徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症(指定難病154)
1. 「徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症」とはどのような病気ですか
睡眠時の脳波検査で特徴的な脳波異常をもつ、幼小児期にみられるてんかんです。この脳波異常とともに知的・ 認知機能 の退行や行動面の問題などがみられます。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
小児てんかんの0.2-1.0%との報告がありますが、正確な患者数や発症率、罹患率は不明です。日本では約500人前後と推定されています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
発症年齢は、報告では2ヵ月~12歳頃までさまざまですが、4~5歳頃に最も多く出現します。世界での人種差はありません。
4. この病気の原因はわかっているのですか
このてんかんをもっている人の30-60%で画像検査に異常がみられます。周産期血管障害、皮質形成異常、多小脳回、水頭症などを伴っていることがあります。また、一部の患者ではSRPX2、ELP4、GRIN2A遺伝子の変異が最近になりみつかっています。しかし、この病気の原因はまだ確定できていません。
5. この病気は遺伝するのですか
この病気の患者さんの子どもが必ずこの病気を発症するというわけではありません。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
けいれんや意識が障害される発作など、いろいろなタイプのてんかん発作がみられます。また、学習面での低下や言葉の障害、発達障害を含む行動変化、運動障害などが、程度はさまざまですが生じてきます。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
抗てんかん薬を使用します。抗てんかん薬以外にもステロイド療法や食事療法が有効であったという報告があります。各種治療に関わらず神経心理学的な遅れが進むあるいは停滞し、てんかん発作の原因となる大脳の病変がみられる場合には外科的治療が有効かもしれません。運動・高次機能の障害に対しては、リハビリテーションが役に立つ場合があります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
多くの患者さんでは、睡眠中に持続する特徴的な脳波異常は思春期頃までになくなります。しかし、一部の患者さんでは、脳波所見が改善した後も発作が残る場合があります。また、発作がなくなり脳波が改善しても、行動障害や知的レベルの低下、言語聴覚障害、運動障害などが残ることがあります。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
発作症状だけではなく、発達や運動・高次脳機能についても注意して経過をみていくことが必要です。
知的面・行動面の問題に関しては、学校関係者や周囲の方にも病気を理解してもらい、障害特性に応じた対応が必要になることがあります。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
睡眠時棘徐波活性化を示す(発達性)てんかん性脳症
11. この病気に関する資料・関連リンク
1)Bureau M、 Genton P、 Dravet C、 Delgado-Escueta A、 Guerrini R, Tassinari CA、 Thomas P、 Wolf P編集、井上有史監訳。てんかん症候群-乳幼児・小児・青年期のてんかん学-第6版。中山書店、2021, pp.283-306.
2)日本てんかん学会編。稀少てんかんの診療指標、pp64-66、診断と治療社、東京、2017。
3)てんかん症候群 診断と治療の手引き.日本てんかん学会(編).メディカルレビュー社,2023;89-92.
てんかん専門医施設
http://square.umin.ac.jp/jes/senmon/senmon-list.html