神経系疾患分野|ソトス症候群(平成23年度)

そとすしょうこうぐん
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1. 概要

ソトス症候群は胎生期・小児期に顕著な過成長、特徴的な顔貌、学習障害の中核となる3徴の他、行動障害、先天性の心奇形、新生児黄疸、腎奇形、脊柱側彎、てんかん発作など多様な症状を来す常染色体優性遺伝性疾患である。別名:脳性巨人症。

2. 疫学

本症の発生頻度は出生1万-2万人に1人程度と推定される。

3. 原因

染色体5q35に位置する「核内受容体結合SETドメイン保有蛋白質遺伝子(NSD1)」が染色体の微細欠失または点変異によってハプロ不全となることでソトス症候群が発症する。NSD1はヒストンの修飾や転写調節に関わると考えられるが機能の詳細は不明である。本邦ではNSD1領域微細欠失の頻度が諸外国と比して高く、NSD1領域のプローブを用いたFISH法による染色体診断が有効と考えられる。

4. 症状

本症の大多数に認められる中核の3徴は(1)胎生期、小児期の過成長、(2)特徴的体型・顔貌 [頭が大きく長頭、大きい手足、前額・下顎の突出、高口蓋、反モウコ様眼裂、両眼隔離]、(3)軽度から重度の学習障害である。

5. 合併症

3徴ほどに高頻度ではないものの本症に認められる症状・徴候には下記のものがある。
【中枢神経系症状】 けいれん、不器用さ、ぎこちない歩行、注意欠陥・多動、自閉症状、易刺激性、爆発性、衝動性、自傷、睡眠障害、頭部CT/MRI異常
【成長・骨格に関連する症状】 骨年齢促進、脊柱側湾、頭蓋骨早期癒合、関節過伸展、扁平足、内反足、合指症、漏斗胸、片側肥大、歯数不足
【胎生期・周産期・新生児期の症状】 母体の子癇前症、新生児期筋緊張低下、新生児期黄疸、新生児期哺乳不全、新生児期低血糖症、発育不全
【臓器奇形】 先天性心疾患、腎奇形(水腎症、膀胱尿管逆流症など)、泌尿生殖系奇形、臍帯ヘルニア
【眼科的異常】 乱視、遠視、近視、斜視、白内障、眼振
【腫瘍】各種腫瘍、血管種、水瘤、コレステリン腫 
【その他】伝導性聴覚障害、高カルシウム血症、甲状腺機能低下症、皮膚色素沈着異常、胃食道逆流、便秘

6. 治療法

精神行動面の問題に対する向精神薬等、けいれんに対する抗てんかん剤、各種身体症状に対する対症療法などの対症的治療と療育。現在のところ根治療法はない。

7. 研究班

ソトス症候群のスクリーニング・診断システムの開発と実用化研究班