HTLV-1関連脊髄症(HAM)(指定難病26)

えいちてぃーえるぶい-わんかんれんせきずいしょう(はむ)
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

HTLV-1キャリアになるとHAMを発症するの?

HTLV-1に感染している人をHTLV-1キャリアと言います。全国に約100万人のキャリアがいると推定されていますが、全員がHTLV-1関連脊髄症(HAM)や成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)を発症するわけではありません。HAMの発症はごく一部の人に限られます。日本では約3000人のHAM患者がいると推定されますので、およそキャリア1000人に3人がHAMを発症していると推定されます。どんな人がHAMになりやすいかについては、遺伝的体質やウイルスの亜型により発症頻度に差があることが報告されています。しかし、絶対にHAMを発症しないとか、必ずHAMを発症するというような差ではありません。むしろ、後述するようにHAMでは体内でHTLV-1ウイルス量が増加しており、HTLV-1ウイルス量が多いキャリアはHAMを発症する危険度が高いと言えます。

病院に行くタイミングは? どこの病院、何科に行ったらいいの?

HAMは脳神経内科の病気です。自覚症状があれば少しでも早く脳神経内科の医師の診察を受けましょう。HAM患者の少ない地域の医療機関では、HAMという疾患を思い浮かばないこともあるかもしれませんが、HTLV-1キャリアであることがわかっていて、自分でHAMを疑っての受診であれば、そう告げることで早期の診断につながる可能性があります。症状によっては泌尿器科や整形外科を受診し、他の病名がついてしまうこともあるかもしれませんが、HTLV-1キャリアであることがわかっている場合は、同様にHAMの可能性について尋ねてみてください。

症状の軽いうちは治療しないで様子を見ていて良いですか?治療を受けるタイミングは?

HAMは通常、徐々に症状が進行するため、発病早期は日常生活にあまり支障を感じないこともあります。しかし、脊髄で起こっている炎症は早期ほど強く、炎症の程度がその後の症状の進行の早さや、麻痺の進行具合と関連していることがわかっています。炎症の程度を知るためには脳脊髄液の検査が必要です。
脳脊髄液の検査により炎症の程度が高いと判断された場合は、ステロイドやインターフェロンαなどの積極的な治療が必要です。早期診断と早期の治療開始が症状の進行抑制につながり、長期的に見てとても重要です。一方で、脳脊髄液の検査により炎症程度が低いと判断された場合は、対症療法や継続的なリハビリテーションで経過を見ても良いでしょう。

家庭でできるリハビリテーションはありますか?

HAM患者さんでは、下肢の筋肉がこわばって硬くなっていることが多いので、ストレッチを行うことが効果的です。壁を背にして立ち、かかとをつけた状態で、つま先部分に雑誌などを置き、その上につま先をのせ、背屈させた状態を1分間くらい保つなどしてください。ふくらはぎの筋肉を十分に引き伸ばすことによって、こわばってかかとがつかなくなる状態、いわゆる尖足(せんそく)を予防する効果が期待できます。また、椅子に座った姿勢からの立ち上がりなど、下肢の筋力を保つトレーニングも重要です。また、体幹の筋肉を鍛えることも有効で、両手を前に組み背筋を伸ばして体を前後・左右に倒すなどの運動も効果的です。転倒等に十分注意して、危険のない範囲で行いましょう。担当のリハビリの先生に相談して、自宅で出来るリハビリの内容についても指導してもらいましょう。なお、2023年よりHAL医療用下肢タイプが保険適用となりました。HALを活用したリハビリ治療は病院で受ける必要があります。

 

情報提供者
研究班名 HAMならびに類縁疾患の患者レジストリによる診療連携体制および相談機能の強化と診療ガイドラインの改訂班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)