肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)(指定難病229)

はいほうたんぱくしょう
 

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肺胞蛋白症の医療費助成の対象となる条件を教えて下さい。

肺胞蛋白症の患者さんが、医療費助成を受けるための認定基準を満たすためには、まず肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性/遺伝性)としての確実な診断を受けていることが前提条件となります。原則、胸部HRCT画像で特徴的な所見を満たしていること、気管支鏡検査において気管支肺胞洗浄液所見または肺生検(気管支鏡での生検や外科的肺生検)による病理組織学的所見で特徴的な所見を満たしていることが肺胞蛋白症の診断となります。その上で自己免疫性肺胞蛋白症では、特異自己抗体である抗GM-CSF自己抗体が陽性であることが必要です。先天性/遺伝性肺胞蛋白症の診断には、遺伝子変異の特定等で先天性/遺伝性と診断される病歴が必要です。
重症度は、症状および安静時の動脈血酸素分圧によってⅠからⅤ度に5段階に分類されます。この重症度はこれまで疫学調査や治療研究等で用いられてきた簡便なものです。認定の基準としては、更に、明らかに肺線維症合併、反復・継続する感染症合併、先天性/遺伝性肺胞蛋白症の場合、重症度に1度加えて管理区分重症度と読んでいます。管理区分重症度はⅠ〜Ⅵ度の6段階に分類され、管理区分重症度Ⅲ以上の患者さんが医療費助成の対象になります。なお、重症度分類等で一定以上に該当しない患者さんであっても、高額な医療を継続することが必要な患者さんについては、医療費助成の対象となります。

続発性肺胞蛋白症と診断されたのですが、自己免疫性肺胞蛋白症とは異なるのでしょうか?医療費助成の対象になりますか?

続発性肺胞蛋白症の患者さんは、肺胞蛋白症となる原因の病気があると診断されます。特に日本では血液の病気である骨髄異形成症候群の患者さんが多いです。残念ながら続発性肺胞蛋白症の患者さんは肺胞蛋白症の医療費助成の対象となりません。しかしながら、特異自己抗体である抗GM-CSF自己抗体が陽性であれば自己免疫性肺胞蛋白症の診断となりますので、重症度によって医療費助成の対象になります。抗GM-CSF自己抗体を測定してみて下さい。自己免疫性肺胞蛋白症の診断となりましたら、申請ができますので、住所地所轄の担当機関から申請書類を取り寄せ、難病の指定医療機関にいる指定医の先生に申請書を記載してもらって下さい。

治療として肺洗浄が必要と言われました。肺洗浄とはどんな治療ですか?他に治療法はないのですか?

肺洗浄は、現在、自己免疫性肺胞蛋白症患者さんの標準的な治療法です。肺洗浄は、気管支鏡を用いた肺の一部を洗う「区域洗浄法」と全身麻酔にて行う片方の肺を全部洗う「全肺洗浄法」があります。肺を洗う洗浄液は、主に体液に近い生理食塩水を体温に合わせて37度加温して用いて行います。区域洗浄では1回で約500mlから1000ml洗浄し、全肺洗浄では1回で20Lから30L洗浄を行います。洗浄により肺胞に貯留した蛋白様物質を体外に排出させます。洗浄量が大きく差がありますので、全肺洗浄がより効果があると考えられます。
肺胞蛋白症患者さんの他の治療としては、去痰薬の吸入や内服があります。他にGM-CSF吸入療法(サルグラモステイム、モルグラモステイムの2種類)がありますが、2023年11月の段階では保険適応外の治療になります。

普段の生活でどのような事に注意すれば良いですか?仕事は続ける事ができますか?運動はしても良いでしょうか?

肺胞蛋白症の患者さんは、免疫異常を起こしていると考えられています。つまり、健常な人と比べると様々な感染症にかかる可能性があります。普段の生活では、感染症にかからないように注意をする必要があります。一次予防としては、外出後の手洗い、うがいを励行してください。人混みに行く場合はマスク着用などで感染対策も重要です。家庭菜園などの土いじりは、ある種の感染症の危険因子とも考えられていますので、なるべく行わない方が良いかもしれません。
感染症の予防として、インフルエンザ、新型コロナのワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種はうけておいた方が良いでしょう。
また肺胞蛋白症の患者さんに特徴的な病状として、体の中の酸素量が少ない割に自覚症状が乏しいことがあります。そのため、自分で自覚している以上に体の中の酸素量が少ないことがあります。したがって、体の中の酸素量が少ない患者さんでは、普段の生活でどのくらい酸素量が減るかを把握し、酸素量が少なくならないような日常生活の工夫、注意が必要です。必要であれば在宅酸素療法を行いましょう。
仕事は続けることは十分に可能ですし、肺胞蛋白症の患者さんの多くが仕事を続けています。しかしながら、粉塵暴露があるような作業に従事している患者さんは、可能なら職場の配置転換をしてください。粉塵暴露が肺胞蛋白症と関係がある患者さんもいます。
運動は、筋力維持のためにも、可能な範囲で行った方が良いです。仕事も運動も体の中の酸素量に十分に注意して行って下さい。

病気は治るのでしょうか?

自己免疫性肺胞蛋白症については、自然軽快(自然に良くなる)することがあります。しかしながら、完治しているかどうかは現在の医学ではわかっていません。自然軽快した患者さんが数年後に再発することもあります。従いまして、必ず、通院を自己中断せず、定期的な通院、検診をすること強く薦めます。
先天性/遺伝性肺胞蛋白症については、それぞれの患者さんによって、大きくことなります。主治医の先生に十分に説明を受けて下さい。

肺胞蛋白症患者は喫煙や飲酒をしてもいいでしょうか?

喫煙は肺胞蛋白症を悪化させ、治療効果を弱らせる可能性があります。禁煙で肺胞蛋白症が改善する患者さんもいます。従いまして、強く禁煙をおすすめします。飲酒については通常量の飲酒であれば問題ありません。

肺胞蛋白症患者は飛行機に乗れますか?

飛行中機内では気圧が下がり、機内の空気中の酸素量も少なくなるため、乗客の体の中の酸素量も減ります。在宅酸素療法を受けておられる患者さんが飛行機にのる必要がある場合には、旅行会社、航空会社より診断書を取り寄せ、主治医に相談して機内で酸素を吸入する手続きを取りましょう。一部の国際線などでは患者さん自身の酸素ボンベ等の持ち込みを禁止している場合もあります。旅行会社、各航空会社のWEBサイトなどをご参照ください。またマスク着用などによる機内における感染対策も重要です。普段酸素流入をされていない患者さんも、息切れを認める場合には、飛行機に乗る前に念のため主治医にご相談下さい。

肺胞蛋白症患者はどんな病気が合併しやすいでしょうか?

自己免疫性肺胞蛋白症の最も重要な合併症は感染症です。ノカルジア症、抗酸菌症(結核、非結核性抗酸菌症)、アスペルギルス症などの慢性感染症の報告があります。その他、間質性肺炎・肺線維症の合併が報告されており、肺胞蛋白症の難治化の要因となっています。
先天性/遺伝性肺胞蛋白症では、遺伝子変異により間質性肺炎や肺線維症、低γグロブリン血症、呼吸促迫症候群など合併することがあります。まだまだ解明されていない病態ですので主治医に十分に説明を受けて下さい。

 

情報提供者
研究班名 びまん性肺疾患に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年10月(名簿更新:令和5年6月)