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消化器系疾患分野、免疫系疾患分野新生児、乳児食物蛋白誘発胃腸炎(平成22年度)

しんせいじ、にゅうじしょくもつたんぱくゆうはついちょうえん
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1. 概要

本症(新生児、乳児食物蛋白誘発胃腸炎(N-FPIES))は、これま でほとんど知られることがなく、医学教育、専門書においても触れられることはなかったが、1995年ころから症例報告が急激に増加ししつつあり、問題と なっている。牛乳由来ミルク、米、大豆、小麦などの特定の食物蛋白を摂取して消化管炎症を起こす疾患である。摂取開始して数週間後に発症する場合もあり、 食物が原因であるとは気付かれにくい。よく知られている食物による即時型アレルギーとは違い、特異的IgE抗体の関与はなく、診断に寄与しない。急性期の 確定診断法がないため、診断は困難を極め、治療開始が遅れるなどして重大な合併症を引き起こす場合がある。

欧米には消化管における同様の疾患として、新生児-乳児期においては、Food protein induced enterocolitis(FPIES)とFood protein induced proctocolitis (FPIPもしくはAC)がある。しかしN-FPIESとこれらの間には明確な差があることが判明し、かつ欧米においてFPIESはまれな疾患である。増 加しつつあるN-FPIESについてはあらたな疾患概念構築が求められている。
本症の現時点での最良の診断治療指針を広く公開する必要とともに、急性期の確定的な診断法の開発、わが国に特有であるN-FPIESの疾患概念確立が急がれる。

2. 疫学

東京都の全数調査において、発症率0.28%が得られた。これが日本全国で同様の発症率として計算すると、年間約2800名の発症と概算される。

3. 原因

食物による即時型アレルギーとは違って、特異的IgE抗体は診断に寄与しない。炎症の本質についての理解は進んでいない。欧米のFPIESについては、消化管炎症部位のTNF-alpha産生が認められ、好酸球増加はないことなどが報告されている。

当研究班の調査では、血液、消化管粘膜、便粘液において好酸球増加が著明であることが発見された。かつミルク蛋白特異的リンパ球刺激試験の高い陽性率から、炎症の中心は細胞性免疫が担っていると推定された。

4. 症状

嘔吐、下痢、血便、イレウスなどの消化管症状が83%の患者に認められる。しかし17%は非特異的症状のみが長期に続き、診断は難しく手遅れとなりやすい。消化管穿孔、ショック、成長発達障害なども少なくない。

5. 合併症

死亡例、壊死性腸炎、消化管破裂、消化管閉鎖、DICを起こした症例などが報告されてきた。このような不可逆的後遺症を残した例や死亡例が各都道府県数名ずつ存在している。

6. 治療法

原因食物が判明した場合、そのタンパク質を除去することで、症状の進行を止めることができる。炎症が長期にわたる場合には、抗炎症治療が必要となる。合併症を起こした場合にはその治療が必要である。

7. 研究班

新生児食物蛋白誘発胃腸炎(N-FPIES)の疾患概念確立、実態把握、診断治療指針作成に関する研究班