ネイルパテラ症候群(爪膝蓋骨症候群)/LMX1B関連腎症(指定難病315)
1.ネイルパテラ症候群(爪膝蓋骨症候群)/LMX1B関連腎症とは
ネイルパテラ症候群(爪膝蓋骨症候群)は爪(形の異常)、肘関節(変形)、膝蓋骨(小さいあるいは無い)、腸骨(突起がみられる)を4つの特徴とする遺伝性疾患です。しばしば腎臓病を合併します。
爪、肘や膝、腸骨などの変化を伴わないにもかかわらず、ネイルパテラ症候群と同様の腎臓病だけを呈する場合もあり、これをLMX1B関連腎症と呼びます。
2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
海外の報告では5万人に一人とされていますが、国内での報告件数からはそれよりも稀と考えられます。本邦での正確な頻度は不明です。
3.この病気はどのような人に多いのですか
発症について人種差などは報告されていません。遺伝的要因で起こることから家系内での発症する場合があります。
4.この病気の原因はわかっているのですか
ネイルパテラ症候群とLMX1B関連腎症はいずれもLMX1Bという遺伝子の変異が原因であることがわかっていますが、この遺伝子に変異が見つからない患者さんも報告されています。
5.この病気は遺伝するのですか
顕性遺伝(優性遺伝)形式をとる遺伝病であり、ご両親のどちらかがこの病気をお持ちの場合には2分の1の確率でお子さんに遺伝します。ただ、突然 変異 により家族内で初めて発症する場合もあります。また同じ変異を持つ家系内の患者さんでも一人一人症状や重症度が異なることがあります。
6.この病気ではどのような症状がおきますか
ネイルパテラ症候群では爪の形の異常や、膝蓋骨がないなどの膝の異常、肘関節の運動制限などが見られるほか、レントゲンでの腸骨に突起が見られることもあります。このうちの1つあるいは複数の症状のみを呈する場合がありますが、爪の異常はほぼ全例で認められます。また緑内障や眼圧上昇が一般集団より高頻度に、またより若年でみられます。約半数の患者さんで腎臓の病気を合併します。腎臓病の所見としては蛋白尿や血尿がみられるのみの場合もありますが、蛋白尿が高度な場合や、腎機能が悪化して末期腎不全となる例も報告されています。
LMX1B関連腎症はネイルパテラ症候群で認められる腎臓病だけを発症するもので、腎臓以外の臓器に症状はありません。
7.この病気にはどのような治療法がありますか
ネイルパテラ症候群における爪、膝、肘関節の異常に対しては 特異的 な治療法はありません。鎮痛薬や装具(ブレースといいます)の装着を要することがあります。また一部の患者さんで関節症状や緑内障に対して手術療法が必要になる場合があります。また腎症に対しては腎機能に応じた慢性腎臓病の治療が行われます。
8.この病気はどういう経過をたどるのですか
爪、膝、肘関節の異常は年齢により軽快することはありません。腎臓病の程度は患者さんによって様々で、一部の患者さんでは末期腎不全へと進行します。特に蛋白尿の程度が重い場合には腎機能が低下するリスクが高いため注意が必要です。
9.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
関節の異常がある場合には運動の制限などが必要になる場合があります。また腎臓病の合併の有無について検診等により定期的に尿検査を受けることをお勧めします。尿検査で異常があることを指摘された場合には、腎臓の機能に関してさらなる検査が必要になります。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
・ネフローゼ症候群
・巣状分節性糸球体硬化症