循環器系疾患分野|原発性リンパ浮腫(平成24年度)

げんぱつせいりんぱふしゅ
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1. 概要

リンパ浮腫には、原因が未解明の原発性と、癌手術におけるリンパ節隔清等による、後天的なリンパ路の障害によって引き起こされる2次性がある。いずれの場合も、四肢末梢からのリンパ流が障害されることにより、四肢に浮腫が現れ、皮膚の過伸展による疼痛のため歩行困難を呈する場合や、感染を伴った場合、四肢の切断に至ることもある。
確立された根治的治療法は無く、対症療法的に弾性ストッキングの着用やリンパドレナージマッサージがあり、また、利尿剤や抗血小板療法が用いられることもある。日本ばかりでなく、世界中で多くの患者が強い悩みを抱えているのにもかかわらず、有効な治療法が確立されていない疾患である。

2. 疫学

原発性リンパ浮腫の原因は未解明で、その患者は、2009年では5千人1)と推定されている一方、癌外科の進歩に伴い、癌手術症例数は増加してきている。このため、癌術後患者におけるリンパ浮腫が増加し、2004年、上山は日本における上肢リン パ浮腫患者を5万人、下肢リンパ浮腫患者を7万人と推定している2)。この数は年々増加していると考えられる。

3. 原因

原発性リンパ浮腫の原因は未解明であるが、家族性に発症した場合、FoxC2、VEGFR-3、SOX18等の遺伝子異常が指摘されているが確定的ではない。
2次性リンパ浮腫の原因は、癌手術におけるリンパ節隔清やフィラリア虫体等によるリンパ流の障害が考えられる。また、肥満による下肢からの還流不全も、リンパ浮腫に影響する因子と考えられる。

4. 症状

四肢の難治性、進行性腫脹、冷感、疼痛などを呈する。原発性においては、成人になってから突然、あるいは外傷や感染などを契機に顕在化する場合もある。2次性においては、癌手術などの契機と考えられる要因からしばらく時間が経過してから(6カ月から1年程度)、症状が顕在化する場合もある。

5. 合併症

四肢の難治性進行性腫脹、冷感、疼痛、抑うつなどを呈する。

6. 治療法

100年以上におよぶ治療法開発の経緯があるが、現在に至ってさえも有 効な治根治的治療法が確立されていない。症状の悪化が懸念され、重症例を除いては、あまり外科的治療法は行われておらず、対症療法的にリンパドレナージマッサージや弾性ストッキングの着用が、また、利尿剤や抗血小板療法が用いられることもある。最近、症状の改善には、単独療法に比べ、理学療法と弾性ストッキングの併用が有意に有効であるとされている。
公表前の私見であるが、2010年から行ってきた前向き無作為介入研究の結果、薬剤と自宅理学療法による複合療法により、原発性および2次性リンパ浮腫の一部の患者に完全寛解例を見出した。特に、発症1年未満の場合は、原因の如何にかかわらず高率に治療が奏功することが分かってきたため、リンパ浮腫に対する治療は早期介入が有効であろうと考えている。

7. 研究班

リンパ浮腫治療へのbreakthroughを目指してⅡ(福田研究班)
1)厚生労働省難病研究班(2009):難病研究班報告 原発性リンパ浮腫
2)上山武史(2004):リンパ浮腫治療に対する社会認識の現状と今後の課題、リンパ浮腫診療の実際-現状と展望、文光堂、130.