血液・凝固系疾患|先天性好中球減少症(平成23年度)

せんてんせいこうちゅうきゅうげんしょうしょう
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1. 概要

重症先天性好中球減少症(SCN)は、末梢血好中球絶対数が500/ml未満(多くは200/ml未満)の慢性好中球減少,骨髄像での前骨髄球と骨髄球の段階での成熟障害,重症反復性細菌感染症を臨床的特徴とする。G-CSF投与で好中球減少と臨床症状は改善するが,一部の症例では骨髄異形成症候群(MDS)および急性骨髄性白血病(AML)に進展することが知られている。

2. 疫学

本邦では40〜50家系程度が報告され,解析されている。

3. 原因

本疾患は種々の遺伝子変異によって重症慢性好中球減少が認められる疾患群である。現在までに好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE),HAX1,GFI1,G6PT1, G6PC3変異などが同定されており,本邦ではELANE変異が約75%,HAX1が約20%の頻度である。責任遺伝子と病因・病態についての詳細は不明である。

4. 症状

乳児期からの臍帯炎,肺炎,皮膚感染症,中耳炎などの重症細菌感染症を反復する。HAX1欠損症では成長発達障害,神経学的異常(てんかん)を示す。糖代謝異常を伴うSCNでは低血糖症を認める。

5. 合併症

G-CSFを使用する症例では投与後10年くらいで約13%の症例でMDS/AMLへの進展がみられる。
特にG-CSF投与量が8 mg/kg以上の場合には約40%の症例がMDS/AMLを発症しており,投与量と発症との関係が明らかにされつつある。

6. 治療法

90%以上の症例でG-CSF投与により好中球増加が認められるが,高用量(5〜120 mg/kg)を要する。G-CSFの長期使用により約13%の症例でMDS/AMLを合併する。MDS/AML合併例は造血幹細胞移植が必要である。近年はMDS/AML移行前に骨髄非破壊的前処置による造血幹細胞移植が根治療法として
施行されている。

7. 研究班

先天性好中球減少症の効果的診断方法の確立と治療ガイドライン作成