血管奇形分野|難治性血管奇形(平成24年度)

なんちせいけっかんきけい
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1. 概要

一般に「血管腫」と診断されるもので最も頻度の高いのは「乳児血管腫」であり、小児期に自然退縮するのが大きな特徴である。一方、いわゆる「血管腫」と診断される疾患のなかに、良性腫瘍とは明らかに病態の異なる稀な疾患群が存在する。これらは血管内皮細胞の増殖を伴う良性腫瘍ではなく血管系の形成異常としての「血管奇形」であり、自然退縮することなく進行し、疼痛や潰瘍、患肢の成長異常、機能障害、整容上の問題等により長期にわたり患者のQOLを損なうことがある。血管奇形には静脈奇形、毛細血管奇形、リンパ管奇形、動静脈奇形、それらの混合型が存在する。血管奇形の中には巨大病変や浸潤性病変がしばしば認められ、四肢全体や全身に病変が多発することもある。これら難治性血管奇形は完治させることが難しく、生涯にわたる疾患治療・管理が必要である。

2. 疫学

欧米の文献では血管奇形患者は人口の約1%程度と推定されているが、本邦においてはこれまで十分な疫学調査は行われておらず、不明である。その中でも難治性血管奇形患者数は数千人と推定される

3. 原因

多くは先天性で、脈管の発生異常(奇形)により生じた病変と考えられている。原因の多くは明らかではないが、その一部として遺伝子変異が発見され、遺伝子治療や分子標的創薬の可能性が見出されつつある。

4. 症状

疼痛、腫脹、潰瘍、出血、発熱、感染、患肢の成長異常、機能障害など。

5. 合併症

巨大病変では消費性血液凝固障害をきたす。患肢の肥大や変形、萎縮、骨融解などによる運動機能障害がみられる。多発病変では消化管内の血管奇形を合併(青色ゴムまり様母斑症候群)し、下血による貧血を伴うことがある。

6. 治療法

外科的切除術、硬化療法、塞栓術、レーザー治療など。

7. 研究班

難治性血管腫・血管奇形についての調査研究班 患者実態調査および治療法の研究