全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)

ぜんしんせいえりてまとーです
 

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血液検査をしたら、抗核抗体が陽性といわれたのですが?

この病気の診断は、症状と検査の組み合わせで行います。症状がなく、検査だけ異常という人は、現時点では心配ありません。抗核抗体はこの病気のほぼ100%の人で陽性になる大切な検査ですが、最近検査法が鋭敏になり、正常な人でも時々陽性になる人がいます。健康な若い女性では5~10%にこの検査が陽性になったとする報告もあるくらいです。ただし、抗核抗体は全身性エリテマトーデス以外の疾患でも陽性になることがありますから、どこか症状がある場合には、それ以外の疾患がないかを含めたきめ細かい診断が必要です。

自覚症状があまり無いのですが、すぐに入院して、治療を受けなければいけませんか?

自分で感じられる症状と、実際の病気の重さが食い違うことはあります。重い内臓障害、たとえば、腎炎などでは自覚的な症状が全くないこともあります。このような場合、入院して検査により病気の重症度を出来るだけ正確に把握し、早急にきちんと治療しなければならないことがあります。逆に、例えば関節が痛くて身動きも出来ない、といったケースでも、薬剤の反応が良好と考えられれば、外来で治療を継続することもあります。

子供を作ることが出来ますか?

以前は、子供を作らないほうが良いとされていましたが、現在では、内科、産科、小児科の経験、知識が深まり、ある条件を満たせば出産ができるようになりました。個人個人の状態によって異なりますが、少なくとも6ヶ月以上病気の活動性がないこと、そしてできれば腎障害などの重篤な内臓病変がないことなどが条件です。また、服用している薬についても、妊娠前後には調整が必要なことがありますので妊娠を計画される時点で主治医の先生とご相談することをお勧めいたします。また、妊娠、出産により母体のSLEの病状が不安定になることがあります。また流産、早産などのリスクは、健康な人よりは高いとされています。妊娠、出産に関しては、主治医とよく相談の上、各科の連携がとれた医療機関で慎重に経過を見てもらうべきと思います。

日頃どんなことに気をつけたらいいでしょうか?

病気を悪くするきっかけ(誘因)は、紫外線、風邪などのウイルス感染、怪我、外科手術、妊娠・出産、ある種の薬剤などいくつかのものが知られています。そのなかでも、特に、それぞれの人によって特に強く病気を誘発するものがあります。自分の病気の始まりのこと、再燃時のことをもう一度思い返し、その前後で起こったことを考え、注意すると良いでしょう。一般的に、規則正しい生活、充分な休養、安静を心がけるようにして、精神的にも、身体的にもストレスをなるべく避けることです。また、日によって体調が変わりやすいのもこの病気の特徴です。その日、その日の体調に合わせて、生活パターンを変える努力は大切です。

全身性エリテマトーデスという診断で入院し、既に2ヶ月経過しているのに未だに大量のステロイドを服用しています。多すぎるのではないのでしょうか?

ステロイドは、炎症を抑える作用と免疫を抑制する作用を期待して投与します。全身性エリテマトーデスは免疫応答が非常に強く、時により炎症も強くでることがありますから、ほとんどの場合、ステロイドを主として使って病勢をコントロールすることが不可欠と考えられています。どの臓器が障害されているかによりステロイドの量と投与期間が変わります。腎臓の炎症など重症の場合には、普通の体重の女性には30~60mgの中~高用量のステロイドを2週間から1ヶ月位使い、徐々に投与量を減らしていくことが多いです。しかし、もっと多くのステロイドが必要な時もあります。その場合、パルス療法と称して3日間、点滴で投与することもあります。ステロイドには副作用に気をつける必要があります。一般的には、短期間であれば、高用量でも安全ですが、長期間では低用量でも副作用が問題になりますので、必要性とのバランスが難しいところです。どうしても大量、長期のステロイドが必要な病態では、ステロイドの投与を少なくする意味で、他の免疫抑制薬を併用することが行われることもあります。一人一人の症例はかなり異なりますので、これに合わない場合もあります。
主治医に現在のステロイド投与の理由を聞いて理解し、納得することも重要と思います。

「深在型エリテマトーデス」と言われたのですが、どのような病気ですか?

深在性エリテマトーデスは、皮膚の深いところまで、特に皮下脂肪組織まで炎症がおよぶ皮膚の発疹です。円板状エリテマトーデスと同じように、それだけが現れる場合と全身性エリテマトーデスなどの膠原病の部分症状として現れる場合があります。比較的まれな皮膚症状です。膠原病を診ることが出来る皮膚科医か内科のリウマチ専門医が対応する疾患です。まずは、全身性エリテマトーデスやその他の膠原病が合併しているか否かのチェックが必要で、合併していればその治療を優先させます。皮膚症状だけであれば、深在性エリテマトーデスに対して治療しつつ経過を観察し、全身の症状が現れないことを確かめます。深在性エリテマトーデスの治療に関しては、皮膚の深いところまで侵されるので、炎症が治まったあとに陥没性の形体を呈することがあります。ですから整容上のことを考えれば、できるだけ早期に治療を開始することが望ましいとされています。治療には全身性の疾患より少ない量のステロイド薬などを使います。

一度発症すると皮膚等の症状は長期現れたままでしょうか?

全身性エリテマトーデスの皮膚の症状は、必ずしも病気全体の活動性と一致しないこともありますが、多くは病気の状態によって出現したり、なくなったりします。

全身性エリテマトーデスになると平均的に何年生きることができるのでしょうか?

病気となったときの年齢や、一人一人の病気の重症度により異なりますので、残念ながらはっきりお答えするデータがありません。しかし、ステロイドが使われる昭和40年より前には、診断されてから5年以内に半数の方がなくなっていたのが、現在の治療では、5年以上生存している方が95%以上になっています。

全身性エリテマトーデスになって20年以上になります。ここ3週間、発病した時と同じ症状(顔・指のむくみ・体重増加)特に指のこわばり感・むくみがひどく強皮症になったのではないかと心配していますがどうしたら良いでしょうか?

全身性エリテマトーデスということですが、腎臓や心臓の過去の様子や現在の状態が分かりませんので、簡単にはお答出来ません。むくみは、腎臓や心臓の障害でも起こるからです。しかし、再燃や異なる膠原病の発症を含めて、重篤な状態になる可能性もありますから、なるべく早く現在の主治医を受診されることをおすすめします。

 

情報提供者
研究班名 自己免疫疾患に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和5年6月)