急速進行性糸球体腎炎(指定難病220)

きゅうそくしんこうせいしきゅうたいじんえん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「急速進行性糸球体腎炎」とはどのような病気ですか

腎臓のろ過装置である糸球体に 炎症 がおこる病気を糸球体腎炎とよび、蛋白尿や血尿が出現します。糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気を急速進行性糸球体腎炎といいます。腎生検の所見は、多くの糸球体に半月体という細胞の増殖する構造物が観察され、 壊死 性半月体形成性糸球体腎炎とよばれています。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

毎年2,400人から2,700人の急速進行性糸球体腎炎の患者さんが新たに発症していると推定されています。わが国の腎生検件数の約7%をしめています。また、わが国で新たに透析治療を始める患者さまの原因となる腎臓の病気のなかで、5番目に多い病気です(1番多い病気は糖尿病性腎症、2番目に多い病気は腎硬化症です。)

3. この病気はどのような人に多いのですか

小児から高齢者までみられますが、中高年に多い傾向にあります。近年、患者さんの高齢化がすすんでおり、その平均年齢は69歳です。性別はやや女性に多い傾向があります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

急速進行性糸球体腎炎にはいくつかのタイプがあり、それぞれ異なった原因でおこると考えられています。代表的な原因として、血液の細胞である好中球が所有している 酵素 に対する抗体とよばれる蛋白(抗好中球細胞質抗体、ANCA)や糸球体の基底膜に対する抗体(抗糸球体基底膜抗体)などとの関連性が明らかとなってきました。これらの免疫系の異常が関係し、腎臓をふくめた全身の小型の血管に強い炎症が起こると推察されています。また慢性糸球体腎炎の経過中やSLEという膠原病などの経過中に発症する場合や、細菌やウィルス感染の経過中に発症する場合もあり、腎臓では糸球体を中心に炎症が起こります。

5. この病気は遺伝するのですか

急速進行性糸球体腎炎は遺伝しません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

腎臓の症状としては、目にみえる血尿が出現することや尿量が減少することがあります。健康診断で発見される患者さんもいます。病気のなり始めには、微熱、だるさ、食欲がないなどの全身の症状がみられます。病気が進行すると、吐き気、息苦しさ、痰や便に血液が混じる、皮膚の出血、意識の低下などが出現します。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

この病気をおこした原因を治療することが治療の基本になります。腎臓だけではなく全身の強い炎症を治療するために、副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬などを使います。病勢が強い場合にはステロイド大量療法をおこなうことがあります。また感染症などが原因の場合には、抗生物質などの治療が優先される場合もあります。病気の原因となる抗体を除去するために、血液成分を交換する治療法( 血漿 交換)や、リンパ球を除去する薬剤(リツキシマブ)による治療を行うこともあります。進行した腎不全の状態であれば、透析や腎臓移植など、腎代替療法と呼ばれる治療を併用します。食事療法として、病気のなり始めには、タンパクや塩分の制限、カロリーの摂取が必要です。尿量が減少しているときには水分の制限も必要となります。専門医にご相談することが重要です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

予後 が悪い腎臓の病気の一つですが、早期に発見し治療を開始すれば、病気の進行を止めることができます。また、一時期血液透析が必要になったとしても、治療により血液透析を中止できることがあります。発見が遅れてしまうと、継続的な透析や腎臓移植など、腎代替療法と呼ばれる治療が必要となります。経過中に肺出血を併発し、酸素投与などの呼吸管理を必要とすることがあります。
一方一度傷んだ腎臓は完全にもとに戻るのは難しいため、慢性腎臓病としての治療が必要になる場合が多いです。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

退院後は引き続き通院が必要であり、定期的に診察と検査を受けてください。副腎皮質ステロイドなど処方された薬剤の服用をかかしてはいけません。急速進行性糸球体腎炎はいったんよくなった後に、病気が再び悪くなることがあり、これを再燃とよびます。もし病気が再燃した場合には、早く発見して治療をはじめることが必要です。また、副腎皮質ステロイドなどの免疫を抑える薬剤の合併症として特に感染症の予防およびその治療がとても大切です。安定した時期の治療として、慢性腎臓病としての一般的な管理、適切な食事療法、特に塩分の制限などがすすめられています。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

特発性半月体形成性腎炎

 

情報提供者
研究班名 難治性腎障害に関する調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)