ベーチェット病(指定難病56)

べーちぇっとびょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

ベーチェット病が疑われたとき、どの先生に診てもらうのがいいのですか。専門の病院、医師を教えてください。

ベーチェット病の症状は多様であり、受診が必要な診療科も患者さんの病状により違ってきます。また、複数の診療科に受診が必要な場合もあります。厚生労働省 難治性疾患克服事業 ベーチェット病に関する調査研究班のホームページ 厚生労働省ベーチェット病研究班内に地域別の診療医リストを掲載しています ( 診療医リスト

病気は遺伝しますか。結婚はできるのでしょうか。

ベーチェット病の病因には環境素因とともに遺伝素因も関与していますが、決して一つの遺伝子変異で発症する疾患ではありません。口腔内アフタができやすいと多少の体質的な遺伝はあるかもしれませんが、病気として遺伝するわけではありません。実際、日本での家族内発症の報告はまれです。結婚などにさいして、病気の遺伝を大きな問題とする必要はないと思います。
もし発症年齢が10代、家族内にベーチェット病の方がいる場合にはA20ハプロ不全症(指定難病325)というベーチェット病によく似た遺伝性の病気の可能性があります。

ぶどう膜炎の症状があるのですが、失明する可能性はどれくらいありますか?

ベーチェット病のぶどう膜炎は両側性に生じることが多く、以前はぶどう膜炎が生じた場合の失明率は30~40%という数字も出ていましたが、1990年代以降のシクロスポリンの導入により治療成績は向上しましたが、それでも約20%の方が失明にいたるとされてきました。しかし、2007年からTNF阻害薬であるインフリキシマブが使われるようになり、これまでシクロスポリンなどが効かなかった患者さんでさえ、発作が抑えられるようになりました。現在は、TNF阻害薬としてインフリキシマブとアダリムマブの保険適応が認められており、ベーチェット病患者さんの視力予後は大きく向上しました。

HLA-B51が陽性です。ベーチェット病との関係を教えてください

HLAとはhuman leukocyte antigenの略称で、和訳するとヒト白血球抗原になります。白血球の血液型と考えていただくと理解しやいかと思いますが、実際には白血球以外にも存在しています。臓器移植のときには、臓器提供者と移植を受ける人の間でこのHLAのタイプが一致していることが重要ですが、HLAはもっと広くその人の免疫反応を規定しています。そのためHLAの特定のタイプと関連する疾患がいくつか知られています。ベーチェット病はその代表的なものであり、日本のみならず諸外国でもHLA-B51の患者さんが多いことで知られています。日本人でHLA-B51を持っている人は15~20%ですが、ベーチェット病患者では50~60%にのぼり、特に眼病変を有する方や神経症状を発症する方ではその比率が60~70%になるとされています。しかし、この数字を計算してみますと、確かにHLA-B51陽性の人は他の人より5~10倍ほどの確率でベーチェット病になりやすいという計算になりますが、それでも1,500人に一人程度にすぎません。診断基準上も参考所見という位置づけにあります。病気の原因を考える上では、HLA-B51そのものあるいはそれに関連した遺伝子の役割は非常に重要だと思われますが、決してベーチェット病の発症を既定する因子ではありません。

日常生活上の注意点は何ですか?

この病気は発作性に症状が出現する病気です。身体的なストレス、寒冷などの気候の変化が発作につながることがありますので、疲れをためない、規則正しい生活を送ることなどが基本的な事項になります。
口腔内の衛生を保つこと、虫歯や歯肉炎、扁桃炎などをきちんと治療しておくことも重要です。これらの病変によりしばしば病気の悪化を経験します。また、虫歯の治療中にも一過性に口腔内アフタ性潰瘍が多発するなどの増悪をみることがあります。こうした口腔内衛生の重要性は、口腔内に存在する連鎖球菌という種類の細菌と病気との関連の研究からも明らかにされようとしています。
喫煙も特に神経症状の出現に関連しているという成績が示されており、その点からも控えた方がよいと考えられています。

妊娠や分娩は可能でしょうか?

前提条件はベーチェット病の状態が落ち着いて、免疫抑制薬など胎児に影響する薬剤を服用していないのであれば、妊娠、出産が大きな問題にはならないと考えられています。ベーチェット病患者の妊娠に関していくつかの論文が報告されていますが、妊娠中や出産後にベーチェット病の病状が悪化する確率は妊娠していないときと同じとされています。薬剤としては、コルヒチンは添付文書上、妊娠時に禁忌ですが、家族性地中海熱などの研究を見てみると比較的安全との成績も示されており、ベーチェット病診療ガイドラインでは「有益性投与(治療によるリスクとベネフィットを勘案して判断)」と記載されています。

 

情報提供者
研究班名 ベーチェット病に関する調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和5年6月)