奇形症候群分野|プラダー・ウイリー症候群(平成22年度)

ぷらだー・ういりーしょうこうぐん
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1. 概要

1956年内分泌科医のプラダーと神経科医のウイリーが合同で発表した 内分泌・神経・奇形症候群である。染色体15q上の遺伝子異常による視床下部の機能障害のため、満腹中枢、をはじめ体温、呼吸中枢などの異常が惹起され る。頻度は、10,000から15,000人に1人とされ、人種差はない。

2. 疫学

国内で2000人程度の患者数。

3. 原因

染色体15q上の刷り込み遺伝子の障害で、欠失型、片親性ダイソミー 型、刷り込みセンターの異常など3つの病因が考えられている。現在では、メチレーション試験により、99%以上の確定診断 が可能である。遺伝子異常は、 15番染色体q11-13領域の欠失(70%)、同領域の父性ダイソミーUPD(25-28%)、同領域のメチル化異常(2-5%)とされる。病因の違い で多少の臨床症状に差は出るが、原則同様と考えてよい。

4. 症状

内分泌・神経・奇形症候群であり、内分泌学的異常(肥満、低身長、性腺 機能障害、糖尿病など)、神経学的異常(筋緊張低下、特徴的な性格障害、異常行動)がみられる。他に、小さな手足、アーモンド様の目、色素低下など奇形徴 候を示す。臨床症状の特徴は、年齢毎に症状が異なることである。乳児期は、筋緊張低下による哺乳障害、体重増加不良、幼児期から学童期には、過食に伴う肥 満、思春期には二次性徴発来不全、性格障害、異常行動、成人期には、肥満、糖尿病などが問題となる。

5. 合併症

重篤な合併症は、糖尿病、呼吸障害、側弯症である。ほかに、眼科的異常 (近視、遠視、斜視など)、痛覚鈍麻に伴う皮膚の引っかき、などである。患者と家族を生涯にわたり悩ませるのは、性格障害、異常行動である。これは、成育 暦が異なる多くの患者で同様の傾向を示すことから遺伝子異常に起因するものと推察されている。

6. 治療法

現在まで治療の根幹は、(1)食餌療法、(2)運動療法、(3)成長ホ ルモン補充療法、(4)性ホルモン補充療法、(5)精神障害への対応、の5つである、(1)から(4)までの治療は、ほぼ世界的に認容されている。(5) の関しては、今後の課題である。この中で、成長ホルモン療法は、患者のQOL改善に大きな効果を示している。

7. 研究班


インプリンティング関連疾患調査研究班
プラダー・ウイリー症候群研究班