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サルコイドーシス

さるこいどーしす

(認定基準、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

■定義
サルコイドーシスは原因不明の多臓器疾患である。若年(20~30代)と中年40~50代)に好発し、両側肺門リンパ節、肺、 眼、皮膚の罹患頻度が高いが、神経、筋、心臓、腎、骨、消化器などの臓器も罹患する。診断は臨床的、画像所見に加えて、壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が組織学的に証明されて確立する。既知の原因による肉芽腫と局所性サルコイド反応は除外されなければならない。特に治療上注意すべき臓器は眼、肺、心、神経、腎などquality of life や予後に関係する臓器の障害は十分な管理が必要である。

■疫学
患者の発生状況は1991年の我が国の実態調査では新発見数(罹患率)は北海道では人口10万に対し1.6、九州では0.9であった。2004年の全国調査では、人口10万に対し1.6となり(組織診断群と臨床診断群を合わせた症例数)、増加傾向があり、南北の差は認められない。日本全体の患者数(有病率)は推定では人口10万に対し7.5~9.3と考えられている。

■病因
原因は不明であるが、本症の発病は、疾患感受性のある宿主が環境中のなんらかの抗原物質(起因物質)に曝露されることにより誘導されるI型ヘルパーT細胞の過敏性免疫反応に起因すると考えられており、我が国から、Propionibactetrium acnes (アクネ菌)病因説が発信されている。

■症状
本症発見時約1/3は無症状で、健康診断等での胸部異常影で発見される。霧視・羞明・飛蚊・視力低下などの眼症状で発見される場合が最も多く、次いで皮疹、咳、全身倦怠感などが多い。その他、発熱、結節性紅斑、関節痛、全身痛などがある。臓器障害による症状が乏しくても全身倦怠感、発熱、関節痛、全身痛などの全身症状のためにquality of lifeが著しく侵される場合がある。

■診断
①診断基準
1.診断基準
【組織診断群】
全身のいずれかの臓器で壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が陽性であり、かつ、既知の原因の肉芽腫および局所サルコイド反応を除外できているもの。
【臨床診断群】
類上皮細胞肉芽腫病変は証明されていないが、 呼吸器、眼、心臓の3臓器中の2臓器以上において本症を強く示唆する臨床所見を認め、かつ、特徴的検査所見の5項目中2項目以上が陽性のもの。
 
特徴的な検査所見 (表1)

①両側肺門リンパ節腫脹
②血清アンジオテンシン変換酵素(ACE)活性高値または血清リゾチーム値高値
③血清可溶性インターロイキン-2受容体(sIL-2R)高値
④Gallium-67 citrateシンチグラフィ(67Ga シンチグラフィ)またはfluorine-18 fluorodeoxygluose PET(18F-FDG PET)における著明な集積所見
⑤気管支肺胞洗浄検査でリンパ球比率上昇、CD4/CD8比が3.5を超える上昇

特徴的な検査所見5項目中2項目以上陽性の場合に陽性とする。
 
付記
1. 皮膚は生検を施行しやすい臓器であり、皮膚に病変が認められる場合には、診断のためには積極的に生検を行なうことが望まれる。微小な皮膚病変は皮膚科専門医でないと発見しづらいことがある。
2. 神経系をはじめとする他の臓器において、本症を疑う病変はあるが生検が得難い場合がある。このような場合にも、診断確定のためには全身の診察、諸検査を行って組織診断を得るように努めることが望まれる。
3. 組織診断群においては特徴的な検査所見および全身の臓器病変を十分検討することが必要である。また、臨床診断群においては類似の臨床所見を呈する他疾患を十分に鑑別することが重要である。
 
2.各種臓器におけるサルコイドーシスを示唆する臨床所見
呼吸器系、眼、心臓、皮膚およびそれ以外の臓器におけるサルコイドーシスに特徴的な臨床所見およびサルコイドーシスの関連病態に伴う臓器病変を以下に示す。
 
1.呼吸器系病変の臨床所見
呼吸器系病変を強く示唆する臨床所見
1)または2)がある場合、呼吸器系病変を強く示唆する臨床所見とする。
1) 両側肺門リンパ節腫脹(BHL)
2) CT/HRCT画像で気管支血管束周囲間質の肥厚やリンパ路に沿った多発粒状影。
リンパ路に沿った分布を反映した多発粒状影とは小葉中心性にも、小葉辺縁性(リンパ路のある胸膜、小葉間隔壁、気管支動脈に接して)にも分布する多発粒状影である。
 
2.眼病変の臨床所見
表2に示す眼所見の6項目中2項目以上有する場合、眼病変を強く示唆する臨床所見とする。
 
表2.眼所見

1) 肉芽腫性前部ぶどう膜炎(豚脂様角膜後面沈着物、虹彩結節)
2) 隅角結節またはテント状周辺虹彩前癒着
3) 塊状硝子体混濁(雪玉状、数珠状)
4) 網膜血管周囲炎(主に静脈)および血管周囲結節
5) 多発するろう様網脈絡膜滲出斑または光凝固斑様の網脈絡膜萎縮病巣
6) 視神経乳頭肉芽腫または脈絡膜肉芽腫

参考となる眼病変:角膜乾燥症、上強膜炎・強膜炎、涙腺腫脹、顔面神経麻痺
 
3.心臓病変の臨床所見
表3に示す心臓所見(徴候)は主徴候と副徴候に分けられ、以下の1)または2)のいずれかを満たす場合、心臓病変を強く示唆する臨床所見とする。
1)主徴候5項目中2項目以上が陽性の場合。
2)主徴候5項目中1項目が陽性で、副徴候3項目中2項目以上が陽性の場合。
 
表3.心臓所見
(1) 主徴候
  (a) 高度房室ブロック(完全房室ブロックを含む)または致死的心室性不整脈(持続性
心室頻拍、心室細動など)
  (b) 心室中隔基部の菲薄化または心室壁の形態異常(心室瘤、心室中隔基部以外の菲薄化、心室壁肥厚)
  (c)左室収縮不全(左室駆出率50%未満)または局所的心室壁運動異常
  (d)67Ga シンチグラフィまたは18F-FDG PETでの心臓への異常集積
  (e) Gadolinium造影MRIにおける心筋の遅延造影所見
(2) 副徴候
  (a) 心電図で心室性不整脈(非持続性心室頻拍、多源性あるいは頻発する心室期外収縮)、脚ブロック、軸偏位、異常Q波のいずれかの所見
  (b)心筋血流シンチグラフィにおける局所欠損
  (c)心内膜心筋生検:単核細胞浸潤および中等度以上の心筋間質の線維化
付記
1) 虚血性心疾患と鑑別が必要な場合は、冠動脈検査(冠動脈造影、冠動脈CTあるいは心臓MRI)を施行する。
2) 心臓以外の臓器でサルコイドーシスと診断後、数年を経て心臓病変が明らかになる場合がある。そのため定期的に心電図、心エコー検査を行い、経過を観察する必要がある。
3) 心臓限局性サルコイドーシスが存在する。
4) 乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が、心内膜心筋生検で観察される症例は必ずしも多くない。従って、複数のサンプルを採取することが望ましい。
5) 18F-FDG PETは、非特異的(生理的)に心筋に集積することがあるので撮像条件に注意が必要である。
 
4.皮膚病変の臨床所見
皮膚病変の診断には肉芽腫の組織学的陽性所見を必要とする。
 
皮膚所見
①特異的病変
ⅰ 結節型 ⅱ 局面型 ⅲ びまん浸潤型 ⅳ 皮下型
v その他(苔癬様型、結節性紅斑様、魚鱗癬型、その他のまれな病変)
②瘢痕浸潤
 
付記
本邦では肉芽腫のみられない非特異的病変として結節性紅斑をまれに伴うことがある。
 
5.その他の臓器におけるサルコイドーシスを強く示唆する臨床所見
サルコイドーシスの関連病態およびそれに伴う臓器病変

 
呼吸器系、眼、心臓、皮膚以外の臓器におけるサルコイドーシスを強く示唆する臨床所見と高カルシウム血症、高カルシウム尿症、small fiber neuropathyなどのサルコイドーシスの関連病態およびそれに伴う臓器病変を記載する。
呼吸器系、眼、心臓、皮膚以外の臓器におけるサルコイドーシスを強く示唆する臨床所見にはCT、MRI、超音波、各種内視鏡、67Gaシンチグラフィや18F-FDG PETなどの画像所見が含まれる。呼吸器系、眼、心臓、皮膚以外の臓器においてサルコイドーシスを強く示唆する臨床所見を確定する際は、当該臓器または異なる臓器における類上皮細胞肉芽腫の証明を必要とする。関連病態による臓器病変では “臓器病変を強く示唆する臨床所見”とはならないが、サルコイドーシスを示唆する臨床所見として重要であるため記載する。
 
1) 神経病変
①中枢神経
a 実質内肉芽腫性病変
a-1. 限局性腫瘤病変 a-2. びまん性散在性肉芽腫性病変 a-3. 脊髄病変
b 髄膜病変
b-1. 髄膜炎・髄膜脳炎 b-2. 肥厚性肉芽腫性硬膜炎 
c 水頭症
d 血管病変
d-1. 血管炎 d-2. 脳室周囲白質病変 d-3. 静脈洞血栓症
e 脳炎
②末梢神経
a 脳神経麻痺 
a-1. 顔面神経麻痺 a-2. 舌咽・迷走神経障害 a-3. 聴神経障害 a-4. 視神経障害
a-5. 三叉神経障害 a-6. 嗅神経障害 a-7. その他の脳神経の障害
b 脊髄神経麻痺
b-1. 多発性単神経炎 b-2. 多発神経炎 (small fiber neuropathyを含む)b-3. 単神経麻痺 b-4. その他の障害:神経根障害、馬尾症候群など
2) 肝病変:肝腫、多発性結節
3) 脾病変:脾腫、脾機能亢進症、多発性結節
4) 消化管病変:潰瘍、粘膜肥厚、隆起性病変
5) 腎病変:腎腫瘤、カルシウム代謝異常に伴う腎病変、尿細管間質性腎炎、肉芽腫性腎炎、
糸球体腎炎、腎血管炎
6) 胸郭外リンパ節病変:表在性リンパ節腫大、腹腔内リンパ節腫大など
7) 外分泌腺病変:耳下腺腫大、顎下腺腫大、涙腺腫大
8) 上気道病変:鼻腔病変、上気道腫瘤
9) 骨病変:レース状の骨梁像、溶骨性病変、円形のう胞状骨透亮像
10) 筋病変
ⅰ 急性~亜急性筋炎型
ⅱ 慢性ミオパチー
ⅲ 腫瘤型ミオパチー
11)関節病変:関節の腫脹、変形
12)生殖器病変:子宮、精巣、精巣上体、精索などの腫瘤
13)その他病変:骨髄病変、膵病変、 胆道・胆嚢病変、腹膜病変、乳腺病変、甲状腺病変など
14)カルシウム代謝異常:高カルシウム血症、高カルシウム尿症、腎結石、尿管結石
 
3.除外規定
以下の除外規定に従って、十分に鑑別診断を行う。
①原因既知あるいは別の病態の全身性疾患を除外する:悪性リンパ腫、他のリンパ増殖性疾患、がん(がん性リンパ管症)、結核、結核以外の肉芽腫を伴う感染症(非結核性抗酸菌症、真菌症など)、ベーチェット病、アミロイドーシス、多発血管炎性肉芽腫症/ウェゲナー肉芽腫症、IgG4関連疾患など。
②異物、がんなどによるサルコイド反応。
③他の肺肉芽腫を除外する:ベリリウム肺、じん肺、過敏性肺炎など。
④巨細胞性心筋炎を除外する。
⑤原因既知のブドウ膜炎を除外する:ヘルペス性ぶどう膜炎、HTLV-1関連ぶどう膜炎、
ポスナー・シュロスマン症候群など。
⑥他の皮膚肉芽腫を除外する:環状肉芽腫、環状弾性線維融解性巨細胞肉芽腫、
リポイド類壊死、メルカーソン・ローゼンタール症候群、顔面播種状粟粒性狼瘡、酒さなど。
⑦他の肝肉芽腫を除外する:原発性胆汁性肝硬変など。
 
4.診断および経過観察における注意事項
サルコイドーシスは同時性および異時性に多臓器に病変を有する全身性疾患であるので、既往歴の確認を十分に行い、各種臓器病変の有無を経時的に検討する必要がある。また、サルコイドーシスとして各臓器の診断の手引きから典型的な症例で組織学的な検討が困難な場合でも臨床診断群として、申請し、治療ができるようにした。この場合も十分に鑑別診断を行うことが前提である。また、サルコイドーシスを疑うが、上記の基準を満たさない症例において治療の必要がない場合には、疑診として経過観察を行うこととする。一方、疑診でも心臓サルコイドーシスや中枢神経サルコイドーシスを強く疑い、生命の危険が想定される場合は治療的診断として、診断に先行して治療を行う場合があることを付記する。
 
②.重症度分類
罹患臓器数、治療の必要性の有無(全身ステロイド治療、全身免疫抑制剤治療)、サルコイドーシスに関連した各種臓器の身体障害の認定の程度の3項目によりスコア化し、判定する。
重症度分類
次の3項目によるスコアで判定する。
1. 罹患臓器数
1または2臓器病変               1点
3臓器病変以上または心臓病変合併    2点
 
2. 治療の必要性の有無(全身ステロイド治療、全身免疫抑制剤治療)
治療なし            0点
必要性はあるが治療なし  1点
治療あり            2点
 
3. サルコイドーシスに関連した各種臓器の身体障害の認定の程度
身体障害なし           0点
身体障害3級または4級    1点
身体障害1級または2級    2点
 
合計スコアによる判定
1点             重症度 Ⅰ
2点             重症度 Ⅱ
3点または4点      重症度 Ⅲ
5点または6点      重症度 Ⅳ
 
重症度ⅢとⅣを助成対象とする。
 
■治療
サルコイドーシス治療に関する見解-2003が作成され、使用されている。多くの症例では無治療で経過観察され、臓器障害のために日常生活が障害される症例(自覚症状の強い症例)や、将来生命の予後が危ぶまれる症例(中枢神経病変、心臓病変、腎臓病変等))に限って治療が現在行われている。また治療薬としては病態より考え、副腎皮質ステロイドによる治療が最善と考えられている。しかし、再発症例も多く、二次治療薬としての免疫抑制剤の使用も考慮されている。現在、日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会と厚生労働省研究費補助金難治性疾患政策研究事業びまん性肺疾患による調査研究班の合同による委員会で「サルコイドーシスの診療ガイドライン」を検討中で近い将来発表の予定である。

■予後
一般には発病様式と病変の拡がりが関与する。結節性紅班を伴う急性発症症例(発熱、関節痛を伴う症例もある)や無症状の両側肺門リンパ節腫脹を示す症例は通常は自然経過で消退する症例が多い。一方潜行性発症例、特に他臓器病変のある症例は慢性に進行する症例が多く、一部は肺やその他の臓器の線維化に進展する症例も見られる。本症の多くは自然寛解か、治療によって軽快または治癒するが、約10%の症例が進行性、難治症例となる。日本では死亡例は少ない。

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情報提供者
研究班名 びまん性肺疾患に関する調査研究班
研究班名簿   
情報更新日平成27年3月18日