内分泌疾患分野|骨系統疾患におけるCNP治療適応疾患(平成23年度)

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1. 概要

骨系統疾患は骨・軟骨などの骨格を形成する組織の成長・発達・分化の障害により骨格の異常をきたす疾患の総称であるが、現時点で約400の疾患がある。CNPは骨伸長促進作用をもつ生理活性ペプチドであり、骨系統疾患に対する薬剤として期待されているが、モデルマウスによる前臨床試験において骨系統疾患のうち最も頻度の高い軟骨無形成症に対する有効性が確認されている。しかし、骨系統疾患の中にはCNP受容体の異常症(マロトー型遠位中間肢異形成症)のように、CNP治療抵抗性疾患の存在も想定されている。本研究は、多くの疾患が存在する骨系統疾患のうち、CNP治療が適応となる疾患を鑑別することを目的とする。

2. 疫学

骨系統疾患のうち、もっとも高頻度に認められる疾患は軟骨無形成症であり、一般的には約1〜2万出生に1人の頻度で発症するとされているが、CNP療法の効果が期待される。軟骨無形成症は小児慢性特定疾患に指定されており、成育医療センターによる平成18年度の全国調査では768名が登録されている。それ以外の疾患に関してはその頻度はより少なく、現在唯一想定されているCNP治療抵抗性疾患であるマロトー型遠位中間肢異形成症(CNP受容体異常症)の場合、海外で21家系の報告があり、本邦では最近1症例が遺伝学的に診断されている。

3. 原因

骨系統疾患はほとんどが単一遺伝子病である。近年の分子遺伝学の進歩によりその病因解明が飛躍的に進み、骨・軟骨代謝に関与する成長因子・転写因子・基質蛋白等、様々な分子をコードする遺伝子異常により発症することが明らかとなっている。最も頻度が高い軟骨無形成症は、FGF3型受容体の恒常活性型遺伝子変異により起こる。
しかし、一方で、原因遺伝子が未解明の疾患も未だ多く存在している。

4. 症状

疾患により多彩な病状をとり得るが、一般的に著明な骨伸長障害と、それに起因する低身長症を認める。軟骨無形成症では最終身長が男子で130cm、女子で120cmにとどまり、特徴的な四肢の伸長障害をきたす。

5. 合併症

骨・軟骨の形成不全による様々な合併症をきたし得る。ほとんどの疾患で腰痛、関節痛など、骨格系の失調が生じる。軟骨無形成症では、大後頭孔や椎弓の形成不全による脊椎管狭窄症を合併し、四肢麻痺等の重篤な神経症状をきたす場合がある。

6. 治療法

軟骨無形成症を中心に、整形外科的治療法である骨延長術がおこなわれ、現在の治療の中心となっている。骨延長術は創外固定器により固定された長管骨の中央部を切断し、固定部位間の距離を緩徐に広げることによって離断部の再生骨を引き延ばし、全体としての骨延長を図る方法である。創外固定器のタイプにはイリザロフ式(リング型)とディ・バスティアーニ式(片側式)がある。これらの治療は主に成長期におこなわれるため、肉体的苦痛のみならず、患者に多大な時間的制約や経済的負担を負わせることとなる。
また、一部で成長ホルモン治療が試みられているが、その効果に関しては決定的とはいえない状況である。

7. 研究班