その他|進行性下顎頭吸収(PCR)(平成23年度)

しんこうせいかがくとうきゅうしゅう
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1. 概要

進行性下顎頭吸収(Progressive Condylar Resorption: PCR)は進行性の下顎頭の形態吸収変化とそれに伴う著明な同部の体積の減少と定義され、下顎枝高径の短縮・下顎後退などにより、前歯部開咬などを呈する病態であり、特発性下顎頭吸収(Idiopathic Condylar Resorption: ICR)とも言われるが、両者の明確な用法の区別はない。またPCRの患者は相対的に下顎が小さく後退位にあるため、単なる上顎前突症もしくは下顎後退症と診断され、不適切な歯科矯正治療を受けていることも多い。これらに加えて顎矯正手術による一期的な下顎の前方移動に伴う下顎頭への負担過重なども発症原因として指摘されている。

2. 疫学

当研究班が平成21年度に行った調査によると、性差は男:女=1:10であり、欧米諸国から報告されていた説を裏付ける結果が得られ、単純計算で最低でも1000余名の患者の存在が示唆された。また患者年齢分布は、合併疾患もなく特発的な10代、20代を中心とする若年例と、50代以降の自己免疫疾患併発例との概ね二相性の分布を示している。サンプリングし得た症例においては典型的骨粗鬆症のマーカーが高値を示しており、骨軟骨代謝異常の傾向が見られた。
 様々な診断基準が混在しており、診断基準の策定が望まれる。

3. 原因

原因は全く不明である。年齢や基礎疾患などの状態によるという説と、下顎頭にかかる異常な圧迫、牽引力などによるという説が有力である。また若年者の例では当初より低形成の例も報告されており、種々の症状が混在している可能性もある。血中エストロゲン濃度との関連を示唆する報告もある。

4. 症状

進行性の下顎頭の形態吸収変化とそれに伴う著明な同部の体積の減少と定義され、下顎枝高径の短縮・下顎後退などにより、前歯部開咬、すなわち前歯部で咬めない状況になる。

5. 合併症

相対的に下顎が小さく後退位にあるため、単なる上顎前突症もしくは下顎後退症と診断され、不適切な歯科矯正治療を受けていることが多く、かえって症状の進行をまねく場合がある。また前歯部で咬めないことから臼歯部に咬合力が集中し、咬合痛や顎関節部痛、異常な咬合力による外傷性の歯周病などをまねく。

6. 治療法

全く不明であるが、咬合位を安定化するとよいといわれている。すなわち適切なマウスピースの装着や、顎矯正手術などによる咬合改善などが考えられる。欧米では人工関節への置換術を行っている。

7. 研究班

「進行性下顎頭吸収の診断基準策定とその治療に関する研究」研究班