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血液・凝固系疾患分野遺伝性貧血(平成24年度)

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1. 概要

造血不全に伴う主な遺伝性貧血には、Diamomd-Blackfan貧血(DBA)、Fanconi貧血(FA)、遺伝性鉄芽球性貧血(CSA)、Congenital dyserythropoietic anemia(CDA)の4疾患がある。これらの疾患の多くは、骨髄不全の他、先天性奇形、発がん素因を共有している。DBAは、乳児期に発症する先天性赤芽球癆である。骨髄は正形成であるが、赤血球系細胞のみが著減し、末梢血では網赤血球が減少し、大球性正色素性貧血を呈する。FAは、染色体不安定性を特徴とする常染色体劣性の先天性再生不良性貧血である。低濃度のマイトマイシンCやdiepoxybutaneなどのDNA架橋剤とともにリンパ球を培養すると、多数の染色体断裂がみられる。骨髄異形成症候群(MDS)や白血病などの血液腫瘍や固形癌の発症率も高い。CSAは、骨髄において、核の周囲に環状に鉄が沈着した赤芽球(環状鉄芽球)を認める遺伝性貧血である。MDSに代表される後天性鉄芽球性貧血との鑑別を必要とする。CDAは、先天的に赤芽球に形成異常があり、慢性の不応性貧血、無効造血および続発性ヘモクロマトーシスを伴う稀な疾患である。

2. 疫学

発症数は、最も多いDBAでも年間約10〜15例(出生人口100万人当たり約5〜7名)、次に多いFAでも5〜10例(出生人口100万人当たり約5名前後)と極めて稀な疾患である。平成21年度に行われた厚労省難治性疾患克服事業の研究班による一次疫学調査では、この10年間の症例としてDBA 132, CDA 17, CSA 5例が把握されている。

3. 原因

DBAの約40〜50%にRPS19をはじめとする10種類以上のリボソームタンパク遺伝子のヘテロ変異が見出されている。リボソームの機能障害のために生じる翻訳の異常が、貧血を引き起こす中心的なメカニズムであると考えられている。FAは遺伝的に多様な疾患であり、13の相補群(FA-A,B,C,D1,D2,E,F,G,I,J,L,M,N群)に分けられ、近年その相補群のすべての原因遺伝子が同定された。これらのFA遺伝子がコードするFA蛋白は、家族性乳癌卵巣癌原因蛋白であるBRCA1, BRCA2と共同してDNA修復を行う。FAでは、これらの遺伝子の変異の結果、この経路が不活化され、発症する。CSAは、赤血球における鉄代謝・ヘム合成にかかわる遺伝子異常により、鉄の利用が障害され、ミトコンドリアに鉄が沈着して発症する。これまでに複数の遺伝子変異が報告されている。CDAは、I型〜III型に分類されている。I型は、西欧から中近東に多くみられ、2002年に責任遺伝子CDAN1が同定された。II型は、CDAの中で最も頻度が高く、2009年に責任遺伝子SEC23Bが同定された。III型は、稀な病型であるが、まだ責任遺伝子は同定されていない。

4. 症状

DBAは、顔色不良や息切れなどの貧血症状と約40%の症例に大頭、小頭、顔貌異常小顎、口蓋裂、巨舌、兎唇、母指球の平坦化、母指骨異常、腎泌尿器系の奇形や先天性心疾患などの合併奇形や低身長を認める。FAは、種々の合併奇形を伴うが、全く奇形がみられない症例もある。低身長、カフェオレ斑や皮膚色素沈着、多指症、拇指低形成、前腕の奇形などの外表奇形だけでなく、片腎、消化管や先天性心疾患などの内臓奇形を伴うことも多い。再生不良性貧血の発症年齢は約7歳と言われており、経過中に骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へと移行する頻度が高い。CSAの主な症状は、息切れなどの貧血症状である。CDAの主な症状は、慢性の貧血症状、黄疸、体重増加不良である。

5. 合併症

DBAは輸血依存性の場合、鉄過剰症によって肝機能障害、糖尿病、甲状腺機能低下症、心筋症を合併することがある。低身長はDBAの合併奇形の一つであるが、最終身長はステロイド療法、鉄過剰症や慢性貧血によって影響を受ける。DBAの女性では、妊娠中の合併症(子癇前症、流産、早産、死産、子宮内発育遅延、先天奇形)が通常より多く認められる。急性骨髄性白血病などの悪性疾患を合併することがある。FAは高頻度に固形癌がみられ、頭頚部扁平上皮癌、膣扁平上皮癌、肝細胞癌の占める割合が多い。血液腫瘍の発症が10代に多いのに対して、固形癌の発症は25歳を超えた比較的年齢の高い患者に発症する傾向にある。CSAは、鉄利用障害・輸血などにより鉄過剰症を合併しやすい。また、変異遺伝子によっては、神経や筋の障害を伴うことがある。CDAは、頻回の輸血により、鉄過剰症を来すことがある。

6. 治療法

DBAの治療は、輸血とステロイド療法が基本である。60%の例はステロイドに反応するが、その60%がステロイド依存性となる。治療抵抗例では、造血幹細胞移植の適応がある。FAは、幹細胞レベルの障害に基づく造血障害であり、抗リンパ球グロブリンなどの免疫抑制療法の効果は期待できない。蛋白同化ホルモンが約半数の患者で一時的な効果を示すことがある。造血幹細胞移植は唯一根治が期待できる治療法である。身体合併奇形は小児外科、整形外科、耳鼻科等と連絡をとり手術を施行する。赤血球におけるヘム合成系酵素である赤血球型アミノレブリン酸合成酵素の変異によるX連鎖CSAの場合は、本酵素の補酵素であるビタミンB6の投与により、半数例以上で貧血の改善が認められる。CDAは、従来、赤血球輸血量法や摘脾などが行われてきたが、いまだに一定の治療方針は示されていない。造血幹細胞移植が行われることもある。

7. 研究班

遺伝性貧血の病態解明と診断法の確立に関する研究班