先天性副腎低形成症(指定難病82)
1. 先天性副腎低形成症とは |
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副腎皮質は外から内側に向けて球状層、束状層・網状層の3層構造より成り立っています。球状層から鉱質コルチコイド(アルドステロンなど)が、束状層から糖質コルチコイド(コルチゾールなど)が、網状層から副腎アンドロゲンが産生・分泌されます。副腎皮質機能低下症は、これらのステロイドホルモンの分泌が低下することにより生体で不足した状態をさします。副腎皮質機能低下症はその病変部位により、原発性と続発性(中枢性)に分類されます。原発性は副腎皮質自体の病変により、続発性は下垂体の病変による副腎機能低下症です。先天性副腎低形成症とは、広義には先天性な副腎皮質機能低下症で、かつ副腎の大きさが小さい疾患をさします。狭義の先天性副腎低形成症は、この中で副腎の発生・分化異常が成因となるもののみをさします。具体的な疾患として、DAX1異常症、SF-1異常症、IMAGe症候群などが知られています。 |
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか |
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正確な頻度は不明ですが、約12.500出生に1という調査報告があります。 |
3. この病気はどのような人に多いのですか |
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先天性副腎低形成症は新生児期~乳児期にかけて見つかることが多いです。X連鎖性ものは男子に限り発症します。 |
4. この病気の原因はわかっているのですか |
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先天性副腎低形成症を呈するものとして、副腎の発生・分化に関わるDAX1やSF-1遺伝子のバリアントが知られています。DAX1遺伝子のバリアントの中にはDAX1遺伝子を含む大きな欠失のために近傍のデュシェンヌ型ジストロフィー遺伝子やグリセロールキナーゼ遺伝子も一緒に欠失する隣接遺伝子症候群を呈するタイプもあります。CDKN1C遺伝子の機能獲得バリアントによるIMAGe症候群では、子宮内発育不全、骨幹端異形成、停留精巣・小陰茎などの外陰部異常とともに先天性副腎低形成症を認めます。 |
5. この病気は遺伝するのですか |
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X連鎖性先天性副腎低形成症(DAX1異常症)は男子のみに発症し、母親が保因者の可能性があります。 |
6. この病気ではどのような症状がおきますか |
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・DAX1異常症 |
7. この病気にはどのような治療法がありますか |
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生涯にわたり不足するステロイドホルモン(糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド)の補充が必要です。新生児・乳児期には食塩の補充を行う場合もあります。急性副腎不全を発症した場合には、ヒドロコルチゾン(糖質コルチコイド)の速やかな静注が必要です。緊急時にはヒドロコルチゾン筋肉注射(自己注射)を行うこともあります。発熱や手術などストレスにさらされる際には急性副腎不全(生命に危険を及ぼす重篤な状態)を予防するためにヒドロコルチゾン内服量を主治医の指示に従って増量する必要があります。適切な治療が行われれば生命予後は比較的良好です。 |
8. この病気はどういう経過をたどるのですか |
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副腎皮質機能の回復(ホルモン分泌の回復)は期待できませんが、不足するステロイドホルモンの補充療法を生涯にわたって続けることにより通常の良好な一生を過ごすことができます。ヒドロコルチゾン(糖質コルチコイド)をストレス時に適切に増量しなかったり、服用を忘れたりすると急性副腎不全を起こし、生命の危険にさらされます。適切な治療が行われれば予後は比較的良好です。 |
9. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。 |
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X連鎖性先天性副腎低形成症(DAX1異常症) |
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