球脊髄性筋萎縮症(指定難病1)
1.「球脊髄性筋萎縮症」とはどのような病気ですか
球脊髄性筋萎縮症とはSpinal and Bulbar Muscular Atrophy: SBMAの訳であり、Kennedy病と呼ばれることもあります。脳の一部や脊髄の 運動神経 細胞の障害により、しゃべったり、飲み込んだりするときに使う筋肉や舌の筋肉、さらには手足の筋肉が萎縮(やせること)する病気です。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
正確な頻度はわかっていませんが、日本全国で2000~3000人くらいの患者さんがいるものと推定されます。
3. この病気はどのような人に多いのですか
男性のみが発症し、女性は無症状あるいは生活に支障のない極軽度の運動機能低下をきたすにとどまります。通常30~60歳ごろに発症することが多いとされています。
4. この病気の原因はわかっているのですか
男性ホルモン(アンドロゲン)を受け取るアンドロゲン受容体という蛋白質の遺伝子に変異があることがわかっています。アンドロゲン受容体の遺伝子の中にはCAGという暗号(核酸)の繰り返しがあり、その数が正常の人では36個以下ですが、患者さんでは38個以上に増えています。
5. この病気は遺伝するのですか
アンドロゲン受容体の遺伝子はX染色体という性染色体の中にあります。変異遺伝子を持った男性が発症しますが、たとえ変異遺伝子を持っていても女性は発症しない(保因者)、あるいは生活に支障のない極軽度の運動機能低下をきたすのみです。この理由は、病気の発症に男性ホルモンが深く関わっているからと考えられています。患者さんの子供が男性の場合は発病しません。患者さんの子供が女性の場合は、必ず変異遺伝子の保因者となります。保因者の女性から生まれた男性は1/2の確率で病気になり、女性の1/2は保因者になります。
(用語:保因者(ほいんしゃ)遺伝子 変異 をもっているが、発症していない場合をいう。)
6. この病気ではどのような症状がおきますか
しゃべりにくい、食事の際にむせやすい、顔がぴくつく、手足がやせて力が入らないといった症状が中心です。また、男性ホルモンの作用が多少低下するため、乳房が大きくなることもあります。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
男性ホルモンの分泌を抑えるリュープロレリン酢酸塩が進行抑制治療として承認されています。HAL医療用下肢タイプを用いた歩行運動リハビリの保険適用が承認されています。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
症状はゆっくりと進行します。40歳代くらいで発症する人の場合、10年程度の経過でむせやすくなり、15年程度の経過で車イス生活になることが多いようです。むせが強くなると、食べ物が誤って気管に入り肺炎をおこしやすくなります。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
手足を適度に動かすことは、廃用性萎縮の予防となり重要です。またむせやすい場合、水分にとろみをつけるなど食形態の工夫を行うことが、誤嚥性肺炎の防止につながります。
(用語:廃用性萎縮(はいようせいいしゅく)筋肉を使わないことで生じる筋の萎縮のこと。)
(用語:誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)食べ物や唾液などが気管に入ってしまい起きる肺炎のこと。)
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
ケネディ病(Kennedy’s disease)
11. この病気に関する資料・関連リンク
SBMAの患者会が結成されています(https://sbma.jp/)。