免疫系疾患分野|インターロイキン1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)欠損症(平成22年度)

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1. 概要

インターロイキン1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)欠損症は、 2003年にPicardらによって初めて報告された疾患で、Toll様受容体(TLR)のシグナル伝達を担う分子IRAK4遺伝子の異常により生じる常 染色体劣性遺伝形式の疾患である。本邦でも数例の症例報告が為されているが、実態は明らかではない。IRAK4欠損症及び関連分子であるMyD88欠損症 は、類似した表現型としてグラム陽性菌(特に肺炎球菌や黄色ブドウ球菌)による感染症が重症化(敗血症、細菌性髄膜炎)することが報告されている。

2. 疫学

現時点では、国内での症例数の詳細は不明である。

3. 原因

TLR あるいはIL-1R が刺激により活性化されると、アダプター分子である骨髄分化因子88(MyD88)が結合する。さらに、IRAK4、IRAK1が誘導され、IRAK4 はIRAK1 をリン酸化し、以降下流のキナーゼカスケードの働きでNF-κB の活性化に至る。IRAK4 遺伝子の異常により、TLR およびIL-1Rのシグナル伝達障害が起こり、自然免疫応答低下と特にグラム陽性球菌に対する易感染性を示す。

4. 症状

生後まもなくより膿瘍形成や重症細菌感染症を繰り返す。その多くは S.pneumoniae によるものであり、より頻度は落ちるがS. aureus によるものもある。グラム陰性菌による重症感染を呈することも時にあるが、寄生虫感染症、真菌感染症、ウイルス感染症が重症化する傾向にあるとの報告はな い。

5. 合併症

上記の通り、細菌感染症の合併により、敗血症、細菌性髄膜炎等を合併し、時に致死的である。

6. 治療法

γ-グロブリンの補充療法および抗生剤の予防投与が行われる。また、肺炎球菌ワクチン接種も行われているが、効果がないとの報告もある。

7. 研究班

インターロイキン1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)欠損症の全国症例数把握及び早期診断スクリーニング・治療法開発に関する研究班