内分泌疾患分野|褐色細胞腫(平成22年度)

かっしょくさいぼうしゅ
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1. 概要

副腎髄質や傍神経節の腫瘍でカテコールアミンの過剰分泌を呈する疾患。 動悸、頭痛などの症状、高血圧、糖尿病をきたす。多くは良性腫瘍で手術による摘出で治癒するが、約10%は骨、肝などに転移する悪性褐色細胞腫である。治 療法は未確立で進行性に増悪する。初回の手術時の組織検査で良・悪性を診断するのが困難で、1年から30年後(平均5年)に局所再発、遠隔転移を生じ悪性 と判明する。悪性の早期診断法と有効な治療法の確立が必要な難治性疾患である。

2. 疫学

1997年の厚生省の調査(名和田班)による推計患者数は約1000人 であったが、2009年の厚生労働省「褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」研究班の調査では推計患者数は約3000人と3倍に増加している。頻度の少 ない希少疾患に分類される。2009年の調査では男女差はなく、平均54歳で10歳以下から80歳以上まであらゆる年齢に見られた。悪性は11.0%、副 腎外性(パラガングリオーマ)17.3%、多発性12.7%、家族性10.0%であった。

3. 原因

副腎髄質あるいは傍神経節の腫瘍による。腫瘍の発生原因は不明である。近年、コハク酸脱水素酵素の遺伝子異常を約30%に認めることが報告され、遺伝的素因の関与が示唆されているが、遺伝子変異と臨床病型との関連の詳細は未解明である。

4. 症状

高血圧の他、頭痛、動悸、発汗過多、顔面蒼白、振戦、悪心、便秘、体重減少、狭心症様の胸痛など多彩な症状を示すが、この病気に特有ではない。

5. 合併症

発作性または持続性の高血圧、不整脈、耐糖能低下や糖尿病、高脂血症が 多くの患者でみられる。運動や食事などの刺激により急激に血圧が上昇する高血圧クリーゼや心筋梗塞様発作も認める。悪性褐色細胞腫では多発性の骨、肝、肺 転移、心不全、腸閉塞、重篤な感染症を合併することがある。

6. 治療法

良性例は腫瘍の手術的摘出で治癒する一方、悪性例は有効な治療法がな い。欧米では131I-MIBG内照射が施行されるがわが国では保険適応はなく、有効性も未確立である。抗がん剤の化学療法(CVD治療)の効果は個人差 が大きく全体として限定的である。実際には手術、MIBG、化学療法、骨転移に対する外照射などが適宜組み合わせて実施されている(2009年の調査)。

7. 研究班

厚生労働省難治性疾患克服研究事業「褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」研究班(2009年)、「褐色細胞腫の診断及び治療法の推進に関する研究」研究班(2010-2011年)が「副腎ホルモン産生異常症の調査」研究班と協力して取り組んでいる。