神経系分野|先天性大脳白質形成不全症(平成23年度)

せんてんせいだいのうはくしつけいせいふぜんしょう
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1. 概要

中枢神経系の髄鞘の形成不全により大脳白質が十分に構築されないことによっておこる症候群である。生直後からの眼振と発達遅滞、痙性四肢麻痺、小脳失調やジストニアなどの症状を呈する。代表的なものはペリツェウス・メルツバッハー病(PMD)である。PMDを含め、これまでに11疾患が同定されている。

2. 疫学

平成20年に行った全国疫学調査により本邦の患者数230名と推定される。有病率は人口10万人(0〜20歳)あたり0.8人、罹患率は10万出産あたり1.6人である。男女比は5.7:1で、患者の平均年齢は11.8±9.9歳である。

3. 原因

ほとんどが遺伝性である。11疾患のうち6疾患で原因遺伝子が同定されている。最も頻度が高いPMDはPLP1遺伝子の変異でおこる。それ以外に、ペリツェウス・メルツバッハー様病の一部はGJC2の変異、PCWHはSOX10遺伝子、白内障を伴う先天性白質形成不全症ではDRCTNNB1A遺伝子の異常でおこる。しかし、臨床的に先天性大脳白質形成不全症と診断された患者の3分2程度でしか原因遺伝子変異が見いだされておらず、未同定の疾患原因遺伝子が存在すると思われる。

4. 症状

末梢神経障害の合併の有無により2群に分類される。PMDでは、生直後から遅くも1ヶ月程度までに眼振に気づかれる。著明な発達遅滞を主徴とし、生後から半年程度までは筋緊張低下、錐体路障害による痙性四肢麻痺。1歳過ぎに小脳症状としての企図振戦、2歳頃にはアテトーゼ様の異常肢位が発現してくる。それ以外の疾患では、これらの症状以外に他の随伴症状を呈する。

5. 合併症

多くの症例が寝たきりの状態で全面介助が必要であり、これに伴う拘縮や褥瘡のほか、呼吸器感染症や嚥下性肺炎などを合併する。てんかんを合併する場合もある。

6. 治療法

痙攣・痙性に関して各種抗痙攣薬・筋弛緩薬が対症療法として用いられるが、現在のところ、根本的な治療法はない。

7. 研究班

先天性大脳白質形成不全症の診断と治療に向けた研究
http://kcmc.jp/pmd/index.html