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血液・凝固系疾患分野ヘモクロマトーシス(平成22年度)

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1. 概要

ヘモクロマトーシスは鉄代謝異常による疾患です。鉄は生体に必要不可欠 な元素である一方で、過剰に存在するとラジカル産生を容易に引き起こし、心不全、不整脈、肝不全、内分泌・発育障害、発がんなどの重篤な臓器障害を呈する ため、生体内で鉄は厳密に制御されています。しかし、何らかの原因によってこの調節が崩れ、異常に増加した鉄が諸臓器の実質細胞に過剰に沈着し、その結 果、細胞傷害、組織障害、臓器機能不全をもたらす病気がヘモクロマトーシスです。

2. 疫学

欧米では遺伝性ヘモクロマトーシスが非常に多いのですが、本邦では極め て稀です。近年、本邦においてヘモジュベリン、トランスフェリン受容体2ならびにフェロポルチン1遺伝子異常を持つ家系の存在が明らかとなりましたが、未 だ正確な患者数は把握できていません。逆に、本邦では輸血後鉄過剰症がほとんどを占めますが、その正確な患者数も明らかではありません。

3. 原因

その成因から大きく特発性と二次性に分けられます。特発性とは、生体内 の鉄代謝に関与する各種の遺伝子(HFE、ヘモジュベリン、ヘプシジン、トランスフェリン受容体2、フェロポルチン1)の異常に基づく遺伝性ヘモクロマ トーシスを主に指します。また、二次性とは、もともと鉄代謝に関しては異常がないのですが、例えば頻回で大量の赤血球輸血に起因する輸血後鉄過剰症や、大 量の飲酒などによる鉄の過剰摂取などが原因となって引き起こされるものを指します。

4. 症状

組織学的に鉄の沈着が認められても、症状が現れるまでに20~40年を要するため、40~60歳での発症が多くみられます。臨床的には肝硬変、糖尿病、皮膚色素沈着、心不全などが主徴として認められます。肝不全や心不全は死亡原因の主なものになります。

5. 合併症

これらの症状に加え、甲状腺・副甲状腺・下垂体の機能低下や性機能低下などから性欲減退、陰毛・体毛の脱落、無月経、睾丸萎縮などが現われます。さらに中指骨及び手関節、膝蓋、肩及び腰部に有痛性の関節症も高頻度に現われます。肝細胞癌を合併することもあります。

6. 治療法

ヘモクロマトーシスの治療は、臓器に沈着した鉄を除去する治療と、鉄沈 着により生じた臓器障害に対する対症療法とに分けられます。鉄の除去方法には、瀉血(しゃけつ:体内から血液を大量に抜く方法)と鉄キレート剤(鉄排泄促 進薬)投与のふたつがあります。瀉血は最も効果的でありかつ安価です。瀉血による血液喪失によって軽度の貧血状態になりますが、これにより造血が亢進する ために臓器に沈着していた鉄が血液中に動員され、結果臓器中の鉄の減少が期待できるものです。一方、鉄キレート剤投与による鉄そのものの積極的な排泄療法 は、鉄を捕捉する薬剤デスフェリオキサミンが使用されていました。皮下注射ないしは静脈注射で投与し、鉄の尿中への排泄促進を図るものですが、薬剤の半減 期が短いため、十分な効果を得るためには連日の持続投与が必要です。近年、半減期が長く、1日1回の経口投与による持続的な鉄排泄(糞中排泄)効果を発揮 するデフェラシロクスの適用が認められ、広く使用され始めています。

7. 研究班

ヘモクロマトーシスの実態調査と診断基準作成班