三尖弁閉鎖症(指定難病212)

さんせんべんへいさしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

三尖弁閉鎖症と言われました。三尖弁を開く手術をすれば治るのでしょうか?

先天性心疾患のなかには閉鎖した弁を開くことで治療できる病気があります。たとえば肺動脈閉鎖症(膜様閉鎖)では、肺動脈弁が膜状に閉じてしまっていても、それ以外の構造は問題なくできている場合があります。その場合は肺動脈弁を手術やバルーンカテーテル治療で開いてあげれば、ほぼ健常な心臓になります。しかし、三尖弁閉鎖症はそういうわけにはいきません。三尖弁は筋性に閉じていることが多く、三尖弁以外にもいろいろな構造異常をともなっています。肺へ血液を送る役割をしている右心室は小さく、痕跡的なことすらあります。本来の右心室の働きを期待することはできません。三尖弁閉鎖症では使える心室は左心室のみで、単心室の一つのタイプと考えて、フォンタン手術を目指すことになります。

フォンタン手術をすれば健康な人と同じになれるのでしょうか?

正常な心臓には2つの心房と2つの心室がありますが、単心室症や三尖弁閉鎖症などでは十分な働きができる心室が一つしかありません。フォンタン型手術はこのような病気に対して、血液の流れ方を整列して、チアノーゼをなくすために行う手術であり、病気そのものを治すではありません。しかし、フォンタン型手術を行う条件が整っていて無事手術を終え、手術後の経過も良好な患者さんは、チアノーゼがなくなった分運動能力も良くなり、健康な人にかなり近い日常生活を送ることができるようになります。フォンタン型手術が普及したことによって三尖弁閉鎖症の患者さんの多くが成人に達し、正規の仕事に就き、軽めのスポーツを楽しんだりしている患者さんが増えていることは事実です。
一方でフォンタン型手術後にはいろいろな問題が起こる可能性もあります。特に手術から10年、20年と年数が経つにつれて、心不全、不整脈、うっ血肝、血栓症などの合併症が出てくることがあります。しかし、薬物療法、カテーテル治療等の内科的治療は年々進歩し、心不全、不整脈、血栓症それぞれの分野で、新しい薬や治療法が開発されています。大切なことは、専門の外来を定期的に受診して診察や検査を受け、信頼のおける主治医の先生と十分相談し、心配なことがあるときは早期に対応していくことです。小児循環器外来のみでなく、最近では、成人になった先天性心疾患患者さんのための専門の外来を開設している病院も増えています。そのような専門外来を受診することをお勧めします。(https://www.jsachd.org/specialist/list-facility/)

中学校や高校で体育や運動部活動にはどのくらい参加していいですか?

フォンタン型手術を無事終えると、チアノーゼがあった術前に比べて運動能力はあがりますが、それでも健常者と比べると低いことが知られています。その主な原因は運動時に心室が1回で送り出せる血液量に制限があることと、心拍数の上昇が不十分な場合があることです。どのくらいの運動ができるかは個人個人で異なりますが、無理なく参加できる自分にあった運動量を見いだしていくことが大切です。そのためには、患者さん本人や学校の先生が、こんな症状が出て来たら休息を取るべきだという限度を知っておいて、その手前で運動を中止することです。具体的には、動悸、胸痛、頻脈、運動強度に見合わない呼吸促迫・呼吸困難、吐気、めまい・失神等です。必ず患者さん本人が必要に応じて休息をとれる環境を設定しておくようにします。適度な水分補給を行いながら運動することも大切です。いい方を変えれば、このような限度を守れば、適切な運動トレーニングは決してリスクの高いものではありません。適切な運動は有酸素運動能力だけでなく、末梢の筋肉ポンプ機能を増強してフォンタン型患者さんの循環を改善することも知られています。必要以上の運動制限を行わないようにすることも大切なのです。
運動がきっかけとなって不整脈が出る場合は十分な運動制限が必要な場合もあり、治療方針について主治医とよく相談するようにします。また、ペースメーカが植込まれているときや血栓予防の薬を飲んでいるときは、衝撃や外傷を受けやすいスポーツ、他人と接触の多いスポーツは禁止した方がよいでしょう
 フォンタン手術が未施行で(または施行後でも)、チアノーゼが残っている場合は、その程度にもよりますが、運動能力は低く、運動制限が必要となります。経皮的酸素飽和度、血液検査、負荷心電図、心エコー、6分間歩行距離などの検査結果を総合して、どの程度の運動なら参加できるか、主治医とよく相談していくことが必要です。

フォンタン手術が終わったあとはどのような薬を飲むのでしょうか?

フォンタン型手術後は静脈血がうっ滞しやすい状況になり、血栓症をおこしやすくなります。特に年数が経つにつれて、その率は高くなり、20%の患者さんが血栓症を起こしたという報告もあります。その予防のためにワルファリンという薬を飲むことが多いですが、ワルファリンは人によって効き具合に差があり、納豆やブロッコリー、海藻、クロレラなどの食べ物で効きが悪くなるなどの問題もあり、定期的に血液検査を行って効き具合を確かめる必要があります。また、女性が妊娠したときは禁止する必要があります。ワルファリン以外ではアスピリンを内服する場合もありますが、ワルファリンとどちらが効きが良いのか、まだ結論が出ていない面もあります。最近、成人の心房細動の患者さんでは、昔からのワルファリンに代えて新しい血栓予防の薬が使われるようになってきました。フォンタン術後患者さんでも、今後それらの新しい薬も検討されるようになると思われます。
血栓予防以外の薬としては、心不全に対する血管拡張剤、ベータ遮断薬、利尿薬や、不整脈に対する様々な抗不整脈薬を内服することがあります。それぞれの状況に応じて主治医の先生と十分に相談することが重要です。

妊娠、出産はできるのですか?

フォンタン型手術を受けた女性や、チアノーゼが残っている女性の妊娠・出産に関しては難しい問題があります。確かに無事出産した患者さんもいらっしゃいますが、危険を伴うことも事実です。妊娠中期になると母体の循環血液量は普段の約1.4倍に増え、心臓がそれに耐えられるかどうか、チアノーゼがあると胎児が順調に育つかどうかなど、いろいろな問題があります。ワルファリンを内服している場合、妊娠は禁止です。個人個人で状況は異なりますので、妊娠・出産については成人先天性心疾患診療を専門とする医師とよく相談して下さい。

本疾患の関連資料・リンク

① 小児慢性特定疾病情報センターホームページ
https://www.shouman.jp/disease/details/04_31_038/
② 日本成人先天性心疾患学会ホームページ総合・連携認定施設一覧
https://www.jsachd.org/specialist/list-facility/
③ 心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_akagi_ikeda.pdf

 

情報提供者
研究班名 先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上と生涯にわたるQOL改善のための総合的研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年3月(名簿更新:令和4年7月)