疾患は早老様症状が一般的にウェルナー症候群より若年から発症し、さらに我が国においては非常に稀な疾患である。)
 
D.遺伝学的検査
RecQ型のDNAヘリカーゼ遺伝子 (WRN遺伝子)の変異
 
<重症度分類> 
3度以上を対象とする。
ウェルナー症候群の重症度分類
 
1度:皮膚の硬化や萎縮が四肢のいずれかにみられるが、日常生活への影響はまだ極めて軽微。
2度:皮膚の硬化や萎縮が四肢のいずれかにみられるが、まだ障害は軽く、日常生活は多少の不自由はあっても従来通り可能であり、歩行障害はないか、あっても軽微である。
3度:日常生活は自立しているが、皮下の石灰化、皮膚潰瘍注1)等による疼痛のために日常生活の制約をうけている。
4度:下肢に強い症状があり、自立歩行は不可能。介助により歩行や外出を行う。日常生活でも部分的介助を要する。
5度:ベッド又は車椅子の生活でほとんど寝たきり。全面的介助を要する。もしくは悪性腫瘍を発症している注4)
 
注1)皮膚潰瘍 (治療後瘢痕を含む):ウェルナー症候群は、四肢末梢における皮膚の硬化・萎縮に伴い、下腿や足部、肘部に皮膚潰瘍を好発する。皮膚の萎縮、線維芽細胞の老化による再生能力の低下や血行障害のため、保存的にも観血的にも治癒の困難な場合が多い。疼痛や関節可動域の低下により、下肢潰瘍は歩行障害をもたらし、肘部潰瘍は食事や洗顔に支障を来すなど、日常生活動作が著しく制限される。潰瘍部への感染併発により、しばしば四肢切断に至る。
注2)難治性潰瘍のため四肢切断に至った場合は4度以上に分類される。
注3)なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要な者については、医療費助成の対象とする。
注4)ウェルナー症候群では、若年より悪性腫瘍(固形ならびに造血器腫瘍)を高率に発症し、その日常生活活動度と生命予後を左右する。
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。


治験情報の検索:国立保健医療科学院
※外部のサイトに飛びます。
情報提供者
研究班名 早老症の実態把握と予後改善を目指す集学的研究班
研究班名簿   
情報更新日平成29年4月24日