結節性多発動脈炎(指定難病42)

けっせつせいたはつどうみゃくえん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「結節性多発動脈炎」とはどのような病気ですか

動脈は血管の太さから、大型、中型、小型、毛細血管に分類されます。結節 性多発動脈炎は、この内の中型血管の動脈壁に 炎症壊死 を生じる疾患です。動脈は全身の諸臓器に分布していますので、皮膚、筋肉、関節、脳神経、肺、腎臓、腸、心臓、など多彩な臓器に症状を呈します。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

令和3年度にこの疾患で医療受給者証をお持ちの方は全国で2,186(令和3年度)名でした。

3. この病気はどのような人に多いのですか

発症する年齢は40~60歳に多く、平均年齢は53歳です。頻度は低いですが、小児期にも発症が見られます。男女比は1:1で男女差はありません。発症しやすい素因などについてははっきりわかっていません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

肝炎ウイルス(とくにB型肝炎ウイルス)や他のウイルス感染の後に発症する方もいらっしゃいますが、多くの患者さんでは原因は不明です。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝的要素はほとんどないと考えられています。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

38℃以上の高熱、体重減少、高血圧、紫斑や皮膚潰瘍、筋肉痛・関節痛、四肢のしびれ、脳出血・脳梗塞、胸膜炎、尿蛋白や尿潜血陽性、腎機能低下、腹痛・下血、狭心症・心筋梗塞など様々な症状がおきます。特に重い症状としては、腎不全、腸出血、脳出血・脳梗塞、などがあります。検査所見では 炎症反応 の上昇や貧血がみられます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

治療の目標は、血管の炎症を完全に消失させて、その状態を維持することです。基本的には経口の副腎皮質ステロイド(ステロイド)の内服により治療を行います。腎臓・消化器・心臓・脳などに病変がある重症例には、ステロイドに加えて、免疫抑制薬を併用します。免疫抑制薬としてはシクロホスファミドが最初によく使われます。また重症例でない場合でもステロイドで効果不十分であれば、シクロホスファミドやアザチオプリンなどの免疫抑制薬が追加されます。
また一旦病気の勢いが抑えられたあと、それを維持するための治療法としても、やはりステロイドと免疫抑制薬が使われますが、その場合にはアザチオプリンやメトトレキサート(保険適用外)がよく使われます。これらの治療でも十分抑えられない重症の患者さんに、 血漿交換療法 や生物学的製剤の投与が保険適用外でおこなわれることもあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

病気の原因も不明であり、病気の勢いを抑えることが治療の主目的になります。十分に病気の勢いを抑え、臓器障害が進行するのを防ぐことができれば、日常生活をほとんど普通に送ることができる可能性もあります。また病気の勢いも自然に強くなることも弱くなることもあり、これは患者さんごとに全く違うため、なかなか予想ができません。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

基本的には日常生活を普通に送ることができます。しかし、病気の勢いが治療により十分抑えられていても、身体に負担のかかるようなことで病気が悪化する可能性があります。規則正しい生活と食事を維持してください。なお、ステロイドは急に服用をやめると、体の中のステロイドホルモンが不足し、倦怠感,吐き気,頭痛,下痢,発熱,血圧低下などの症状が出現し,命にかかわる場合もあります。長期に服用中のステロイドを急にやめないでください。場合によっては血圧が低下しショック状態になることもありますので十分な注意が必要です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

(資料)
2015-2016年度合同研究班による血管炎症候群の診療ガイドライン (日本循環器学会が公開しているガイドライン。結節性多発動脈炎については50-53ページを参照)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_h.pdf
抗リン脂質抗体症候群・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症・結節性多発動脈炎・リウマトイド血管炎の治療の手引き2020
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0466/G0001264
(関連リンク)
日本リウマチ学会 疾患の解説を提供
日本薬学会 知っておきたい薬の常識等一般向けに役立つ情報を提供
日本薬剤師会 くすりに関する最新情報や過去の緊急安全性情報、副作用情報、くすりQ&A(薬局で買った薬の有効期限 他)等を提供

 

情報提供者
研究班名 難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班 
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)