神経系疾患分野|稀少難治てんかん(平成24年度)

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1. 概要

乳幼児・小児期にてんかん性脳症を来たし重篤な脳機能障害と発達の停止・退行を来す希少難治てんかんは、その激烈な臨床経過から破局てんかんとも呼ばれ、臨床的には、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、ウエスト症候群、ドラベ症候群、ドーズ症候群、遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、レノックス・ガストー症候群、睡眠時てんかん放電重積状態をもつてんかん脳症、タッシナリ症候群、ラスムッセン症候群、ランドクレフナー症候群、スタージ・ウエバー症候群、片側けいれん・片麻痺・てんかん症候群、アイカルディ症候群などに分類される。成因の多くは遺伝学的背景に基づく脳形成異常・神経機能異常と考えられるが、病因不明で既存の症候群分類にあてはまらない症例も少なくない。多くの症例が長期的には重度の発達障害など不良な予後をたどるため、生涯にわたる家族及び社会の負担は大きい。一方早期の診断とてんかん外科治療等による適切な対応により良好な予後が得られる場合もあり、最新の画像診断と遺伝子診断を組み入れた診断基準の確立と病因の解明及び有効な治療法の開発が求められている。

2. 疫学

我が国における患者数は5才以下の乳幼児で約5000人(活動性てんかんの10.2%)と推定されるが、学童期以降については本邦ではこれまで系統的な患者数調査は行われておらず明らかではないのが現状である。

3. 原因

病因として、皮質異形成、瘢痕脳、腫瘍性病変、結節性硬化症などの病理学的異常、あるいは遺伝子異常が確認される場合があるが不明なことも多く、免疫や炎症機序の関与も指摘される。病態の解明には、臨床的には神経画像(MRI、PET、SPECTなど)や頭蓋内脳波記録などによるてんかん原性病変の同定及び原因遺伝子の探索が重要で、一方外科摘出標本を用いた神経生理学的・病理学的研究や動物モデルによる基礎研究も、原因の解明と有効な治療法を開発するために必要とされる。

4. 症状

希少難治てんかんは、頻発するてんかん発作と発作間欠期の持続性脳波異常及び進行する脳機能障害を特徴とする。臨床症状としては、スパスム、強直発作、無動発作、脱力発作などのてんかん発作が頻発し、多くの症例では発症とともに発達が停滞し、長期的には発達の退行及び重度の発達障害に至る。脳波上、様々な形態の年令依存性全般性脳波異常、すなわち、新生児期にはsuppression-burst(大田原症候群)、乳児期にはhypsarrhythmia(ウエスト症候群)、幼児期にはslow spike-and-wave complex(レノックス・ガストー症候群)などを呈する。

5. 合併症

発作の改善が得られない症例では、重度の発達障害が最も重大な合併症となる。一方、発作の改善が得られ発達障害が軽度の症例であっても、様々な行動障害や学習障害及び精神障害を伴う場合が多い。また頻発する発作による誤嚥性肺炎や低栄養などの身体合併症及び突然死(Sudden Unexpected Death in Epilepsy: SUDEP)が問題となる。

6. 治療法

抗てんかん薬による内科治療が基本であるが、症例によっては、ビタミンB6投与、ACTH治療、ケトン食治療、あるいは免疫グロブリン療法などが行われる場合もある。皮質異形成などの局在性病変を伴う症例では、病変の切除を目的とした外科治療(切除外科)が適応となる。一方病変を認めない場合や両側性広汎性病変など切除外科の適応がない場合には、脳梁離断術や迷走神経刺激術などの緩和的外科治療が選択される場合もある。

7. 研究班

稀少難治性てんかんに関する調査研究 研究班