肥大性皮膚骨膜症(平成21年度)

ひだいせいひふこつまくしょう
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1. 概要

太鼓ばち指、長管骨を主とする骨膜性骨肥厚、皮膚肥厚性変化(脳回転状頭皮を含む)を3主徴とする遺伝性疾患である。2次性(続発性)として肺がんなどの胸腔内疾患によるものが知られている。

1868年、Freidreichが、3徴を有する症例を最初に記載した。その後、種々の名称で報告されてきた当該疾患は1935 年Touraineらによって本症の概念が明らかにされ、Touraine-Solente-Gole症候群と呼ばれるようになった。現在ではVague の提唱したpachydermoperiostosisの名称が一般によく用いられている。

2. 疫学

不明。本邦における報告例は2008年12月までにおよそ200例

3. 原因

2008年原因遺伝子が同定されるまでは原因不明の疾患であった。Uppalらは、パキスタン人血族結婚家系から、染色体上に遺伝 マーカーが完全一致する領域を見出し、最終的に第4染色体長腕に位置するNAD(+)-dependent 15-hydroxyprostaglandin dehydrogenase(HPGD)遺伝子に変異を見出した。当該遺伝子はプロスタグランディンE2の分解酵素をコードしており、その欠損により患者 には過剰のPGE2が残存し尿中に排泄される。

4. 症状

当該疾患はTouraineにより3型により分類され、この分類が現在も用いられている。
完全型 complete form: 皮膚肥厚、ばち状指、骨膜性骨肥厚、脳回転状頭皮などのすべての症状を有する
不完全型 incomplete form: 脳回転状頭皮を欠く
初期型: 骨変化が欠如または頚度で皮膚肥厚のみを有する
多くの症例では思春期に発症し、10数年進行した後に症状が安定する。

5. 合併症

多岐にわたるのが特徴である。
多汗症(96.6%)、四肢疼痛、関節痛(77.3%)、ざ瘡、湿疹、女性化乳房、粗毛症、易疲労性、思考力減退、自律神経症状、精神症状(3.9%)、貧血(22.7%)、胃粘膜巨大皺壁(9.2%)、胃・十二指腸潰瘍(54.8%)などが挙げられている。

6. 治療法

対症療法が試みられている。一時期関節症にコルヒチンが用いられたが、効果は十分ではなかった。最近では1例報告でビスフォス フェートと関節滑膜除去術などが試みられている。顔面皮膚皺壁や脳回転様頭皮には形成外科的なアプローチが試みられている。今のところ発症を遅らせるよう な治療法はない。

7. 研究班

肥大性皮膚骨膜症における遺伝形式を踏まえた新しい病型分類の提言と既存治療法の再評価