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クローン病

くろーんびょう

(指定難病一覧(概要、診断基準等・臨床調査個人票))

■概念

本疾患は原因不明で、主として若年者にみられ、潰瘍や線維化を伴う肉芽腫性炎症性病変からなり、消化管のどの部位にも起こりうる。消化管以外(特に皮膚)にも病変が起こることがある。原著では回腸末端を侵す(回腸末端炎)と記載されたが、その後口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位に起こりうることが明かとなった。臨床像は病変の部位や範囲によって多彩である。発熱、栄養障害、貧血などの全身症状や関節炎、虹彩炎、肝障害などの全身性合併症がおこりうる。病状・病変は再発・再燃を繰り返しながら進行し、治療に抵抗し社会生活が損なわれることも少なくない。

[WHOのCIOMS(Council for international Organization Sciences.医科学国際組織委員会)による概念(1973)を一部改訂]

■疫学

好発年齢は10歳代後半から20歳代。男女比は2:1で男性に多い。平成25年度の特定疾患医療受給者証交付件数は39,799人と年々増加していますが、人口10万人あたりの有病率は27人程度であり、欧米の約10分の1です。

■病因

遺伝的因子、環境因子(ウイルスや細菌などの微生物感染、腸内細菌叢の変化、食事抗原など)などが複雑に関与し、免疫の過剰応答が生じて発症、増悪にいたると考えられている。ただ、本質的な病因は明らかになっていない。

■病変部位

多くの症例は小腸や大腸、またはその両者に縦走潰瘍、敷石像やアフタなどの病変を有する。病型は縦走潰瘍、敷石像、または狭窄の存在部位による(小腸型、小腸大腸型、大腸型など)。これらの所見を欠く場合には特殊型とする。

■症状

腹痛、下痢、体重減少、発熱、肛門病変などがよくみられる症状である。ときに虫垂炎に類似の症状、腸閉塞、腸穿孔、大出血で発症する。また、腹部症状を欠き、肛門病変や発熱で発症することもある。腸管外合併症として貧血、末梢関節炎、強直性脊椎炎、口腔内アフタ、皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症など)、虹彩炎、成長障害などがあり、長期経過例では悪性腫瘍が問題となる。

■診断

臨床症状や、貧血やCRP上昇などの血液検査から疑い、X線造影検査や内視鏡検査(上部消化管内視鏡、小大腸内視鏡)の所見で診断される。腹部CT検査やMRI検査(MRエンテログラフィを含む)も有用である。特徴的な肛門病変や、内視鏡検査や腸管切除の際に得られた検体の病理所見(非乾酪性類上皮細胞肉芽腫など)も診断に有用である。画像所見としては、縦走潰瘍、敷石像、縦走する不正形潰瘍またはアフタ、時に、上部消化管の不正形潰瘍またはアフタなども診断に有用となる。鑑別すべき疾患として、腸結核、腸型ベーチェット病、単純性潰瘍、 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)潰瘍、感染性腸炎などがあげられる。

①診断基準
(1)主要所見
A. 縦走潰瘍
B. 敷石像
C. 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫
(2)副所見
a. 消化管の広範囲に認める不整形〜類円形潰瘍またはアフタ
b. 特徴的な肛門病変
c. 特徴的な胃・十二指腸病変

確診例:
[1]主要所見のAまたはBを有するもの。
[2]主要所見のCと副所見のaまたはbを有するもの。
[3]副所見のa, b, cすべてを有するもの。
疑診例:
[1]主要所見のCと副所見のcを有するもの。
[2]主要所見AまたはBを有するが潰瘍性大腸炎や腸型ベーチェット病、単純性潰瘍、虚血性腸病変と鑑別ができないもの。
[3]主要所見のCのみを有するもの。
[4]副所見のいずれか2つまたは1つのみを有するもの。

②重症度分類
治療に際し、重症度分類を下記の項目を参考に行う。

 

CDAI#

合併症

炎症
(CRP値)

治療反応

軽 症

150-220

なし

わずかな上昇

 

中等症

220-450

明らかな腸閉塞などなし

明らかな上昇

軽症治療に反応しない

重 症

450<

腸閉塞、膿瘍など

高度上昇

治療反応不良

#:CDAI(Crohn’s disease activity index)

③病型分類
本症の病型は縦走潰瘍、敷石像または狭窄の存在部位により、小腸型、小腸大腸型、大腸型に分類する。これらの所見を欠く場合やこれらの所見が稀な部位にのみ存在する場合は、特殊型とする。特殊型には、多発アフタ型、盲腸虫垂限局型、直腸型、胃・十二指腸型などがある。疾患パターンとして合併症のない炎症型、瘻孔形成を有する瘻孔形成型と狭窄性病変を有する狭窄型に分類する。

■治療

本症を完治させる根本的な治療法は現時点では確立されていない。治療の目的は病気の活動性をコントロールして寛解状態をできるだけ維持し、患者のQOLを高めることである。そのために薬物療法、栄養療法、外科療法を組み合わせて、栄養状態を維持し、症状を抑え、炎症の再燃・再発を予防することにある。治療にあたっては患者にクローン病がどのような病気であるかを良く説明し、患者個々の社会的背景や環境を十分に考慮し、治療法を選択する。

(1)内科的治療
・寛解導入療法
栄養療法(経腸栄養療法または完全静脈栄養)または薬物療法を行う。 栄養療法には経腸栄養と完全中心静脈栄養がある。栄養状態の改善だけでなく、腸管の安静と食事抗原による刺激を取り除くことで症状、消化管病変の沈静化が認められる。経腸栄養療法は、成分栄養剤や消化体栄養剤が用いられる。完全中心静脈栄養は高度な狭窄がある場合や広範囲な小腸病変が存在する場合などに用いる。薬物療法としては軽症例では5-アミノサリチル酸製薬、また、中等症以上では副腎皮質ステロイド薬が用いられる。肛門病変に対して抗菌剤が用いられることもある。難治例では抗TNFα受容体拮抗薬(レミケードまたはヒュミラ)が使用される。血球成分除去療法が行われることもある。

・寛解維持療法
在宅経腸栄養療法や5-アミノサリチル酸製薬、また、ステロイド依存例では免疫調節薬がよく使用される。寛解導入に抗TNFα受容体拮抗薬(レミケードまたはヒュミラ)が使用された例では、計画的維持投与が行われる。

・痔瘻に対する治療
腸管病変に対する治療と併行して、抗菌薬の投与や、膿瘍に対する切開排膿、シートンドレナージなどの外科的処置が必要となることも多い。

(2)外科的治療
外科治療の目的は、愁訴の原因となる合併症に外科的処置を加え、患者のQOLを改善することにある。
・絶対的適応:腸閉塞、穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症、癌合併
・相対的適応:症状を伴う狭窄(内視鏡的拡張術が有効な場合もある)、膿瘍、内瘻、外瘻のほか発育障害や内科治療無効例、肛門周囲膿瘍、排膿の多い有痛性痔瘻など

■予後

クローン病の手術率は10年で70.8%、一生涯ではほとんどすべての患者さんで一回は手術が必要になり、再手術率も5年で28%と報告されているが、近年の治療の進歩により、将来、手術率や再手術率が低下していくことが期待されている。現時点では、臨床的寛解であったとしても、多くの患者さんで病気は緩徐に進行し、狭窄等の合併症を来すと考えられている。従って、臨床的に寛解であっても定期的な病変の評価は重要と考えられている。

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情報提供者
研究班名 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班
研究班名簿   
情報更新日平成26年12月23日