眼科疾患分野|小眼球(症)(平成23年度)

しょうがんきゅう(しょう)
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1. 概要

小眼球(症)は先天的に眼球全体が小さい状態で、角膜、水晶体、網膜・硝子体などの発生異常に伴って眼球の発達が障害されて起こるものが多い。臨床的無眼球、極小眼球(重度小眼球)から軽度の小眼球まで、さまざまな程度がある。真性小眼球の大きさの定義として正常の眼球容積の2/3以下、すなわち眼軸長が年齢の正常の約0.87以下とする馬嶋の基準(1994年)がある。臨床では、小眼球症として眼軸:21mm未満(成人)、19mm未満(1歳)、角膜径:10mm以下(成人)、9mm以下(乳児)を目安に、左右差を重視して診断する。原因や病態に基づく診断基準は未確立である。

2. 疫学

欧米における頻度は出生数10万人に10~19人、我が国でも同等(約1万人に1人)の希少疾患で
ある。平成21年度に本研究班で実施した全国疫学調査(医療機関を受診した851例1254眼)では
患側:両眼性48%、片眼性52%、性別:女性54%、男性47%、受診年齢:0~9歳;50%、家族歴を7.2%
に認め、眼所見、全身所見、手術治療、視力などの小眼球(症)の実態が明らかとなった。

3. 原因

一部で原因遺伝子が発見されているが(PAX6, SOX2など初期発生に関与する転写因子遺伝子)、多
くは原因が明らかにされていない。子宮内感染(風疹症候群など)、薬物、アルコールなど、初期
眼球の発生における環境要因が原因となることもある。発症機序として初期眼球・眼杯形成障害、
前眼部間葉細胞の発生異常、水晶体発生異常、硝子体形成異常、胎生裂閉鎖不全などが挙げられる
が十分に解明されておらず、根本的な治療法は確立していない。

4. 症状

小児期より生涯にわたり、さまざまな視覚障害をきたす。重度の小眼球・合併異常および併発症をきたした例では重篤な視力障害を生じる。
平成21年度の全国疫学調査では、視力:光覚~0.02未満;34%、0.02~0.1未満;11%、0.1~0.3未満;9%、0.3以上;16%、測定不能・視反応不良;24%、測定不能・視反応良好;6%であった。

5. 合併症

角膜、水晶体、網膜硝子体、視神経にいたるまで多種多様な先天眼異常を合併し、その程度もさまざまである。染色体異常(13トリソミーなど)や全身疾患(CHARGE症候群、Hallermann-Streiff症候群など)、発達遅延の合併も高頻度である。また、小児期から成人期にいたるまで白内障、緑内障、網膜剥離などの併発症を高頻度に生じる。

6. 治療法

強度屈折異常を合併するため、早期より眼鏡の常用による弱視治療を行い、保有視力の発達を促す。白内障、緑内障などを伴う小眼球では、早期に診断して手術および適切な術後管理、訓練を行えば保有視力の向上が得られる。しかし治療基準は確立されていない。治療法がなく重篤な視覚障害をきたしている例では、乳幼児期からロービジョンケアを開始する必要がある。また重症例では義眼による整容治療を要する。保有視機能の保持のためには生涯にわたる合併症の管理が必要である。

7. 研究班

小眼球による視覚障害の原因を特定するための疫学調査と診断・治療基準の創成班