甲状腺ホルモン不応症(指定難病80)

こうじょうせんほるもんふおうしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

甲状腺の病気としてバセドウ病とか橋本病というのを聞いたことがありますが、甲状腺ホルモン不応症との関係あるでしょうか?

バセドウ病も橋本病も免疫の異常が原因の病気です。これに対し、甲状腺ホルモン不応症は遺伝子変異による病気ですから、バセドウ病や橋本病とはまったく違う部類に属します。ただ、甲状腺ホルモン不応症では、脈が速い、甲状腺が腫れるといったバセドウ病によく見られる症状がある患者さんも多く、また、甲状腺ホルモン不応症、バセドウ病の両方とも血液中の甲状腺ホルモンは増えますので、正しい診断を受けることが重要です。一方、橋本病は患者さんが非常に多い病気なので、甲状腺ホルモン不応症の患者さんが橋本病も合併していることは十分考えられます。橋本病が原因で甲状腺ホルモンが足りない状態になることもありますが、治療の際、甲状腺ホルモン不応症を合併しているかどうかは経過観察や治療にはとても重要なことです。まれではありますが、甲状腺ホルモン不応症にバセドウ病が合併することもあります。

癌との関係はありますか?

甲状腺癌との関連は確認されていません。

感染しますか?

感染症ではありません。

どんな生活をしたら良いですか?何を食べたら良いですか?

脈が速い患者さんは無理な運動などをしないでください。そのほかには、この病気であるからといって生活や食べ物に特別な制限はありません。

患者さんに子供がいた場合、検査は必要ですか?

患者さんの子供さんは2分の1の確率で同じ病気になります。そのため、甲状腺機能検査を受けることをお勧めします。子供さんの検査結果が患者さんのものに似ていれば甲状腺ホルモン不応症と考えられます。この病気で一番問題になるのは、バセドウ病と間違えられて適切でない治療をされてしまうことです。子供さんが甲状腺ホルモン不応症にかかっていることをあらかじめ知っていれば、このような不適切な治療を避けることができます。また、脈が速くなるという症状を伴う場合、放置しておくと心房細動という心臓の病気の原因になることが危惧されます。この病気であることが分かっていたら、脈拍を抑える薬を服用することにより、心房細動を予防できる可能性があります。

診断は難しいのですか?

診断基準や診断のためのアルゴリズムが制定されていますが、中には診断が難しい場合もあります。甲状腺ホルモン不応症の診断は、血液の甲状腺機能検査で「不適切TSH分泌症候群」という特徴的な結果が出るところから始まるのですが、他の原因のために一見「不適切TSH分泌症候群」のように見えてしまう結果が出ることがあります。また、本当に「不適切TSH分泌症候群」であった場合も、「TSH産生下垂体腺腫」という別の病気でも同じ検査結果になるため、しっかり区別をしなくてはならないのですが、これは専門家にとっても簡単ではないことがあります。区別ができない場合は、甲状腺ホルモン不応症と「TSH産生下垂体腺腫」の両方の可能性を考えながら経過をみることになります。

 

情報提供者
研究班名 ホルモン受容機構異常に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)