IgG4関連多臓器リンパ増殖症候群(平成21年度)

IgG4かんれんたぞうきりんぱぞうしょくしょうこくぐん
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1. 概要

IgG4陽性形質細胞増殖を主体とした、多臓器に及ぶリンパ増殖病変である。2001年のHamanoらによる自己免疫性膵炎(硬 化性膵炎)の報告以後、全身の様々な病変において高IgG4血症、組織IgG4陽性形質細胞増殖が報告されている。シェーグレン症候群の一亜型とされてき たミクリッツ病や、従来キャッスルマン病と診断されていた症例の一部も、本疾患に属する事が分かってきており、正確な診断のための診断基準および治療ガイ ドラインの作成が急務である。

2. 疫学

約1,000人

3. 原因の解明

大部分の症例が多クローン性の高ガンマグロブリン血症およびリンパ球増殖を呈する事、Th2優位のサイトカイン増殖とTreg増加 により、アレルギー性の要因(高IgE血症、好酸球増多)やIgG4へのクラススィッチ、線維化などが引き起こされる事などが判明してきているが、根本的 な原因は未だ不明である。

4. 主な症状

発症する部位により症状は異なる。両側性の涙腺、耳下腺、顎下腺腫大を来す症例はミクリッツ病と呼ばれ、シェーグレン症候群の一亜 型として捉えられてきた。また一側性の慢性硬化性唾液腺炎はKüttner腫瘍と呼ばれてきたが、これも同様の病態である。更に、最初にIgG4の関与が 報告された硬化性膵炎をはじめとして、硬化性胆管炎、下垂体炎、Riedel甲状腺炎、間質性肺炎、間質性腎炎、肥厚性硬膜炎、前立腺炎、リンパ節腫大、 縦隔線維症、後腹膜線維症、炎症性大動脈瘤、冠動脈腫瘤性病変および(乳腺、肺、肝)などの炎症性偽腫瘍など多岐に渡る病態が報告されている。

5. 主な合併症

上記の如く、発症部位により様々な症状や合併症を呈しうる。本疾患に悪性リンパ腫が合併発症したという報告もある。しかし、本疾患を基盤として本当に悪性リンパ腫が発症しやすくなるか否かは、今後の課題である。

6. 主な治療法

ステロイド投与が初期には著効する事が知られている。一般にプレドニゾロン0.6mg/kgの初期投与量が用いられ、大多数の症例 に奏効する。しかし早期の減量や中止により再発再燃が起こる事も判明しており、投与量や漸減法および維持量等の確立のために、治療ガイドラインを作成する 必要がある。そのための基礎となる治療データが必要であり、前方視的な治療研究を計画している。

7. 研究班

新規疾患, IgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患(IgG4+MOLPS)の確立のための研究班