低ホスファターゼ症(指定難病172)

ていほすふぁたーぜしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「低ホスファターゼ症」とはどのような病気ですか

アルカリホスファターゼという 酵素 の異常により骨の石灰化が障害され、骨が弱くなる病気です。けいれんを起こす患者さんや、乳歯が早く抜けてしまう患者さんもいます。血液検査で、アルカリホスファターゼ(ALP)の値が低いことが特徴です。重症度や発症年齢には幅があり、無治療では生存が難しい重症の患者さんからほとんど症状のない患者さんまでいます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

15万人に1人程度出生すると推定されており、無治療では 生命予後 の悪い患者さんが多く、国内には100人〜200人程度の患者さんがおられると考えられてきました。最近、非常に有効な薬が開発され、以前は早期に亡くなっていた重症の患者さんも救命できるようになったことから、生存している患者さんの数が増加すると考えられます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

この病気は遺伝性の病気です。重症の患者さんは、ほとんどの場合、 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝) で、ご両親ともに 変異 を有する遺伝子を1つずつ持っていて、その両方が子どもさんに伝わった場合に病気が発症します。軽症の患者さんの一部は 常染色体顕性遺伝(優性遺伝) で、その場合は変異を有する遺伝子が1つであっても発症します。血液検査でアルカリホスファターゼの値が低い人の中に、この病気の遺伝子を持っている人が含まれています。

4. この病気の原因はわかっているのですか

組織非特異型アルカリホスファターゼ酵素の 遺伝子の変異 によって、この酵素の働きが悪くなることが原因です。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝します。多くは常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)ですが、軽症の患者さんでは常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の場合もあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

年齢や重症度により、さまざまな症状が起こります。骨の症状としては、骨変形や骨折、骨痛、腕や足の短縮、低身長などをきたします。重症型の新生児では、胸の骨の形成が悪いために胸郭が狭くなり、呼吸障害を起こします。けいれんを起こす患者さんや、血液中のカルシウム値が高くなり、腎臓に結石ができる患者さんもいます。また、乳児期に哺乳不良や体重増加不良を認める場合もあります。4歳までに乳歯が抜けてしまう乳歯早期脱落を示す患者さんや、頭蓋縫合の早期癒合を示す患者さんもおられます。成人の患者さんでは、骨折や骨痛、筋力低下、筋肉痛、関節痛、偽痛風などの症状がみられます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

以前は、根本的な治療法はなく、重症患者さんに対する呼吸管理やけいれん治療などの対症療法にとどまっていました。最近、足りないアルカリホスファターゼ酵素を補充する酵素薬が開発され、2015年にこの薬の製造販売が承認されて使えるようになりました。この薬の登場により、以前は早期に亡くなっていた重症の患者さんも救命できるようになりました。筋力低下や運動機能低下に対しても、有効と考えられています。今後は、この薬を用いた酵素補充療法が基本治療となり、その上で、必要に応じて対症療法が組み合わされていくものと考えられます。また、乳歯が早く抜けてしまう患者さんがおられ、残った歯を守るために小児用の義歯を装着していただく場合があり、保険適用になっています。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

症状により 予後 が異なります。すなわち、酵素補充が行われなければ生存困難な方から、ほとんど無症状の方までいます。一般的にはアルカリホスファターゼの必要性が成長するとともに減少するので、軽症患者さんでは成長過程で自然に症状が改善する場合もあります。今後は、根本的な治療である酵素補充療法が行えるようになったことで、今までよりも経過が良くなることが期待されます。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

何らかの症状のある方は定期的な医療機関への受診が必要です。現在症状がほとんどない方も、骨折や歯周病などを起こしやすい可能性があるので、骨の痛みや歯の健康などに注意する必要があります。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

日本小児内分泌学会 低ホスファターゼ症診療ガイドライン
http://jspe.umin.jp/medical/files/guide20190111.pdf
厚生労働科学研究班
https://www.osteochondrodysplasia.com
日本医療研究開発機構(AMED)研究班
https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/ped/skeltaldysplasia/
小児慢性特定疾病情報センター 低ホスファターゼ症
https://www.shouman.jp/disease/details/15_02_006/
低ホスファターゼ症医療情報サイト
https://hpp-keihatsu.jp/

 

情報提供者
研究班名 先天性骨系統疾患の医療水準と患者QOLの向上を目的とした研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)